■「東芝の2兆円買収」は、英ポンド売りか?米ドル売りか?
先週(4月5日~)、注目されたのが、英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる、東芝への買収提案。
成立すれば、2兆円規模の巨額買収となります。
為替のフローを素直に考えれば、英国の会社が日本の会社を買うため、英ポンド売り・円買い。
つまり、英ポンド/円への下落材料となります。
【参考記事】
●英投資ファンドが東芝に2兆円超の買収提案。ポンド調整入り。ユーロ/ポンド0.90ポンドへ(4月8日、西原宏一)
報道される前夜、4月6日(火)のNY市場では、英ポンド/円が急落しました。情報が漏れていたのかもしれませんね。
(出所:TradingView)
ただ、そう単純ではないかもしれません。
思い出すのは2018年、武田薬品によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収です。英ポンド/円の買いになるのではと言われましたが、ADR(米預託証券)が絡んだこともあり、米ドル/円の買いになったようです。
シャイアーと同じように考えれば、東芝買収は米ドル/円の売りともなりますが、まだはっきりしません。
【参考記事】
●武田薬品の英シャイアー7兆円大型買収の行方に注目! 巨額の英ポンド買いの噂も?(2018年4月26日、西原宏一)
●英ポンド/円を英投資ファンドの東芝買収案件で売るのは、やや無理がある。理由は?(4月9日、今井雅人)
■5.9兆円と「もう1人のビル・フアン」
アルケゴス・キャピタルの件は、いかがですか?
アルケゴスはビル・フアンのファミリーオフィスでしたが、ファミリーオフィス全体の運用額は5.9兆円にのぼるとの調査もあります。かなりの規模ですね。
【参考記事】
●米ドル/円、アルケゴスショックへの反応も限定的。短期112円、中期120円へ上昇継続!(4月1日、西原宏一)
●「リスクオフの円高は終了」説を再確認。ドル/円は大きな押し目なく、112円台乗せか(4月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
ファミリーオフィスには監督当局への報告義務がなく、運用実態がわかりづらいため、インパクトを測りにくいのも事実です。
ただ、市場には安心感が広がっているようで、VIX指数(恐怖指数)は16ポイント台まで低下。コロナショック前の水準に近づいています。これがもう少し下がったら、警戒したほうがいいのかもしれません。
(出所:TradingView)
市場が安心しきったところで、大きなショックが来るかもしれない、ということですね。
2007年、仏大手金融機関のBNPパリバが投資ファンドの解約凍結を発表し、パリバショックが起きました。パリバショック自体は一時的なものに収まりましたが、その余波から翌年(2008年)に起きたのがリーマン・ショックです。
「もう1人のビル・フアン」が登場すると、さすがに金融危機に陥りかねません。
【参考記事】
●リーマン・ショックにアベノミクス相場! プレイバック、平成30年間の米ドル/円相場
■米長期金利、2%へと向かっていく流れは変わらず
さて、今週(4月12日~)のイベントでは、まず、米CPI(消費者物価指数)の発表が明日の13日(火)にあります。前年同月比で+2.5%と、強い予想が出ていますが。
【参考コンテンツ】
●FX初心者のための基礎知識入門:消費者物価指数/生産者物価指数
債券市場が、どう反応するか、ですね。
今夜(4月12日)は米10年債、明日(4月13日)は米30年債の入札がありますが、米長期金利が2%へと向かっていく流れは変わらないでしょう。
(出所:TradingView)
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は今朝、米経済は「変曲点」にある、と発言しています。
市場の想定よりもタカ派的な発言でしたし、4月14日(水)のパウエルFRB議長講演にも注目したほうがいいでしょう。
■トルコ、19%の政策金利が1ケタ台へ!?
中央銀行関連では、14日(水)にRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])、15日(木)にトルコ中銀の政策発表です。
トルコは、中銀総裁が更迭されてから初めての会合。コンセンサスは据え置きですが、エルドアン大統領は「政策金利を1ケタ台に下げることで予算の負担も減る」と、利下げ圧力を強めています。
現在の政策金利は19%ですから、今後、1ケタにまで下げていくとなると、10%近い利下げとなります。
今週(4月12日~)の戦略は、どう考えますか?
【参考記事】
●中銀総裁更迭でトルコリラ/円が大暴落! ドル/円はいずれ120円との見通し変わらず(3月22日、西原宏一&大橋ひろこ)
●トルコリラが15%超の暴落! なぜ、トルコ中銀総裁は突然更迭された?(3月23日、エミン・ユルマズ)
米ドル/円の111~112円は、昨年(2020年)2月の高値水準であり、コロナショック後の高値圏でもある重要な水準。
ここを抜けるのには、少し時間がかかるのかもしれません。注目は英ポンドですね。
(出所:TradingView)
■アストラゼネカ製ワクチンに血栓リスク
英ポンド/米ドルの日足チャートは、一目均衡表の雲を下抜けし、MACDもデッドクロス。チャート的には、下がりやすい形となっています。
【参考コンテンツ】
●FX初心者のための基礎知識入門:一目均衡表
●FX初心者のための基礎知識入門:MACD
(出所:TradingView)
今年(2021年)の英ポンドは、アストラゼネカ製のワクチン需要で上昇した側面もあります。
ところが、アストラゼネカ製のワクチンに、血栓リスクが浮上してきました。
アストラゼネカ製のワクチン接種を、取りやめる国も出てきましたね。
予断を許しませんが、英ポンドにとって好材料ではないことはたしか。
今週(4月12日~)は、英ポンド/米ドルの戻り売り、あるいは、ユーロ/英ポンドの押し目買いでいいのではないでしょうか。
【参考記事】
●英投資ファンドが東芝に2兆円超の買収提案。ポンド調整入り。ユーロ/ポンド0.90ポンドへ(4月8日、西原宏一)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
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