トルコの8月失業率は大きく変わらず。冬に向けて再び上昇に転じるか
TUIK(トルコ統計局)は、今週(10月11日~)、8月の雇用統計を発表しました。8月の失業率は前月比12.1%で横ばいとなりました。農業を除く失業率はもっと高く前月比で14.2%に悪化しています。夏は観光シーズンの影響もあり、失業率は大きく変わりませんでしたが、冬に向けて再び上昇に転じると考えます。
(出所:TUIK)
同じく、TUIKが10月12日(火)に発表した鉱工業生産指数は前月比でプラス5.4%、前年比でプラス13.8%となり、市場コンセンサスのプラス10.5%を越えました。完全ロックダウン(都市封鎖)をしていた昨年(2020年)との比較はあまり有効ではありませんが、前月比で比べても強く伸びているのがポジティブサプライズです。
(出所:TUIK)
(出所:TUIK)
ドイツ8月鉱工業生産指数はマイナス4%。最大の輸出相手国の経済状況は、トルコに直接影響与える
一方で、トルコリラの投資家はトルコの鉱工業生産指数に加え、ドイツの鉱工業生産指数にも注目すべきです。ドイツはトルコの最大の輸出相手国であり、ドイツ経済の状況がトルコに直接影響を与えます。
ドイツ連邦統計庁が10月7日(木)に発表した8月の鉱工業生産指数は、前月比でマイナス4%となりました。
独鉱工業生産指数、8月は前月比-4.0% 原材料不足続く
出所:ロイター
市場のコンセンサスを大きく下回るネガティブサプライズなので、トルコリラの売り要因ともなり得ます。
(出所:TradingView)
ドイツ鉱工業生産の悪化は、サプライチェーンの乱れとエネルギー価格の上昇が要因
ドイツの鉱工業生産指数が大きく低下した背景には、サプライチェーンの乱れとエネルギー価格の上昇があります。
欧州は今年(2021年)後半から、原油や天然ガスの価格高騰に悩まされていて、エネルギーコストの上昇はコロナ後の景気回復だけではなく、脱炭素への転換プロセスにも悪影響を与えています。
欧州の天然ガス先行指数のひとつであるオランダTTF(天然ガスの仮想取引ポイント)は、年初の16ユーロから9月末に98ユーロまで実に6倍にもなりました。
(出所:TradingView)
中国で停電が相次いでいることも日本のメディアでニュースになっていますが、今年(2021年)は雨も風も少ない夏で、水力や風力から得る電力が例年より少なく、また石炭も足りていないのが背景にあります。中国の停電が製造の遅れや価格高騰につながり、世界的なインフレ上昇圧力をつくっています。
トルコリラは対米ドルで節目の9.00リラを突破も対円は大きく動かず。トルコリラ安ではなく、米ドル高が起きている
今週(10月11日~)のトルコリラは対米ドルで下げに転じ、米ドル/トルコリラは節目の9.00リラを越えました。
(出所:TradingView)
一方、対円では大きく動かず、トルコリラ/円は12.50円前後をキープしていることから、トルコリラ安というより米ドル高が起きていることがわかります。
トルコ中銀の発表によると、経常収支は8月に10カ月ぶりにプラスに転じました。8月の経常黒字は5億2800万ドルでした。経常黒字が出た最大の要因は国内に入った得体の知れない約45億ドルの資金です。
(出所:トルコ中銀のデータを元にメルマガ事業部が作成)
トルコ政府は、年末までに海外にある資金を国内の銀行に移動させた人に、その資金をどうやって稼いだのかを聞いたり、課税しないことを約束しています。
つまり、政府としては今外貨が必要なので、どんなお金でもいいからトルコに持ってきてほしいのです。ただ、この政策は今に始まったことでもなく、過去にもたびたび実施されたことがあります。
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