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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

米長期金利が低下している要因を総点検。
自然反発すれば、1.40~1.50%程度までの
戻りは想定できる

2021年07月14日(水)18:33公開 (2021年07月14日(水)18:33更新)
志摩力男

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菅政権は、4回目の「緊急事態宣言」発令

前回の当コラムでは、東京都議会選挙における(事実上の)自民党敗北が、今後様々な影響を及ぼすと書いたのですが、菅政権の行動は驚くほど早く、4回目の「緊急事態宣言」発令、無観客でのオリンピック開催となりました。

【参考記事】
都議会議員選挙は、自民党が事実上の敗北。政局・日本経済の今後に、大きな影響あるか(7月7日、志摩力男)

 菅首相は観客を入れての開催にこだわっていたので、さぞ無念でしょうが、秋の衆議院選挙で負けるわけにはいきません。感染爆発となれば、いかに野党に支持がないとはいえ、麻生政権の二の舞になる可能性もあります。今さらながら、選挙が政治家に及ぼす影響には驚かされます。

菅政権は4回目の「緊急事態宣言」を発令。無観客でのオリンピック開催になった (C)Getty Images News

菅政権は4回目の「緊急事態宣言」を発令。無観客でのオリンピック開催になった (C)Getty Images News

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米国経済は絶好調なのに、米長期金利は低下するのか

 このところの、マーケットの話題は「米長期金利」です。先週(7月5日~)は、一時1.25%まで急落しました。

米長期金利 日足
米長期金利 日足

(出所:TradingView

 国債の金利は歴史的に名目成長率前後で推移することになっています。ところが、米国経済は絶好調、今年(2021年)は7%前後の実質成長率が予想されており、インフレ率に関しては、昨日(7月13日)発表された6月のCPI(消費者物価指数)は5.4%上昇でした。

 ベース効果など、さまざまな要素がありますが、いろいろ割り引いても、今年(2021年)の名目成長率は10%前後あるでしょう。それなのに、どうして米長期金利は低下するのか。

 市場は困惑しました。もしかしたら、我々の気付いていない景気後退のシグナルが点滅しているのかもしれないと考えるプレーヤーもいて、軽くパニックになりました。

 米長期金利の低下は、おそらく需給で説明がつきます。単純に、米国は高成長だからと米長期債をショートにしていたプレーヤーもいたでしょう。多くの金利トレーダーは、2年国債といった短期の国債を買い、10~30年国債を売って、ベアスティープ化(※)に賭けていました。

(※編集部注:「ベアスティープ化」とは、短期より長期の金利上昇が上回り、金利差が拡大していくこと)

 FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、「金利を上げることを考えることも考えたこともない」と言っていました。ドットチャートを見ると、2024年まで利上げなし、それでも米国の経済成長は続くので、短期金利はそのまま、長期金利は上がり続けるというシナリオでした。

【参考記事】
本命の米株市場崩れず、リスクオン回帰か。FOMCでパウエル議長を裏切った5人とは?(6月23日、志摩力男)

 しかし、4月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨では、一部の理事が「テーパリング(※)を議論することを議論する」準備をすべきと発言していました。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 そして、6月FOMCでは、ドットチャートは思いがけない上昇を見せました。インフレに対してまったく無責任なはずだったFRBが、突然責任感を持ち始めたのです!

米長期金利低下に理由があるのか、点検が必要

 「話が違うじゃないか」。多くの金利トレーダーはそう思ったでしょう。

 FRBが急にインフレに対して責任感を持ち始めたので、ロングにしていた短期債は売らなければなりません。そして、将来のインフレ率がそれほど上昇しないなら、長期債の金利もそれほど上昇しないことになるので、それは買い戻さないといけなくなります。

 市場に、長期債のショートポジションがあまりも多額に積み上がっていたので、買い戻しが急激となり、米長期金利が急低下してしまったのでしょう。これは、ストップロス(損切り)なので、誰も止めることができません。

 おそらく、損切りはひととおり終わったのではないかと思います。そうであれば、米長期金利は自然と反発するでしょう。

 しかし、今回の米長期金利の低下が単なるポジション調整で終わる話なのか、その背後に何らかのファンダメンタルズ的な理由があるのか、そこは点検しなければならないでしょう。

米長期金利 日足
米長期金利 日足

(出所:TradingView

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米長期金利低下のさまざまな要因を考える

 まず、高齢化社会を背景として、「貯蓄過剰」の問題があります。高齢者の方が貯蓄を多く持ちますが、高齢者の比率が多くなると、必然的に世界は貯蓄過剰となり、投資とのバランスがとれなくなり、金利が低下する問題があります。

 世界中の長期金利が下降トレンドにあるのは、このためであり、その先頭に立つ日本の金利は、この先も上昇することはちょっと考えられません。

 ただこれは、構造問題であり、議論してもしょうがないものです。

FRBが依然として量的緩和政策を続けていることも大きな理由です。毎月、800億ドルの米国債を買いますが、少なくない金額です。これはテーパリングが終わるまで続きます。これも、わかりきった問題なので、議論は不要です。

 マーケットが敏感なのは、以下の理由だと思います。

(1)今、経済は絶好調だが、この先に景気後退が待っているのではないか?
(2)変異株が猛威をふるい、コロナ感染が再び広がるのではないか?
(3)中国経済が、徐々に低下しているが、これが景気後退をもたらすのではないか?
(4)債券、商品、為替市場はリスクオフとなったが、米国株は依然として絶好調。しかし、この割高な米国株が崩れて、ブラックスワン的な状況が将来待っているのではないか?

 こうした疑問の答えは正確には「わからない」ものばかりですが、変異株の感染拡大に関しては、ワクチン接種が進むことである程度抑えることが可能と、今の所考えられています。

 ワクチンが効かない新しい変異株(ペルーにおけるラムダ株がそうだとの話も聞きます)が広がれば、状況は変わるかもしれません。

米長期金利は1.4~1.5%前後の水準までは戻すか

 中国経済に関しては、先日(7月11日)、中国人民銀行が預金準備率(RRR)を引き下げて中国当局が対処を始めました。中国当局の、マクロ経済コントロールはいつも絶妙なので、過度な心配は必要ないと考えています。

 米国株に関してですが、これもわかりません。上昇トレンドにあるので、何かポジションを持つとすればロングしか考えられないところです。

NYダウ 日足
NYダウ 日足

(出所:TradingView

 米IT企業があまりにも競争力が強く、今後の未来は彼らがつくることになり、他に選択肢が考えられないということから、世界中から資金を吸収しています。

 米国株に関しては、急落してから心配すべきで、予想すべきものではないでしょう。

 そうなると、米長期金利は自然とある程度戻すものと思われます。少し前のように、米10年債金利が2%といった水準は考え難くなりましたが、1.40~1.50%前後の水準には戻すのではないでしょうか

米長期金利 日足
米長期金利 日足

(出所:TradingView

 このところの、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動きは、米長期金利と連動しています。ある程度自然な戻りがあるのであれば、米ドル/円、クロス円もサポートされるのではないかと思います。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView


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