米長期金利が低下で、米ドル高の違和感…
前回のコラムでは、米長期金利の低下はファンダメンタルズ的に説明できず、ポジション調整で低下しているだけなら、少し金利は戻すのではないかと書きました。
【参考記事】
●米長期金利が低下している要因を総点検。自然反発すれば、1.40~1.50%程度までの戻りは想定できる(7月14日、志摩力男)
しかし、米長期金利の低下は続きます。昨日(7月20日)は、ついに1.12%台まで低下しています。しかも、米金利の低下は通常、株式市場には好材料なのですが、株式市場も少し下落しました。
(出所:TradingView)
為替市場は、いわゆる「リスクオフ」的動きとなっていますが、米ドル/円が大きく下がらず、客観的に見ると「米ドル高」相場になっています。米金利が低下しているのに米ドル高というのは、非常に違和感があります。
(出所:TradingView)
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新型コロナ「デルタ株」が脅威に。英国の感染者が再拡大
それらを説明するとすれば、理由はひとつだけに絞られます。「デルタ株」の脅威です。
英国は7月19日(月)、“Freedom Day”(自由の日)と銘打って、新型コロナウイルスに関する行動制限をほとんど撤廃しました。
それ以前から、テニスのウインブルドン大会の終盤では、観客を100%会場に入れて行い、サッカーのユーロ2020では、英国はイタリアに惜敗したとはいえ、大観衆の前で行われました。多くのサッカーファンは大満足だったのではないでしょうか。
しかし、その英国の感染状況は悪化しています。ワクチン接種が進んだことで、4月、5月の1日あたりの感染者数は2000人前後に抑え込まれていましたが、6月以降急激に悪化し、最近では1日5万人前後の感染者数となっています。
それでも、「ワクチンさえ接種していれば重症化しない」ので、インフルエンザといった通常の感染症と同様に扱うという方針でいくようです。
この英国の実験がうまくいくかどうか、そこをマーケットは注目しています。
マーケットは、少し懐疑的に見ているのでしょう。通常、経済の正常化に踏み切れば、経済活動が戻ることを予想し、英ポンドが買われたり、英国の長期金利が上昇したりするはずです。
しかし、7月19日(月)をスタートに、ユーロ/英ポンドは0.8560ポンド前後から0.8650ポンド前後へと上昇(英ポンドは下落)しています。
(出所:TradingView)
英10年債利回りも、0.65%前後から0.55%前後へと低下しました。これは、米10年債利回りの低下の影響も受けているとは思いますが、独10年債利回りがマイナス0.35%前後からマイナス0.4%前後へと、0.05%下落したのに対し、英10年債利回りは0.1%下落しています。つまり、英10年債利回りの方が、より反応しています。
(出所:TradingView)
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ワクチン接種率が高いイスラエルでも、感染者増加
市場はまた、イスラエルの感染状況にも注目しています。
イスラエルは国民のワクチン接種率が世界でもっとも高く、しかも、95%と極めて高い有効性を示した、ファイザー社製のワクチンを100%使っており、世界のモデルケースとなっています。
そのイスラエルでは、感染者数が十数人ぐらいの日が続いていたのですが、最近、感染者数が増え始め、7月20日(水)には、1491人の感染者を出しています。
ワクチンの有効性が落ちているのか?3回目の接種をすれば有効性が上がるのか?それとも、ワクチンの効かない変異株が出現し始めているのか?
何よりも「デルタ株」の脅威を如実に示しているのは、米モデルナ社の株価でしょうか。このところ急騰しています。
今後も、新型コロナウイルスは消えず、共存しなければならないので、ワクチンを毎年打ち続けなければいけない、そうした未来を織り込み始めたのでしょうか。
(出所:TradingView)
クルーズ船世界最大手、カーニバル・コーポレーションの株価はこのところ下落しています。ワクチン接種で、自由に航海の旅を楽しむ、こうした未来が少し崩れつつあります。
デルタ株との戦いに備える。米ドルへの資金回帰に注意
なんとも憎いコロナです。最終的には、英国の実験は成功し、ワクチン接種で通常に近い生活が戻ると思われますが、マーケットを見ていると、その前に「デルタ株」との戦いが始まりそうです。
為替市場では、金利低下が続く米ドルに資金が回帰するという「不気味」な現象が現れています。
これは、新型コロナウイルスの感染が始まった初期に少し似ています。
これまで経験したことのない動きが次々と現れるコロナ相場ですが、この新たなデルタ株との戦いに備えなければならない様です。
米ドルへの資金回帰に注意でしょうか。
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