トルコ中銀のサプライズ利下げで、トルコリラは大きく下落
トルコ中銀は9月23日(木)の政策会合で、政策金利を19.00%から18.00%へ1%引き下げました。
市場のコンセンサスは据え置きでしたので、利下げはネガティブサプライズとなり、トルコリラは対米ドル・対円で大きく下落しました。
(出所:TradingView)
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物価上昇が一時的という主張は大いに間違っている。冬にエネルギー危機発生もあり得る
トルコ中銀は直近で、CPI(消費者物価指数)よりもコアCPIを全面に出していましたが、その理由が今回の利下げではっきりしました。
コアCPIはCPIから食料品やエネルギーなどの中央銀行がコントロールできない、価格変動の大きい品目を除いて計算されます。
トルコ中銀は、コアCPIがプラス16.76%なので、1%利下げしても政策金利はコアCPIを超えているので大丈夫だという判断をしたようです。また、食料品やエネルギー価格の上昇は一時的であると考えています。
トルコ中銀に限らず、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)も同じことを主張しています。しかし、パンデミックによるサプライチェーンの乱れは想定以上で、冬にエネルギー危機が発生する可能性さえあります。
英国のガソリンスタンドではガソリンが不足していて、軍隊が出動する騒ぎになっています。物価上昇が一時的であるという主張は大いに間違っていると考えています。
今回のサプライズ利下げの背景に、解散総選挙を狙う計画もありそう
前回のコラムで、解散総選挙の可能性に言及し、解散総選挙となれば政府は選挙対策として財政出動による景気刺激策を打ち出し、また中銀に緩和するよう圧力をかける可能性があることを指摘しました。
【参考記事】
●トルコリラは対米ドル・対円で下落。エルドアン大統領の健康不安の噂で政府の求心力低下。解散総選挙も意識か(9月15日、エミン・ユルマズ)
今回の利下げも、コアCPI云々より、やはり解散総選挙に向けた対策の可能性があります。利下げによって貸し出しを増やし、景気を刺激したいという狙いが見え見えです。
その背景にあるのは、近いうちに解散総選挙をやろうという計画でしょう。
トルコ中銀は、0.50~1.00%の追加利下げの可能性も十分にある
今週(9月27日~)のトルコリラは、対米ドル、対円で弱い動きが続いていて、米ドル/トルコリラは8.80リラを越え、トルコリラ/円は12.50円前後で推移しています。
(出所:TradingView)
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利下げ後のトルコリラの下落はひとまず止まっていますが、投資家の懸念は利下げが今後も続くかどうかという点です。トルコ中銀がコアCPIを基準にしているのであれば、追加で0.50~1.00%の利下げを行う可能性は十分あります。
今後も利下げに警戒。年末にかけてトルコリラの下落トレンドが加速か
先日発表された、トルコの7月の経常収支は6.83億ドルの赤字でした。
2021年1月~7月までの合計した経常赤字は、137億ドルとなっています。年間ベース(直近12カ月)で経常赤字は278億ドルに達しています。
トルコ政府の中期計画で、2021年の経常赤字目標は210億ドルでした。つまり、すでに中期計画の目標を大きく超えています。 足元の原油価格の上昇を見ると経常赤字がさらに拡大するのは避けられないでしょう。
(出所:TradingView)
本来であれば、利下げどころか利上げをすべきですが、トルコ中銀は政治圧力に対抗できないので、今後も利下げを警戒すべきです。そのため、トルコリラの下落トレンドが年末に向けて加速する可能性が高いと考えています。
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