タリバンは「公開処刑」、バイデンは夏休み。米国頼りの地政学リスクを抱える国、台湾などは戦々恐々
今朝(8月16日朝)の日経平均は前場で536円安。
先週(8月9日~)発表された米ミシガン大消費者信頼感指数が10年ぶりの低水準となった影響と解説されていますが、これほど下がるの?と疑問にも思えます。
イスラム原理主義勢力タリバンが、アフガニスタン全土を制圧し、政権を掌握したこともあるのでしょう。
今夜のNY市場を見ないとはっきりしたことはいえませんが、リスクオフムードを強めるニュースです。
大暴落するとは思いませんが、「米金利高による米ドル高」ではなく、「リスクオフによる米ドル高」となる可能性はあります。
タリバンはすでに軍幹部などの公開処刑を始めているようです。
本来なら米国は首都陥落の前に、親米的だったアフガニスタン人を出国させておくべきですが、間に合っていない。
バイデン米大統領は夏期休暇中で、リモートで指示を出してはいるのでしょうが、ホワイトハウスには入っていません。
「見殺し」とまでは言いませんが、米国を頼りにしていた地政学リスクを抱える国、特に台湾などは戦々恐々でしょう。
小麦などのソフトコモディティは上昇。鉄鉱石などのハードコモディティは下落。商品価格は二極化している
タリバンは親中です。
これまで米国が担っていた役割を中国が肩代わりすることになれば、テロの矛先が中国へと向かう可能性もありますから、アフガニスタンの混乱は続くのかもしれませんね。
トランプ前米大統領は「アフガンから逃げ出した」とバイデン外交を批判する声明を出しています。
かつては「世界の警察官」だった米国の存在感の低下を感じさせますね。
来年(2022年)は米中間選挙を控えていますし、バイデン米大統領の求心力が弱まると、法案が通りにくくなるなど政治リスクが高まることも想定されますね。
地政学リスクでは小麦の動きにも注意が必要。
2010年から始まった民主化運動「アラブの春」は小麦の高騰がきっかけのひとつでした。
足もとでは当時の水準まで値上がりしています。
(出所:TradingView)
鉄鉱石などのハードコモディティが下落する一方、小麦などのソフトコモディティは上昇。二極化していますね。
【参考記事】
●豪ドルは売り! 鉄鉱石が高値から20%急落! オーストラリアも新型コロナ感染拡大。豪州中銀はテーパリング撤回との予想も…(8月2日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
食料品の値上がりが庶民の不満を高めると、革命へとつながります。
地政学リスクやリスク回避ムードを高める材料のひとつとして、小麦価格は注目ですね。
8月18日、RBNZ(ニュージーランドの中央銀行)は利上げ確実
ジャクソンホールシンポジウムを来週(8月23日~)に控え、材料の少ない今週ですが、あさって8月18日(水)にRBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])が政策金利を発表します。
今回は利上げするのでしょうし、OIS(※)市場では、来年7月までに4回もの利上げを織り込んでいます。
(※編集部注:OIS(Overnight Index Swap)は固定金利と変動金利の翌日物レートを交換するスワップ取引のこと。短期金利の指標のひとつとして、中央銀行の金融政策に対する市場の見方を示していると言われている)
ところが、ニュージーランドドルは上がっていませんね。
RBNZの利上げは、米国発のインフレに備えた予防的な利上げであり、豪州の友人もポジティブな評価をしていません。
メキシコ、ブラジル、ロシア、南アフリカなどの新興国が、米国に先んじて利上げへ動いているのも同じ意図ですね。
対米ドルでは買われていないニュージーランドドルですが、対豪ドルでは買われています。
ハト派スタンスを崩さないRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])と、4回の利上げが織り込まれるほどタカ派なRBNZの対照性が鮮明なためです。
ハードコモディティの豪ドルに対して、ソフトコモディティのニュージーランドドルですから、コモディティの側面からも明暗が分かれています。
【参考記事】
●ニュージーランドドル/円はなぜ、原油価格との連動性が高いのか?
●豪州の輸出構成比24.7%の鉄鉱石と2.4%の原油。豪ドル/円と相関が高いのはどっち?
(出所:TradingView)
豪ドル/ニュージーランドドルの下落は続くのか?
豪ドル/ニュージーランドドルの下落(ニュージーランドドル高)が続くのでしょうか。
あるいは、RBNZで材料出尽くしとなる可能性もありますか?
出尽くしで「セル・ザ・ファクト」となることも考えられますし、織り込み回数が減少することで売られるシナリオもある。
豪ドル/ニュージーランドドルは、長期的にはパリティ(1.0ニュージーランドドル)を目指すとしても、足もとでは反発する可能性があると見ています。
いずれにせよ、8月18日(水)次第ですね。
(出所:TradingView)
米ドル/円はいかがでしょうか?
繰り返しになってしまいますが、米10年債利回りがダブルボトムで底打ちしたとの見方は変わらず、その影響をもっとも受ける米ドル/円は、中長期的に上がると見ています。
そのため、今週の戦略としては米ドル/円の押し目買いか、あるいは、RBNZ次第で豪ドル/ニュージーランドドルの反発を狙った買いか、いずれかではないでしょうか。
【参考記事】
●米10年債利回りはダブルボトム形成し反発。1.43%突破し急騰すれば、米ドル/円の上値余地は112円よりさらに拡大へ(8月12日、西原宏一)
●米長期金利がダブルボトムを形成し反発すれば、米ドル/円は112円へ向けて再び上昇する可能性濃厚!(8月5日、西原宏一)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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