2009年の為替はどう動くのか? 今回は山中康司さんの見通しをお届けしよう。
山中さんはバンク・オブ・アメリカ、日興シティ信託銀行を経て、2002年にアセンダント社を設立し独立。さまざまなFX会社へ配信される為替レポートやFX会社のセミナーなどで個人投資家のみなさんにはおなじみの存在だろう。
山中さんは金融機関で為替ディーラーとしての豊富な経験があり、(今回は取材しなかったが)金融占星術という珍しいジャンルにも造詣の深い為替の専門家だ。
そんな山中さんは、今年、これから為替相場がどう動くと見ているのか?
■2009年の基調は「ドル安」
「今年の基調は『ドル安』でしょう。流れとしては年前半、6月ぐらいまで、あるいはもう少し延びて9月ぐらいまではドル安だと思います。その後、年後半はドル高に戻すと思います。
昨年は3月にベアー・スターンズが買収され、9月にリーマン・ブラザーズが破綻しました。ベアーショックでダメになったかと思えば小康状態となり、今度はリーマンショックでダメになったかと思えば、小康状態といったことを繰り返しました」
米ドル/円 週足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
「今は不良資産救済プログラム(TARP)が動き出し、ビッグスリーへの救済案も出てきて、いったん落ち着きを取り戻している状況ですが、私はもう一度悪い方向へ動く可能性が高いと考えています」
100年に一度の危機と言われ、大恐慌が再来するという見方もあるが、山中さんもそのようなひどい状況を想定しているのだろうか?
「いいえ、大恐慌まではないでしょう。ただ、戦後最悪のリセッション(景気後退)の可能性は高いと考えています。戦後でリセッションの期間が一番長いのは第1次、第2次石油ショック時の16ヵ月。
今回、米国は2007年12月にリセッション入りしました。これが仮に16ヵ月続くとすると今年の4月までということになります。それよりもリセッションは長びき、戦後最悪になると考えているのです。
ただ、年後半のどこかで景気が本格回復まで行かなくても回復の兆しが見えるのではないかと思っています。そして、マーケットというのは実体経済の状況を早め、早めに先取りして動きますから、年後半にはドルが上昇する局面を迎えるのではないかと思います」
山中さんは今回の米国の景気後退を「石油ショック以上、大恐慌未満」と見ているわけだが、大恐慌には陥らないと考える理由は何なのだろう?
■オバマ新政権の一般教書、予算教書に注目
「それはオバマ新大統領がうまく舵取りするのではないかという期待が大きいからですね。彼は大変な状況で大統領に就任するわけですから、就任後の半年間ぐらいは矢継ぎ早にいろいろな政策を出してくると思います。
景気を刺激するためにいろいろなところに資金を投入するわけですが、その効果が実際に出てくるまでにはある程度タイムラグがあります。だから、年後半あたりに回復の兆しが見えてくるかなと考えているのです。
ですから、オバマ新政権が2月の一般教書、予算教書でどんなものを出してくるかということは2009年の米国経済、世界経済を占う上で重要なポイントだと思います。これはよく見ておいた方がいいですよ」
先日、1月20日に就任したばかりのオバマ大統領。その手腕に対する期待は高いが、注目ポイントは就任1ヵ月程度ですぐやってくるというわけだ。
ただ、山中さんはオバマ大統領が積極的な財政政策を打ち出して、ハッスルすればするほど(?)、心配な面があるのも確かだという。
「今は不良資産救済プログラム(TARP)が動き出し、ビッグスリーへの救済案も出てきて、いったん落ち着きを取り戻している状況ですが、私はもう一度悪い方向へ動く可能性が高いと考えています」
100年に一度の危機と言われ、大恐慌が再来するという見方もあるが、山中さんもそのようなひどい状況を想定しているのだろうか?
「いいえ、大恐慌まではないでしょう。ただ、戦後最悪のリセッション(景気後退)の可能性は高いと考えています。戦後でリセッションの期間が一番長いのは第1次、第2次石油ショック時の16ヵ月。
今回、米国は2007年12月にリセッション入りしました。これが仮に16ヵ月続くとすると今年の4月までということになります。それよりもリセッションは長びき、戦後最悪になると考えているのです。
ただ、年後半のどこかで景気が本格回復まで行かなくても回復の兆しが見えるのではないかと思っています。そして、マーケットというのは実体経済の状況を早め、早めに先取りして動きますから、年後半にはドルが上昇する局面を迎えるのではないかと思います」
山中さんは今回の米国の景気後退を「石油ショック以上、大恐慌未満」と見ているわけだが、大恐慌には陥らないと考える理由は何なのだろう?
■オバマ新政権の一般教書、予算教書に注目
「それはオバマ新大統領がうまく舵取りするのではないかという期待が大きいからですね。彼は大変な状況で大統領に就任するわけですから、就任後の半年間ぐらいは矢継ぎ早にいろいろな政策を出してくると思います。
景気を刺激するためにいろいろなところに資金を投入するわけですが、その効果が実際に出てくるまでにはある程度タイムラグがあります。だから、年後半あたりに回復の兆しが見えてくるかなと考えているのです。
ですから、オバマ新政権が2月の一般教書、予算教書でどんなものを出してくるかということは2009年の米国経済、世界経済を占う上で重要なポイントだと思います。これはよく見ておいた方がいいですよ」
先日、1月20日に就任したばかりのオバマ大統領。その手腕に対する期待は高いが、注目ポイントは就任1ヵ月程度ですぐやってくるというわけだ。
ただ、山中さんはオバマ大統領が積極的な財政政策を打ち出して、ハッスルすればするほど(?)、心配な面があるのも確かだという。
■米国の財政赤字は急激に跳ね上がっている!
「1月7日の米国議会予算局の発表によると、2009年度(米国の場合は2008年10月~2009年9月)は米国の財政赤字が1兆1860億ドルに拡大する見通しです。史上初めて、財政赤字が1兆ドルを越えることになるのです。
さらにオバマ大統領は『財政赤字1兆ドル超え』という状態が数年続く可能性もあると話しています」
1ドル=90円とすれば、1兆ドルとは90兆円。途方もない金額だ。実際、米国の財政赤字はこれまで一番ふくれあがっても4000億ドル程度まで。下のグラフでもわかるとおり、1兆ドルというのは突如跳ね上がった数字なのだ。
そして、この状態が数年続くかもしれないというのである。
「1月7日の米国議会予算局の発表によると、2009年度(米国の場合は2008年10月~2009年9月)は米国の財政赤字が1兆1860億ドルに拡大する見通しです。史上初めて、財政赤字が1兆ドルを越えることになるのです。
さらにオバマ大統領は『財政赤字1兆ドル超え』という状態が数年続く可能性もあると話しています」
1ドル=90円とすれば、1兆ドルとは90兆円。途方もない金額だ。実際、米国の財政赤字はこれまで一番ふくれあがっても4000億ドル程度まで。下のグラフでもわかるとおり、1兆ドルというのは突如跳ね上がった数字なのだ。
そして、この状態が数年続くかもしれないというのである。
「これだけのお金を使って景気刺激を行えば、さすがに何か流れが変わってくるだろうと思えます。ただ、その一方、巨額の財政赤字によって米国に対する信認が揺らぐリスクもあるのです。
結局、財政出動による景気回復の期待と、膨大な財政赤字ゆえの米国に対する不信任が綱引きするわけですが、やはり、過去に例を見ないような財政赤字の拡大を考えると、為替マーケットの参加者はまずドル売りに動く可能性が高いと考えています」
■最悪の場合は“米国売りのトリプル安”が起こる
「さらに想定し得る悪い状況があります。それは米国への不信任が米国債の格付けに対する疑問に結びつく可能性です。
現在、米国債の格付けは最上級のトリプルAですが、本当にトリプルAでいいの? という疑問が必ず出てくると思うのです。
これによって米国債が売られ、長期金利が上昇する『悪性の金利上昇』が起こってくる可能性があります。その時は米国株が売られ、米国債が売られ、米ドルが売られるという、“米国売りのトリプル安”が起こると思います」
■巨額の財政出動が最悪の状況を招く可能性もある
景気をガンガン刺激するためには膨大な資金が必要だが、そのためには膨大な国債発行が必要となる。国債が市場にあふれれば、それは国債の売り圧力となる。
また、仮に市場参加者が米国債の格付けに対する疑問を持てば、米国債が売られることになるだろう。長期金利の代表格は10年もの国債の利回りだから、国債が売られて価格が下がれば、長期金利は上昇することになる。
FRB(米連邦準備制度理事会)は短期金利を一生懸命下げて、ゼロ金利政策をとっているわけだが、FRBの力が及ばない市場で国債が売られれば長期金利は上昇し、これが経済にダメージを与えるわけだ。
「つまり、オバマ政権が景気対策として巨額の財政出動を行うことは、最悪の状況を招く種を蒔いていることにもなるのです。米国の危機は米国1国だけの問題ではありませんから、個人的にはオバマ大統領に何とかうまくやってほしいと思っているのですが…」
(「【09年予想】山中康司さんに聞く(2) ~どうしていつも円高は急激なのか?~」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
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