■ドルインデックスのトップアウトが間近になってきた
足元の為替相場では、全体的に方向感が弱まってきている。
米ドルは、対円、対ユーロでブル(強気)基調を保っているものの、対英ポンドでは保ち合いとなっていて、対スイスフランでは上げ一服、対豪ドル、対加ドルではベア(弱気)基調を継続といった印象だ。
豪ドル/米ドル&米ドル/加ドル 日足
米ドル/円の上昇は基本的に、株高とリンクしたリスク選好度の高まりの表れと言えるだろう。
また、ユーロ売りの動機は言うまでもなく、ギリシャ問題に端を発するユーロ圏のソブリンリスク(国家の信用リスク)にあり、英ポンドは、量的緩和継続と政局の混迷が売り要因で、その背景には財政赤字膨張に伴うソブリンリスクもあるだろう。
半面、豪ドルと加ドルが堅調である理由には、資源国通貨としての評価に加え、利上げ余地とその見通しの広がりが買い材料として、短期スパンにおいて作用しているのだろう。
(出所:米国FXCM)
以上、まとめると、ドルインデックスは依然として昨年5月以来の高い水準にあるが、その一方で、全体の上昇モメンタムが衰弱しているということを見逃してはならない。
足元の米ドルは、悪材料に満ち、悪い噂の絶えないユーロに対してでさえ、3月につけた高値を更新できずにいる(ユーロ/米ドルのチャートで言えば、3月の安値を更新できずにいる)。
また、筆者はこのコラムで「米ドル/円の上昇は基本的に、ドルインデックスの上昇の後を追う」と何度か述べてきた(「米ドルは全面高の様相。しかし、最終段階は近づいている」を参照)。
現状、米ドル/円に上値の重さが見られていることは、ドルインデックスのトップアウトが間近であるというサインと読み取れる。
前述した、各通貨ペアの異なるパフォーマンスも、同じことを物語るシグナルと受け止めるべきであろう。
■マーケットは最悪の状況を織り込み始めた!
マーケットの関心は引き続き、ギリシャをはじめとするユーロ圏の国々のソブリンリスクに集中しているが、そろそろ「ネタ」としての鮮度が落ち、次のテーマを探し始める頃かと思う。
相場のサイクルに沿った値動きになれば、来るべき米ドルの全面安の背景として、米国のソブリンリスクがいずれ浮上してくるではないかと見ている(「米国の景気回復シナリオは裏切られ、米国のソブリンリスクは必ず問題となる!」を参照)。
以上、まとめると、ドルインデックスは依然として昨年5月以来の高い水準にあるが、その一方で、全体の上昇モメンタムが衰弱しているということを見逃してはならない。
足元の米ドルは、悪材料に満ち、悪い噂の絶えないユーロに対してでさえ、3月につけた高値を更新できずにいる(ユーロ/米ドルのチャートで言えば、3月の安値を更新できずにいる)。
また、筆者はこのコラムで「米ドル/円の上昇は基本的に、ドルインデックスの上昇の後を追う」と何度か述べてきた(「米ドルは全面高の様相。しかし、最終段階は近づいている」を参照)。
現状、米ドル/円に上値の重さが見られていることは、ドルインデックスのトップアウトが間近であるというサインと読み取れる。
前述した、各通貨ペアの異なるパフォーマンスも、同じことを物語るシグナルと受け止めるべきであろう。
■マーケットは最悪の状況を織り込み始めた!
マーケットの関心は引き続き、ギリシャをはじめとするユーロ圏の国々のソブリンリスクに集中しているが、そろそろ「ネタ」としての鮮度が落ち、次のテーマを探し始める頃かと思う。
相場のサイクルに沿った値動きになれば、来るべき米ドルの全面安の背景として、米国のソブリンリスクがいずれ浮上してくるではないかと見ている(「米国の景気回復シナリオは裏切られ、米国のソブリンリスクは必ず問題となる!」を参照)。
このコラムで指摘したように、ギリシャ問題が「鏡」だとすれば、ユーロ圏内のスペインやポルガルトだけでなく、英国と米国も「鏡」に映し出されたはずだ。
驚くべきことに、救いようがないと言われているギリシャの赤字や財政状況は、実は、英国や米国よりも若干マシなのである。
ギリシャ問題の解決が、ほど遠い状況であることは間違いない。
そして、何よりも重要なのは、マーケットはそれだけではなく、スペイン、アイルランド、ポルトガルばかりか、イタリアまで財政危機の発生を想定し、ユーロ売りを仕掛けている。
これはある意味で、最悪の状況を織り込み始めたと言える。
驚くべきことに、救いようがないと言われているギリシャの赤字や財政状況は、実は、英国や米国よりも若干マシなのである。
ギリシャ問題の解決が、ほど遠い状況であることは間違いない。
そして、何よりも重要なのは、マーケットはそれだけではなく、スペイン、アイルランド、ポルトガルばかりか、イタリアまで財政危機の発生を想定し、ユーロ売りを仕掛けている。
これはある意味で、最悪の状況を織り込み始めたと言える。
同様に、英ポンドの大幅下落も、その「映された姿」に市場が不信票を投じた結果だ。
やはり、英国のソブリンリスクに対して、マーケットはある程度備えているのだろう。
■米国が「AAA」の格付けを失うかも!?
対照的に、今のところ、米国のソブリンリスクに対する懸念はさほどなく、マーケットはこの材料をこれから織り込み始めるかもしれない。
もし、そうなれば、これまでに反応していない分、米ドルの下げ余地は大きいだろう。
今年、米国の財政赤字は1兆5600億ドルまで膨らむ見通しで、これはGDP比で10.5%超となり、有力格付け会社は相次いで、米国が最上級である「AAA」の格付けを失う可能性に言及し始めている。
その上、オバマ政権主導の「国民皆保険」計画が、今後10年間の財政状況をさらに圧迫する恐れすらある。
皆さんもご存知のように、日本とは違って、米国は経常収支も大赤字である。そのため、米国債のマーケットは海外資本によって支えられている。
海外からのファイナンスに依存する米国債の利回り上昇(価格は下落)は、長期金利を確実に押し上げ、前途多難な財政再建をさらに困難にさせ、破綻に陥る恐れもある。
これこそ、米ドルのアキレス腱であり、米ドルの構造的な弱点である。
■米国の財政懸念が早晩為替マーケットに波及してくる!
最近、米国債の利回りが大幅に上昇している。
新規発行分の米国債の入札を見ると、需要が低迷していて、マーケットに米国の財政赤字に対する懸念が表われ始めているようだ。
このような懸念が早晩為替マーケットに波及してくることを前提に、今から米ドル安に対して、しっかりと準備をしなければならないだろう。
今年2月、米国のガイトナー財務長官がマスコミのインタビューに答えた際、「米国がAAA級の格付けを失うことは絶対ない」と言い切った。
だが、過去の歴史を振り返ると、内外を問わず、大物官僚と政治家の「絶対」という言葉ほど信用できないものはない。
1971年に、米国が「神との約束」と誓った米ドルと金のペッグ制を放棄したように、世の中に「絶対的なもの」は絶対にない。
ガイトナー財務長官の言葉は「ポジショントーク」であって、米国の焦りの表われに過ぎないだろう。
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