トルコ9月CPIはプラス19.58%。商品価格の高騰がインフレの最大要因に
TUIK(トルコ統計局)は、9月のCPI(消費者物価指数)を公表しました。9月のCPIはプラス19.58%で概ね市場コンセンサスどおりでした。
(出所:TUIK)
コアCPIも上昇して、プラス16.98%に達しました。食料品の物価上昇は引き続き強く、プラス28.8%でした。
また、PPI(生産者物価指数)もプラス43.96%で高い水準を維持しました。
(出所:TUIK)
名目CPIを大きく押し上げている項目は、やはりエネルギーで、9月にコークス石炭と石油精製品は年間ベースで102%の上昇率になりました。主要金属は91.73%、木材は68.53%の上昇でやはり商品(コモディティ)価格の高騰がインフレの最大要因となっています。
インフレ上昇トレンド継続は予想どおり。10月のCPIはさらに上昇する可能性が高い
個人的には、インフレ上昇トレンドの継続は予想どおりですが、9月の数字はトルコ中銀の利下げによって起きたトルコリラの下落をまだ織り込んでいないと考えています。トルコリラの下落と足元の原油価格の上昇を考えると、10月のCPIはさらに上昇する可能性は高いです。
(出所:TradingView)
また、9月にコアCPIは下げに転じるとの予想が多かったのですが、コアCPIも上昇を続けました。トルコ中銀はコアCPIが低いことを利下げの口実にしていましたが、コアCPIを参考にしても利下げ余地があまりないことがわかります。
【参考記事】
●サプライズ利下げでトルコリラ急落!引き続き利下げ警戒で、年末に向けて下落トレンド加速か(9月29日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領は国営のスーパーマーケットチェーンの大量出店を計画。ただ、実現の可能性は低い
エルドアン大統領は、物価上昇をスーパーマーケットチェーンのせいにしていて、食料品や日常生活品を国民に安く提供するために、国営のスーパーマーケットを1000店舗オープンする計画であると発表しました。まるで社会主義国家の政策ですが、実現の可能性が極めて低いのが実態です。
トルコ農林水産省が運営している生協のスーパーマーケットがすでに存在していて、大手チェーンのスーパーマーケットに比べて価格が大幅に安いわけではありません。元々大手小売りの利益率は低いので、彼らより安く販売するのは困難です。赤字経営で国からの補助金以外にやり方がありません。しかし、今のトルコ政府にそんな補助金を出す余裕がないと考えます。
エルドアン大統領は、食料品や日常生活品を国民に安く提供するために、国営のスーパーマーケットを1000店舗オープンする計画であると発表しているが、実現の可能性は低いのが実態だという (C)Anadolu Agency/Getty Images
トルコリラは小動き。冬に突入する北半球のエネルギー危機が不安材料
今週(10月4日~)のトルコリラは、対米ドル、対円で大きく動かず、米ドル/トルコリラは、トルコ中銀による利下げ後の高値水準である8.90リラ前後、トルコリラ/円は12.50円前後で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
9月の消費者信頼感指数は79.7で、8月の78.2から上昇していて、秋になって個人消費が伸びているのがトルコリラのサポートとなっています。向こう12カ月の景況感指数も5.3%の上昇で79.3%となっているので、ワクチン接種の進行とロックダウン(都市封鎖)解除で経済活動が活発になっているのはたしかです。
(出所:TUIK)
一方で、やはり為替の影響はまだ景況感に反映されていません。また、原油価格の上昇が止まらず、このままでは、今から冬に突入する北半球でエネルギー危機が発生してしまう恐れがあります。
すでに中国では大規模停電が続いていて、各地で工場が稼働停止しています。トルコも欧州にとって大きな生産拠点のひとつなので、冬のエネルギー危機が心配です。
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