米ドルの全面安が進んでいる。ドルインデックスは、一時75.76まで下落し、2008年9月以来の安値を記録した。
米ドル安が進む背景として、テクニカル的な要素以外では、豪州の利上げ、ならびに、湾岸諸国の原油決済通貨の米ドル離れに関する噂が挙げられるだろう。
■米ドル売りを後押しした豪州の利上げ
中国の旺盛な資源需要に支えられて、豪州は、2008年秋のリーマン・ショック後もリセッション(景気後退)せず、いずれ利上げに踏み切るだろうと予想されていた。
従って、0.25%の利上げ自体は、まったくサプライズではなかったが、市場がやや意外感を覚えているのは、利上げの早期実施だった(※)。
多くの市場関係者は、今年12月あたりに利上げが行われると予想していたため、対豪ドルでの米ドル売りが進み、これが米ドル全体への刺激材料となっている。
(※編集部注:豪州は10月6日(火)に0.25%の利上げを発表した)
■原油決済通貨の変更などあり得ない
また、10月6日(火)の英国メディアの報道も、足元で進む米ドル全面安の背景にある。
この報道によると、湾岸諸国が、ロシア、中国、日本、フランスとの密談を進めており、原油貿易の決済通貨を、現在の米ドルから、円、人民元、ユーロ、金などを含む「バスケット決済通貨」にシフトしようと企んでいるらしい。
このような噂は、国際的な政治経済に関する知識と常識を多少でも持つ者ならば、誰もが一蹴してしまうほど、バカバカしいものだ。
だが、米ドル売りに夢中になっている市場関係者にとっては、それは背中を押す絶好の材料となった。
■米ドル安は、このまま続く?
不思議なことに、金融マーケットでは、トレンドの進行が深まるにつれ、この類の材料が往々にしてまじめに取り扱われ、また、売買のきっかけとしてもよく利用される。トレンドレスの場合には、このような材料は、なかなか表れてこない。
ただ、1つ言えることは、この類の材料は、相場がクライマックスに向かう段階で浮上する。これは、過去の歴史が教えてくれている。
期待よりも恐怖心理が勝っている場合、マーケットは往々にして、バカげた理由でも動くものである。
米ドル全面安はこれからも続くかもしれないが、足元で見られる米ドル売りについては、米ドル安への「恐怖」という心理的な要素が強い。従って、このあたりで米ドル高に一時的に反転することも考えられる。
今こそ、米ドル安の行き過ぎを警戒すべき時期であろう。
■再利上げが期待され始めた豪ドル、目先は様子見か?
米ドル安のさらなる進行に懐疑的なスタンスを取ると言っても、性急に米ドル買いに転換する必要はない。
豪ドル/米ドルの日足チャートを見ると、目先は様子見のスタンスが賢明であろう。
(出所:米国FXCM)
ちなみに、前回のコラムでは、豪州の利上げ決定が、ロング(買い持ち)筋の利食いのきっかけになる可能性を指摘した(「円高=藤井財務相による『人災』説に疑問。米ドル/円の安値追いには賛成できない!」参照)。
だが、マーケットは、豪州の年内の再利上げを期待し始めたため、その時期が後ズレする可能性が大きくなった。
いずれにせよ、チャート上のパターンからは、豪ドル売り/米ドル買いは時期尚早であろう。
ちなみに、前回のコラムでは、豪州の利上げ決定が、ロング(買い持ち)筋の利食いのきっかけになる可能性を指摘した(「円高=藤井財務相による『人災』説に疑問。米ドル/円の安値追いには賛成できない!」参照)。
だが、マーケットは、豪州の年内の再利上げを期待し始めたため、その時期が後ズレする可能性が大きくなった。
いずれにせよ、チャート上のパターンからは、豪ドル売り/米ドル買いは時期尚早であろう。
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