■もし米国がテーパリングを始めるなら、スケジュールは?
先週(4月19日~)、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])が「テーパリング」(※)を開始したことから、市場では「次にテーパリングを開始する中央銀行はどこか」に注目が集まっています。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
【参考記事】
●テーパリング開始決定で、カナダドル急騰! 米FRBも、早ければ夏ごろに示唆する可能性(4月22日、志摩力男)
ワクチン接種が着実に進み、政府による経済対策も手厚く、経済絶好調なことから、米国も遅かれ早かれ「テーパリング」を始めざるを得ないはずと多くの市場関係者は見ています。
多くの金融機関の想定するテーパリングスケジュールは
1.夏ごろに「テーパリング」のほのめかし
2.半年後の2022年初めにテーパリング開始
3.現在、毎月米国債を800億ドル、モーゲージ債を400億ドル、合計1200億ドル債券購入しているが、毎回のFOMC(米連邦公開市場委員会)で150億ドル減額し、ほぼ1年でテーパリング終了
4.テーパリング終了から四半期もしくは半年ほどたってから利上げ開始(よって2023年夏ごろ利上げ開始)
このようなところがコンセンサスのようです。
一部の参加者は、これでは遅すぎるとイライラしているでしょう。インフレが目前まで迫っていて、これでは対応できないと。サマーズ元財務長官らは、こうした考えの筆頭です。
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■バイデン大統領が増税始めれば、利上げは相当先か
一方、パウエルFRB議長、イエレン財務長官は、雇用が完全に戻っていないこと、一部産業は新型コロナウイルスによる痛手から立ち直ってないことから、緩和路線を突き進むようです。
写真はパウエルFRB議長。パウエル議長やイエレン財務長官は、雇用が完全に戻っていないことなどから、緩和路線を突き進む方針のようだ (C)Bloomberg/Getty Images News
実際、前回のFOMCで示されたドットチャートでは、2024年にならないと利上げしないことになっています。マーケットのコンセンサスよりももっと遅い。
【参考記事】
●「コロナバブル」の終焉は近い…? 豪ドルの調整入りが引き金になるか(3月24日、志摩力男)
また、バイデン政権は「増税」をします。おそらく来年(2022年)から始まります。財政支出もある程度抑えられるでしょう。そうなると、財政の「崖」(※)が来年(2022年)以降あるので、やはり利上げは相当先という考えも、説得力があります。
(※編集部注:「財政の崖」とは、増税と歳出の削減が重なり、崖から転げ落ちるように景気が悪化しかねないとの懸念を表した言葉)
【参考記事】
●バイデン増税が長期では米ドルの重しに。トリプルブルーは米中間選挙で崩れるか(3月17日、志摩力男)
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■FRBの動きに対して、市場には「反乱」の気配アリ
しかし、市場はそうしたFRBに対して「反乱」の気配があります。
商品価格が上昇を始めていますが、今回はコーン、大豆、小麦といった穀物価格にも火がつき始めそうです。
(出所:IG証券)
2010~2012年ごろにも穀物価格が上昇しましたが、「アラブの春」が遠因ともなりました。穀物価格が上昇すると新興国が不安定になってきます。
米国の期待インフレ率も2.5%に迫ってきていますが、これが2.5%を越え、3%に迫るようなことがあれば、「ビハインド・ザ・カーブ」(※)ということになります。
(※編集部注:「ビハインド・ザ・カーブ」とは、景気や物価の上昇に対して、意図的に政策金利の引き上げのタイミングを遅らせる金融政策のこと)
その場合、米ドルは売られることになるでしょう(主に対ユーロやコモディティ通貨に対して)。
(出所:IG証券)
■日本はCPI上昇せず、デフレから抜け出せない状況
一方、日本は日本で心配なことがあります。
ワクチン接種が遅れていることもありますが、新型コロナウイルスに経済が疲弊し、CPI(消費者物価指数)がまったく上がってきません。デフレから抜け出せない状況です。
他の欧米諸国との格差がはっきりしてきています。そうなると、円安の狙い撃ちも始まる可能性が見えます。
今後は、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下落(円高)にも注意が必要でしょう。
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