1月FOMC、パウエルFRB議長に対する評判は散々だった…
1月26日(水)に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)、パウエル議長に対する評判は散々でした。
市場参加者が知りたかったのは以下の点です。
今後どのようなペースで利上げするのか。それは、3・6・9・12月といった節目のミーティングなのか、それとも毎回利上げすることができるのか。利上げ幅は0.25%なのか、それとも0.50%もあるのか。QT(量的引き締め)は、いつ、どのような規模で行われるのか…。
しかし、ニュースヘッドラインを見ると、
・パウエル議長、毎回の会合での利上げを否定せず
・利上げの規模は決定されていない
・バランスシートの縮小に関しては3月会合で話し合う。その後少なくとも1回の会合が必要
と、何も言質を与えていませんでした。毎回利上げがあるとも考えられるし、そうでもないとも言えます。
1月26日に開催されたFOMC、パウエル議長に対する評価は散々…。ニュースのヘッドラインを見ると、毎回利上げがあるとも考えられるし、そうでもないともいえるとのこと (C)Bloomberg/GettyImages
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2022年の米国の利上げは完全に織り込まれ、むしろ追い越した感じもある。他の中銀がどのように反応するのかが焦点に
全体的に見れば、非常にタカ派的な内容に解釈することもできるので、多くの金融機関の利上げ予想は一気に高まりました。
今年(2022年)の利上げ回数の予測に関しては、4~6回といったところでしょうか。中心は5回、一部には7回という予想もあります。利上げ幅に関しては、3月のFOMCで0.50%利上げの予想もあります。
市場の利上げ予測を見ると(Countdown to FOMC)、2022年12月のFOMCでは、1.25-1.50%(5回利上げ)が33.5%ともっとも多く、1.00-1.25%(4回利上げ)が26.6%、1.50-1.75%(6回利上げ)が21.0%、1.75-2.00%(7回利上げ)も5.5%あります。
(出所:CME Group Countdown to FOMC)
このところのFRB(米連邦準備制度理事会)関係者の発言も、利上げペースのスピードアップを正当化するようになってきています。
ボスティック米アトランタ連銀総裁は、1月29日(土)のフィナンシャル・タイムズ(FT)電子版において、「50ベーシスポイント(0.50%)の変動が必要、あるいは適切な状況だとデータが示すならば、私はそれを受け入れるつもりだ」と発言し、「3月FOMCでの0.50%利上げ」が市場関係者の頭に刻み込まれました。
しかし、パウエル総裁はさすがにまずいと思ったのでしょう。すぐにBOSTIC: 50-BP HIKE IS NOT MY PREFERRED POLICY ACTION FOR MARCH(ボスティック総裁:0.5%利上げは私の望ましいと思っている行動ではない)と否定しました。
デーリー米サンフランシスコ連銀総裁もYOU DON'T WANT FED POLICY TO OVER-REACT(FRBには過剰反応してほしくないでしょう)と、やんわりと0.50%の利上げを否定しました。
こうして0.50%利上げを否定したことが、株式市場反転のシグナルだったような感じがします。
2月1日(火)には、このところもっともタカ派と見られているブラード米セントルイス連銀総裁もBULLARD SAYS HE DOESN’T THINK RAISING 50 BPS HELPS FED(0.50%利上げが現時点で助けになるとは思わない) と0.50%利上げを否定しました。
市場はFRBの利上げを2022年に関しては完全に織り込み、むしろ追い越した感じもあります。
米国の金融引き締めに関しては、今年(2022年)の分はほぼ織り込みました。そうなると為替市場としては、次は「他の中銀がどのように反応するのか」に焦点が移るでしょう。
豪州の利上げは2022年後半か。英国は複数回利上げの可能性も
RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])に関しては、2月1日(火)会合があり、量的緩和政策を中止しましたが、サプライチェーン問題が解決した場合インフレ率が低下する可能性を捨てきれず、市場が思っていたほどタカ派転換しませんでした。
瞬間的に豪ドルは下落しましたが、その後、上昇しています。市場は今年(2022年)後半には豪州は利上げに向かうと見ています。RBAの考えとは違いますが、経済の改善がその方向に向かわせるだろうと解釈されています。
(出所:TradingView)
次に利上げするとすれば、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])でしょう。今週(1月31日~)のMPC(金融政策委員会)で、前回に続いて利上げし、政策金利が0.50%になると見られています。今年(2022年)は複数回利上げするでしょう。そうなると、欧州よりも金融引き締めが進むので、対ユーロで英ポンド高が進む可能性がありそうです。
(出所:TradingView)
ECB(欧州中央銀行)は、域内経済の勢いが米国ほどではないので、利上げは遅れるでしょう。しかし、一部市場関係者は、今年(2022年)末、もしくは来年(2023年)初めにもECBは利上げに動くのではないかと予想し始めています。
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黒田総裁が続く限りYCC変更は考えにくいが、多少バンド幅を変更すれば米ドル/円は円高に動くか
対して日本ですが、長期金利が上昇してきています。長期金利に関しては0%±0.25%のレンジ内で推移するようにコントロールされていますので、上限に近づいているといえます。YCC(イールド・カーブコントロール)(※)が続くのであれば、ここは国債の買い場といえます。
(※編集部注:「イールド・カーブコントロール」とは、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持すること)
(出所:TradingView)
しかし、岸田政権は悪い円安を回避するためにも実は少し円高方向に向かわせたい意向があるのではないかとの思惑が先日(1月14日)の日銀に関する報道から広がっており、(すぐではないですが)日銀もYCCを変更する可能性があるとウワサされています。
【参考記事】
●岸田政権は、米ドル/円が110円を下回ることを望んでいる? マーケットを揺らした、ロイターの観測記事を書かせたのは誰か?(1月26日、志摩力男)
黒田総裁が続く限り、YCC変更は考え難いのですが、多少バンド幅を広げることもあるかもしれません。もしそうなった場合、円高方向に米ドル/円を向かわせることになるでしょう。
(出所:TradingView)
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