デルタ株の新規感染者発生で、ニュージーランドは全土でロックダウン
みなさん、こんにちは。
先週(8月9日~)までは、8月18日(水)のRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])の金融政策決定会合では、0.25%の利上げが100%織り込まれていました。さらに、0.5%の利上げを主張する金融機関もあって、マーケットでは注目が集まっていました。
しかしそれをひっくり返したのが、新型コロナウイルスの感染者1人の確認(※)で、ニュージーランド全土がロックダウン(都市封鎖)するという事態に発展したこと。
ニュージーランド、全土ロックダウン 感染者1人確認で
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は17日、男性1人が新型コロナウイルスの陽性と判定されたとして、全土で緊急ロックダウンを実施すると発表した。同国で市中感染者が見つかったのは半年ぶり。
出所:BBC
(※ロイターによると、ニュージーランドの新規感染者数は8月17日から増え続けていて、8月19日時点では、合計21人となったと報じている)
アーダーン首相は、デルタ株を「ゲームチェンジャー」と呼び、わずか1名の感染者の発見すら重大なことであると国民に発表。
そして「抑え込まないとどうなるか、私たちは他の国の例を見てきた。チャンスは1回しかない」として、一気にニュージーランド全土のロックダウンに突入。
これが意味するところは、日本の緊急事態宣言と違って「学校は休校、飲食店の営業は禁止」という文字どおりのロックダウン!
東京都は、新規感染者数が5000人を越えているのですが、緊急事態宣言はするものの、ロックダウンはしない日本の対応とは別世界。
東京は「安心安全」なんでしょうか?
ともあれ、金融政策決定会合を直前に控えてアーダーン首相の「全土ロックダウン」という決定が、RBNZの結果を100%変えてしまいます。
RBNZの金融政策決定会合の結果は、0.5%の利上げどころか、据え置き。
これにより、ニュージーランドドル/米ドルは0.6900ドルを割り込み、米ドル高に傾斜しています。

(出所:TradingView)
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NZ中銀は政策金利据え置きも、依然としてタカ派。でもニュージーランドドルの反発が難しいワケ
一方、OCR(オフィシャルキャッシュレート=政策金利)の据え置きを決めたRBNZですが、依然として極めてタカ派のようです。
声明によれば、ニュージーランド政府が全土の活動に、レベル4の制限を課したことで、今回は据え置きという決定をしましたが、RBNZのタカ派のスタンスは変えていないことを主張。
そのため、OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)では、RBNZが年内に0.25%の利上げを行う確率は100%以上織り込み済み。
来年(2022年)の5月までだと、3回利上げをして、政策金利は1.00%まで上昇することが予想されています。
【参考記事】
●ニュージーランドドルは利上げで買っていいの? 【緊急報告!】タリバンのカブール制圧で相場はどう動く?
よって、一部の参加者の中にはRBNZの政策金利の上昇予測を背景に、結局、ニュージーランドドルは反発すると予想する声もあります。
ただ、私はニュージーランドドルの反発は難しいのではないかと想定しています。
なぜなら、OISで来年(2022年)5月までに、OCRが1.00%まで引き上げられることが予測されているということは、金利先物市場ではRBNZの利上げをすでに織り込んでいるという意味になります。
そのため、今回のようにマーケットの予定どおりに利上げが進まない事態が起きると、ニュージーランドドルは大きく値を下げる公算が高くなります。

(出所:TradingView)
加えて、他の主要通貨ペアでは、米国のテーパリング(※)予測が根強いことから、じわじわと米ドル高が進行しています。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
前回のコラムどおり、米ドル/円の底堅さは変わらず、本稿執筆時点で110.00円を回復。
【参考記事】
●米10年債利回りはダブルボトム形成し反発。1.43%突破し急騰すれば、米ドル/円の上値余地は112円よりさらに拡大へ(8月12日、西原宏一)

(出所:TradingView)
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動きは遅いながらも、ユーロ/米ドルの下値は拡大している
そして、注目はユーロ/米ドル。
ユーロ/米ドルは、節目の1.1700ドルを割り込んできていて、本稿執筆時点では、1.1675ドルレベルで推移しています。

(出所:TradingView)
節目の1.1700ドルを割り込んで下落が加速しないので、オプション市場からのフローが大きく影響していると考えています。
ユーロ/米ドルの1.1700ドルには25億ユーロほどのオプションが控えており、仮に1.1700ドルを割り込んでも、オプションマーケットから一定のユーロ買いが持ち込まれるため、下落が加速しないわけです。
ただ逆に考えれば、1.1700ドルを越えてくると断続的にユーロ売りが持ち込まれることになります。
さらには 1.1750ドルに25億3000万ユーロ、1.1800ドルにも24億8000万ユーロの別のオプションが控えており、戻りを試しても上値は限定的なまま。
動きは遅いながらも、ユーロ/米ドルの下値が拡大していることも変わらず。
米国のテーパリング観測を背景に、米ドル/円でもユーロ/米ドルでも米ドル高が進行。
そして、アーダーン首相の「チャンスは1回しかない」の号令のもと、ニュージーランドが全土ロックダウンに入ったこと、加えてOISでは、RBNZの利上げをすでに織り込んでしまったことで、下値余地が大きく拡大し、0.6300ドルへ向けて続落中のニュージーランドドルの動向に注目です。
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