■パウエル議長の議会証言で、米ドル上昇は収まる
これまで「2024年まで利上げはない」というメッセージを出していたFOMC(米連邦公開市場委員会)ですが、6月の会合で「2023年末までに2回の利上げがある」というドットチャートを示したことで、米ドルの反転が始まっているように見えます。
(出所:FRB)
その後、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、6月22日(火)に行われた議会証言で「ドットチャートは将来の金利の素晴らしい予測ではない」、「ドットチャートは割り引いてみるべき」と発言し、事態の沈静化を図ったことで、米ドル上昇は収まりました。
(出所:TradingView)
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■ハト派からタカ派に転じたFRB理事は誰?
しかし、ドットチャートに示されたように、これまでハト派だったのに、タカ派に転じた理事がいます。それが誰なのか「犯人探し」が始まっています。
【参考記事】
●本命の米株市場崩れず、リスクオン回帰か。FOMCでパウエル議長を裏切った5人とは?(6月23日、志摩力男)
これまで何人かの理事が発言し、明確に利上げを支持したと言った理事は3人だけです。カプラン・ダラス連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ブラード・セントルイス連銀総裁です。
しかし、明確に利上げを支持したと言わないなかにも、「おおっ!」と思わせる発言をした理事もいます。
ローゼングレン・ボストン連銀総裁です。
彼は鉄板のハト派と目されていました。5月5日(水)、ロイターによると総裁は、「テーパリング(量的緩和の縮小)を開始するには大幅な改善が必要だ」と発言。
そして、「下半期にそうした状況になる可能性はあるが、現時点では、単月の力強い雇用統計、1四半期の力強いGDP統計が出ているだけだ。このため、テーパリングに焦点を当てるのは現時点では尚早と考えている」と述べています。
しかし、6月28日(月)のフィナンシャル・タイムズ(FT)紙で「金融安定性を脅かすような住宅市場の好不況サイクルを起こす余裕はない」と警告し、FRB内で不動産価格に対する懸念が高まっていることを示唆しました。
確かに、米国の不動産価格は急騰しています。6月29日(火)に米連邦住宅金融庁が発表した、4月の全米住宅価格指数は前月比1.8%上昇、前年同月比で15.7%上昇しました。1991年来最高の伸び率です。
同じ日に発表された、4月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米)も、前年同月比で14.6%上昇、伸び率は前月の13.3%から加速し、こちらも1987年の統計開始以来の過去最高を記録しました。
住宅価格の上昇が、もっとも「ホット」な話題のようです。
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■FRBのモーゲージ債購入が、住宅価格高騰の一因か
FRBは現在、毎月800億ドルの米国債と400億ドルのモーゲージ債を購入していますが、住宅価格高騰の一因になっていると指摘されています。このために、一般の庶民が住宅を手にすることができなくなっていると批判され始めています。
よって、このモーゲージ債部分を米国債よりも「先に」減額すべきという議論がでている様です。
もし、モーゲージ債の400億ドルが減額されるならば、事実上テーパリングとなります。それを避けるため、米国債購入額を1200億ドルに増やし、モーゲージ債部分をゼロにするという案もあるようですが、それは米長期金利を急低下させ、間違ったメッセージを出すことになりかねません。
写真はパウエルFRB議長。一部の理事からFRB内で不動産価格に対する懸念が高まっていることが示唆される中、FRBが購入しているモーゲージ債を先に減額すべきとう議論が出ている模様。そうなれば、事実上のテーパリングとなるが… (C)Bloomberg/Getty Images News
今、投機筋がもっとも安心して資金を投入できるのが、米国不動産市場と言われています。モーゲージ債の部分購入取りやめで、米ドル上昇という道筋が見え始めてきた感じもします。
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