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ガンパウダー・鈴木隆一さんに聞く(4)
FXではなぜ233日移動平均線がいい?

2009年10月30日(金)13:44公開 (2009年10月30日(金)13:44更新)
ザイFX!編集部

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「ガンパウダー・鈴木隆一さんに聞く(3) なぜ、米ドル/円はクセが悪いのか?」からつづく)

■まだ下がるんじゃないかと恐怖にかられないためには?

前回、鈴木さんに説明してもらった「押し目買い」の方法を、具体的にユーロ/円のチャートで見てみよう。

 「ユーロ/円は日足では直近上昇しています(※)。上昇トレンドにあると方向性を判断できます。そして、一番儲けたい人は、下の日足チャートの(A)の下ヒゲの先っぽで買いたいですよね。

 そのためにはどうするか?

 これは日足だけでは判断できないんです。下がっているところでは、まだ下がるんじゃないかと恐怖にかられたりします。

 そこで15分足を見てみると、長い下ヒゲが出た直後にローソク足が移動平均線を上抜いているなど、下降トレンドから上昇トレンドに転じたサインが出ているので、ここで買えるとわかるわけです」

 なるほど、15分足ではトレンドが反転していることがわかりやすく思える。

(※編集部注:鈴木さんへの取材は10月15日に行っている。その時点での「直近」ということ)
(出所:米国FXCM

■損切りポイントはどうやって決めればよいのか?

 15分足でいったん安値をつけた後、上昇に転じかけたと思ったところで買うのだから、もしも予想と逆に相場が動いた場合は、15分足の直近安値を割れたところで損切りすれば良さそうだ。

 「いや、それはちょっと違うんですよ。今の例では基本的な方向性については、日足で上昇トレンドだと判断しました。だから、日足の上昇トレンドが崩れていなければ、エントリーしたポジションはまだ有効と考えた方がいいと思います。

 その場合、たとえば、損切りするのは、日足で引いたトレンドラインを明確に割り込んだところにすべきでしょうね。

 この例は少し短めのスイングトレードという前提でお話ししましたが、エントリーポイントも損切りポイントも15分足で決めてしまったら、少し短めのスイングトレードではなく、デイトレになってしまいます」

■自分はどこまで損しても問題ないか事前に決めておく

 「もっとも、『日足で引いたトレンドラインを明確に割り込んだところ』までポジションをキープしていたら、自分が許容できる損失の範囲を超えてしまう、ということなら問題です。

 そこで話が元に戻るのですが、結局、自分がどういうトレードをしたいのか、やはり最初に決めておかないといけないのです。

 自分はどこまで損をしても平気なのか、トレードする前に自分のお財布と十分相談しておきましょう」

■鈴木さんオススメのテクニカル指標は?

 上の例では、もっとも基本的な移動平均線とローソク足のみで鈴木さんに説明してもらったが、相場の方向性を見る場合、鈴木さんがよく使っていて、オススメのテクニカル指標は、移動平均線の他にパラボリックSAR、DMIあたりだという。

 また、エントリーポイントを探る際に使うテクニカル指標は、いろいろ使っているので、オススメと言われても迷ってしまうとのことだが、強いて言えば、スローストキャスティクス、移動平均線、MACDが挙げられるそうだ。
おすすめテクニカル(クリックで拡大)
(出所:米国FXCM

■なぜ、中途半端に思える233日移動平均線を使うのか?

 各指標の詳しい説明は長くなるので、テクニカル指標の解説書などに譲るが、使うテクニカル指標が決まったとしても、各指標にはその数値を算出する期間をどう設定するかといった問題がある。

 たとえば、移動平均線でも、20日移動平均線を使うのか、21日移動平均線を使うのか、25日移動平均線を使うのかといったことだ。

 FX会社が提供している鈴木さんのレポートを読んでいると、233時間移動平均線なんていうものが出てきたりするのだが、これは記者があまり見かけたことのない数字だった。

 この中途半端に思える「233」という数字はいったい何なのだろうか?

 「移動平均線でボクが使っているのは、日足であれば、短期移動平均線が13日、中期移動平均線が55日、長期移動平均線が233日です。1時間足の場合でも、13、55、233という数字は同じです。

 これはフィボナッチの数字なんですよ」

■フィボナッチ数列とは何か?

 為替相場の世界ではよく出てくるフィボナッチという名前。これは中世、イタリアの数学者、レオナルド・フィボナッチのことだ。

 フィボナッチという名前でよく出てくるのは23.6%、38.2%、50%、61.8%、76.4%などといった数字。これはフィボナッチリトレースメントと呼ばれるもので、相場がそれまで動いていた方向と逆に動き出した時、どの程度の水準までそれが続くのか、そのメドを示す数字だ。

 ちなみに61.8というのは黄金比(0.618:1)に出てくる数字。ピラミッドやミロのビーナス、ギリシャのパルテノン神殿などの造形にはこの黄金比が見られるという。

 話が少し脱線したが、フィボナッチリトレースメントの数字はどこから出てきたかというと、これはフィボナッチ数列というものから計算されたものなのだ。

 フィボナッチ数列とは以下のようにまず最初に0と1を置き、その後は直前の2つの数字を足して作っていく数列。

 0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377……

 最初は0+1=1、次は1+1=2、その次は1+2=3といった具合である。

 そして、23.6%、38.2%、50%、61.8%、76.4%といったフィボナッチリトレースメントの数字はこの数列の隣同士の数字とか、1つ飛ばした数字同士などを割り算して出てきたものなのだ(ただし、正確にその数値とイコールとは限らず、近似的な値の場合もある)。

 たとえば、13÷21=0.61905(≒61.8%)といった具合である。

■日足でも1時間足でも“233”はトレードの役立つ!

 以上、説明が長くなったが、鈴木さんが移動平均線の算出期間として使っている13、55、233といったものはフィボナッチ数列の数字だったのだ。

 上に示したフィボナッチ数列をご覧あれ。13も55も233も含まれていることがわかるだろう。

 「長めの移動平均線としては200日移動平均線を使う人も多いですが、これは株の世界の影響でしょうか。

 だけど、為替の場合は日足でも1時間足でも“233”を使った方が、不思議とサポートになったり、レジスタンスになったりすることが圧倒的に多いんですよ。233日移動平均線や233時間移動平均線がいいんですね」
(出所:米国FXCM

■233日移動平均線が使えるワケ

 なぜ、233日移動平均線が有効なのか? 鈴木さん流の解釈は次のとおりだ。

 「為替は土日と正月休みを除いて、1年中動いています。日本が祝日でも特に休みではありません。それで、1年の実働日数を数えてみると、うるう年でなければ261日なんですね。

 これと200日とはちょっと離れているじゃないですか。233日というのは200日と261日のちょうど真ん中あたりになります。

 実働日数の理屈からいけば、本当は250日とか260日の移動平均線を使った方がいいのかもしれませんが、ボクはやっぱりフィボナッチになじんでいるので、233日を使っているんですよ」

 ちょっと神秘的な感じもするフィボナッチの話だが……。フィボナッチ数列に由来する233日移動平均線がピタリ、ピタリとサポートになったり、レジスタンスになったりしてくれるのであれば、大変ありがたい話。

 あなたも233日移動平均線、使ってみますか?

(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔  撮影/中野和志)

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