■投機資金は安全資産の米ドルへと急激にシフトしている
対円を除いて、米ドルの全面高が続いている。
前日、2月4日(木)までは、ドルインデックスが節目の80をトライし、昨年の最高値89.62から、最安値74.17までの下落幅に対する38.2%戻しを達成しようとしていた。
ところで、最近、米ドルの全面高が欧米市場の株安とリンクしているように見える。象徴的な値動きとして、2月4日(木)のNY市場では、ダウ指数が1万ドルの大台を一時割り込んでいた。同時に、金や原油を含めて、商品市場の値動きもさえなくなっている。
それは他ならぬ、リスク回避の動きが背景にあるためだ。
特に、ギリシャの財政問題が、ポルトガルやスペインの抱える債務に対する懸念を増幅させている。
欧州のソブリンリスク(外国の政府や中央銀行に対する融資におけるリスク)に対して、市場関係者はピリピリしている。そのような中で、投機資金は安全資産とされる米ドルへと、急激にシフトしているようだ。
■結局のところ「有事の米ドル買い」は変わらない
その構造は、まさに2008年のリーマン・ショックの時と似ている。
欧州のリスクとは比較的関係の薄いブラジル株、あるいは、国際マーケットと「絶縁」状態にある上海A株に対してまで影響が及んでいることを考慮すると、第2のリーマン・ショックの再来をマーケットが警戒している様子が読み取れる。
震源地が米国であっても、欧州であっても、結局のところ「有事の米ドル買い」は変わらないようだ。昨年声高に叫ばれた「ドルキャリートレード」も幻に終わっている(「原油決済通貨の変更などバカバカしい話。ドル安はこのあたりでクライマックスか?」を参照)。
そのため、ユーロ/米ドルの下落は、筆者の想定よりもかなり早いスピードで進んでいる。
昨年末時点で、今年の夏までに1.3200~1.3500ドルまで下落すると想定していたが、足元の相場を見ていると、そのスピードから考えれば、上記の目標は1カ月以内にも、早くも達成できそうだ(「2010年最大のイベントは米国の利上げ!米ドル/円の上値は重く、かなりの波乱も!!」を参照)。
■今のユーロ/米ドルはリーマン・ショック後と似ている!
だが、タイムラグはあるものの、筆者は、ユーロサイドから何らかのプラスの材料が出ることも想定している。1.3500ドル近辺まで下落したところで、ユーロ安がいったん終えんする可能性が高いと考えている。
その理由は、前回のコラムでご覧いただいたチャートにヒントが隠れている。ここで改めて、同じユーロ/米ドルのチャートを作り、観察してみよう(「『米ドル暴落論』は大ウソだった!ドル高は一時減速も結局はまたドル高へ」を参照)。
このユーロ/米ドルの日足チャートは、昨年11月高値からの3段下げ(A−B−C)の様子を示したものだ。
チャートにはボリンジャーバンドのバンドが8本引かれているが、ご覧のとおり、A→Bの第1段階の下落では、ほぼ「−2σ」のラインに沿って下落していた。
その後、B→Cの第2段階の切り返しでは、C点の高値が初めて「+2σ」のラインを超え、一時は「+3σ」のラインの手前まで迫った。しかし、「+3σ」は超えられず、現在はC点からの第3段階の下落の中にある。
ここで重要なのは、足元の第3段階の下落においても、基本的には「−2σ」のラインに沿った値動きであるということだ。この点に注目していただきたい。
さて、このチャートをご覧になって、「デジャヴ」の感覚を覚える方もいらっしゃるかもしれない。筆者もそうだ。
なぜなら、この構図が、リーマン・ショック後のユーロ/米ドルの下落と同じであるからだ。
■値動きの構造とボリンジャーバンドを総合的に見るべき
そこで、今度は、2008年7月高値から同年10月までのユーロ/米ドルの下落変動を見てみよう。
ちなみに、リーマン・ショックは2008年9月に発生した!
そこで、今度は、2008年7月高値から同年10月までのユーロ/米ドルの下落変動を見てみよう。
ちなみに、リーマン・ショックは2008年9月に発生した!
このチャートをご覧いただいて一目瞭然のように、A−B−Cの3段下げの構造も、下げ途中のボリンジャーバンドとの関係も、B→Cの修正段階が「+2σ」のラインをタッチしてから終えんした構図も、前のページにあった、昨年11月高値からの3段下げの状況とかなり似ている。
このように、値動きの構造とボリンジャーバンドを総合的に見ることによって、相場の変動パターンがより鮮明になり、多くを読み取れることは多いものだ。
■デジャヴなら、1.3485ドル近辺がターゲットか!?
筆者は前のページで、1.3500ドル近辺でユーロ安が一服する可能性が高いとの見方を示した。それはなぜかと言うと、他ならぬ、2008年の3段下げの構図にヒントがあるためだ。
2008年の下げ変動の値幅を計算してみると、C点を起点とした第3段階の下げ幅は、A点からB点までの第1段階の下げ幅の約1.18倍に相当することがわかる。
現在進行中の下げ変動が2008年の値動きの「デジャヴ」であれば、おおむね同じようなリズムで下落トレンドが終了する可能性が高いという発想ができる。
そうすると、昨年11月の高値1.5142ドルから12月安値の1.4215ドルまでの第1段階の下げが927pipsであるから、現在進行中の第3段階の下げがC点の1.4577ドルから同値幅の1.18倍に相当する分だけ下落したとすると、1.3485ドル近辺がターゲットとして浮上する。
■「戻りを待ってから仕掛ける」は当たっていた?
このターゲットを実現できるかどうか、あるいは、その後の値動きが、さらに下落するか、もしくは底を打って反転してくるかは、単なる値幅の計算だけではなく、ボリンジャーバンドのラインとの関係などを総合的に判断することが重要である。
これには、ボリンジャーバンドを8本表示できる「ウルトラチャート」がとても有効だ。
前回のコラムで提示していたユーロ/米ドルとユーロ/円のチャートでの、「戻りを待ってから仕掛ける」といったアドバイスは外していなかったと思っているが、よりはっきりしていたのはユーロ/円である(「『米ドル暴落論』は大ウソだった!ドル高は一時減速も結局はまたドル高へ」を参照)。
改めて、同チャートを添付しておく。
前回の課題も含め、8本のラインのボリンジャーバンドによる値動きの解読は、次回のコラムをお楽しみに!
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