■FOMC、2023年末予想は11人が政策金利据え置き
先週(3月15日~)は、金融政策における重要な決定がいくつかありました。
FOMC(米連邦公開市場委員会)においては、あくまで金融緩和を続けるという強い意思が読み取れました。
2021年の成長率予測は6.5%に引き上げられ、インフレ率も2.2%になります。景気過熱とも言えるような状況を迎えるわけです。それでも、2023年末の予想政策金利は、11人もの委員が政策金利に変更なしとしました。
(出所:FRB)
■SLRの緩和措置は、予定通り3月末で終了へ
その一方、注目のSLR(補完的レバレッジ比率)(※)の緩和措置に関しては、3月末に終了と決定しました。
SLRの緩和措置が延長されないと、大量の米国債売りによって市場金利は急騰するという、あたかもFRBを「脅迫」するかのような報道までありましたが、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長はしっかりと判断されました。
(※編集部注:「SLR」とは、大手金融機関を対象にリーマンショック後に導入された自己資本規制の1つ)
SLRの緩和措置について3月末に終了することが決定された。パウエル議長はしっかりと判断したというのが志摩さんの見解 (C)Bloomberg/Getty Images News
その後、米長期金利が急騰するということは起こっていません。どこかの銀行が記事を書かせたのでしょうが、そんな脅しには乗らないぞということでしょう。ただ、SLRの緩和措置が延長されない分、確実に流動性は引き締まることになります。
低金利を続けることで、ストリートのビジネスはサポートし、仕事を失った人々が戻るための環境作りはするが、バブル的な要素は少しずつ排除していくという米金融当局の意思を感じさせます。
パウエルFRB議長は、3月23日(火)の議会証言において、「一部の資産価格は幾分高い水準にある」と、初めて資産価格の高さに言及しました。
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■米国とニュージーランドは「コロナバブル」に対策か?
ニュージーランドでは、住宅価格高騰を抑えるための措置が発表され、ニュージーランドドルが急落、豪ドルも連れ安となりました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
ニュージーランドは、ペイパル創業者のピーター・ティール氏が市民権を得て大きな不動産を購入したように、コロナ後の資産家の避難場所となっていましたが、この結果、生じた住宅価格の高騰には、はっきりと反対する立場を取ったと言えるでしょう。
これまで、世界は新型コロナウイルス対策として、かつてない規模で金融緩和、財政支出を行いました。これは緊急避難的なことであり、十分行わなければなりませんでした。
しかし、同時に株価や不動産価格の高騰を招き、社会のインバランスを拡大し、結果的に、当局がサポートしようとしている低・中所得者層を一層貧困化させるという矛盾に直面しています。
米当局も、ニュージーランド政府も、こうした「コロナバブル」的な部分に対し、対策を取り始めたと言えるかもしれません。
米国では、バイデン政権が3兆ドルのインフラ投資計画をぶち上げていますが、増税も同時に行われることになるでしょう。株式市場にとって、諸手を挙げて賛成というものにはならないと思います。
【参考記事】
●バイデン増税が長期では米ドルの重しに。トリプルブルーは米中間選挙で崩れるか(3月17日、志摩力男)
原油価格の急落は、欧州の新型コロナウイルス感染が止まらず、再びロックダウン(都市封鎖)に入っていることが大きな理由とされていますが、前述したような「流動性の引き締まり」を象徴しているのかもしれません。
(出所:IG証券)
■米中対立はトランプ大統領時代より激化へ
米国や英国では、ワクチン接種が順調に進んでいます。近い将来、集団免疫が獲得されるでしょう。
しかし、2カ国だけワクチン接種が進んでも、人の往来は自由になりません。
欧州はワクチン確保に失敗していますし、日本の状況はそれ以下です。ワクチンで割とバラ色の2021年を想定していた予想が多かったのですが、少し修正を迫られています。
また、米中対立がトランプ大統領時代以上に激化していることも重要です。中国当局のコメントは、トランプ大統領時代と違い「激烈」になっています。
表向きは激しく喧嘩しているように見えて、ウイグルや香港の問題には一切口出ししなかったトランプ大統領は、中国にはありがたい人だったでしょう。
これから世界は米国ブロックと、中国ブロックに分かれそうです。イランの原油は米国による経済制裁により、輸出できなかったはずですが、中国が大量に購入している事実がわかりました。経済制裁は形骸化しており、原油も在庫が増えるわけです。
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■豪ドルが調整を迎える時、コロナバブルは終焉
豪ドルは、昨年(2020年)3月に大底を付けてから、ほぼ一本調子に上昇してきました。
対米ドルで0.7650ドルを抜けてきたことで、形上はヘッド・アンド・ショルダーになっています。対円では、82円が重要なサポートでしょう。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
仮に、豪ドル/円が82円を割れてきた場合、短期的に豪ドルは天井を付けたことになります。
豪ドルが調整を迎える時、「コロナバブル」相場が終わったと言え、株価を含め、さまざまなマーケットが調整局面を迎えるのではないかと想定しています。
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