■いずれ米国のスピードに欧州はついていけなくなる!
ここで、最弱通貨がこれまでの米ドルから円に変わるという鈴木さんの予想に戻ろう。
「円は米ドルに替わって最弱になるわけですから、米ドル/円だけでなく、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)でも円安が進むと思います。
米ドル・円・ユーロの組み合わせで言うと、ユーロ>米ドル>円という順で強くなると思いますので、結局、米ドル/円は上がる(米ドル高・円安)、ユーロ/ドルも上がる(ユーロ高・米ドル安)、ユーロ/円も上がる(ユーロ高・円安)という展開を想定しています」
ただし、その流れがしばらく続いたあとはユーロが下落してくることになると鈴木さんは予想する。
「当初は米国の利上げにユーロ圏が追随するとしても、利上げの回数を重ねていくと、米国のスピードに欧州はついていけなくなると思うんです。
FRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)の違いは、金融政策のスピードにあると思います。
ECBはユーロ圏の16カ国もの金融政策を担っているわけで、足並みを揃えるのが大変です。ユーロ圏各国の景気回復はおそらくまだら模様になると思いますしね。
そうなると、米国の利上げペースの方が早まり、ユーロとの金利差逆転も見えてくるでしょう。そうなったら、ユーロ/米ドルは完全に天井を打つと思いますね」

■米ドル/円はほぼ底を打っているとみる根拠
ここまでは金融政策を中心にファンダメンタルズの面から、今後の為替相場の先行きを鈴木さんに聞いてきたが、“テクノメンタルズ分析”を標榜する鈴木さんにはテクニカル分析のこともぜひ聞かねばなるまい。
ここからはテクニカル分析の話を交え、米ドル/円、ユーロ/米ドル、ユーロ/円相場について、鈴木さんの見通しを聞いてみよう。
「先日、10月7日につけた米ドル/円の直近安値は88円ちょうどでした。これはすごく理論的にいい値なんですよ。
米ドル/円には7月上旬から8月上旬まで上昇局面がありました。7月13日の安値91.74円から8月7日の高値97.78円まで値幅6.04円の上昇です。
その161.8%下がったところがほぼ88円なんですよ」

161.8%とはフィボナッチリトレースメントの一つの数字。フィボナッチリトレースメントとは相場がそれまで動いていた方向と逆に動き出した時、どの程度の水準まで逆方向の動きが続くのか、そのメドを示してくれる数字だ(「フィボナッチ」についてはこのシリーズの第4回で詳しく説明する予定)。
ここで、6.04円の161.8%を計算すると…
6.04円×1.618=9.77272円
となる。そして、8月7日の高値97.78円から9.77272円を引くと約88円になるということだ。
「このように米ドル/円の88円ちょうどというのは、テクニカル的にはポイントとなる数字だと思います。実際、そこでいったん止まっているわけですから、米ドル/円はほぼ底を打っているのではないかと見てるんです」
■ユーロ/米ドルは目先、1.51ドル台半ばまで上昇か
では、次にユーロ/米ドルはテクニカル的にはどうなのだろう?
「ユーロ/米ドルは1.51ドル台半ばをここ1ヵ月ぐらい~年末ぐらいまでにつけるのではないかと考えています。この目標値にはすでにかなり近づいてきましたが…。
1.51ドル台半ばというのは、フィボナッチから出てきた数字と一目均衡表の値幅観測論から出てきた数字が合致するところなんです。
まず、昨年、2008年7月15日の高値1.6038ドルから、2008年10月28日の安値1.2329ドルまでの76.4%戻しが1.5163ドルです。76.4%戻しというのは、フィボナッチの黄金比率の一つですね。
そして、一目均衡表ではN計算値に注目しています」
(次のページでは“超暴れ馬”通貨の話などが…)

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