このコラムで指摘したように、ギリシャ問題が「鏡」だとすれば、ユーロ圏内のスペインやポルガルトだけでなく、英国と米国も「鏡」に映し出されたはずだ。
驚くべきことに、救いようがないと言われているギリシャの赤字や財政状況は、実は、英国や米国よりも若干マシなのである。
ギリシャ問題の解決が、ほど遠い状況であることは間違いない。
そして、何よりも重要なのは、マーケットはそれだけではなく、スペイン、アイルランド、ポルトガルばかりか、イタリアまで財政危機の発生を想定し、ユーロ売りを仕掛けている。
これはある意味で、最悪の状況を織り込み始めたと言える。
同様に、英ポンドの大幅下落も、その「映された姿」に市場が不信票を投じた結果だ。
やはり、英国のソブリンリスクに対して、マーケットはある程度備えているのだろう。
■米国が「AAA」の格付けを失うかも!?
対照的に、今のところ、米国のソブリンリスクに対する懸念はさほどなく、マーケットはこの材料をこれから織り込み始めるかもしれない。
もし、そうなれば、これまでに反応していない分、米ドルの下げ余地は大きいだろう。
今年、米国の財政赤字は1兆5600億ドルまで膨らむ見通しで、これはGDP比で10.5%超となり、有力格付け会社は相次いで、米国が最上級である「AAA」の格付けを失う可能性に言及し始めている。
その上、オバマ政権主導の「国民皆保険」計画が、今後10年間の財政状況をさらに圧迫する恐れすらある。
皆さんもご存知のように、日本とは違って、米国は経常収支も大赤字である。そのため、米国債のマーケットは海外資本によって支えられている。
海外からのファイナンスに依存する米国債の利回り上昇(価格は下落)は、長期金利を確実に押し上げ、前途多難な財政再建をさらに困難にさせ、破綻に陥る恐れもある。
これこそ、米ドルのアキレス腱であり、米ドルの構造的な弱点である。
■米国の財政懸念が早晩為替マーケットに波及してくる!
最近、米国債の利回りが大幅に上昇している。
新規発行分の米国債の入札を見ると、需要が低迷していて、マーケットに米国の財政赤字に対する懸念が表われ始めているようだ。
このような懸念が早晩為替マーケットに波及してくることを前提に、今から米ドル安に対して、しっかりと準備をしなければならないだろう。
今年2月、米国のガイトナー財務長官がマスコミのインタビューに答えた際、「米国がAAA級の格付けを失うことは絶対ない」と言い切った。
だが、過去の歴史を振り返ると、内外を問わず、大物官僚と政治家の「絶対」という言葉ほど信用できないものはない。
1971年に、米国が「神との約束」と誓った米ドルと金のペッグ制を放棄したように、世の中に「絶対的なもの」は絶対にない。
ガイトナー財務長官の言葉は「ポジショントーク」であって、米国の焦りの表われに過ぎないだろう。
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