「第2のクジラ」登場で米ドル/円は118円に接近
米ドル/円が動き出しました。今日(3月14日)のお昼時点で117.88円まで上がっています。
話題となっているのが「大学ファンド」。
10兆円を運用し、稼いだ利益で大学の先端研究を支援する岸田政権の目玉政策です。
先月(2月)から出ていた115円台前半での執拗な買いは、大学ファンドの運用が始まったことによるものだったようです。
(出所:TradingView)
運用資金は段階的に10兆円まで引き上げられ、当初は5兆円とされています。
為替市場の巨大さを思えば、5兆円はそこまでインパクトがある金額でしょうか?
大学ファンドは「第2のクジラ」とも呼ばれていますが、第1のクジラであるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)ほどの規模ではありません。
とはいえ、下支えする効果は充分あったようですね。
FOMCでの材料出尽くしに要注意
ウクライナ危機でも米ドル/円が底堅かったのは、大学ファンドの影響があったということですね。
本日、ウクライナでは4回目の停戦協議がオンライン形式で行なわれます。
過去の協議を見ると大きな進展は期待薄ですが、結果と市場の反応を待ちたいですね。
マーケットも徐々にウクライナ危機に耐性がついたようですが、今週(3月14日~)最大のイベントは3月16日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)ですね。
利上げ幅は0.25%でほぼ確定、焦点はドットチャートでしょうか。
ドットチャートと、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長のコメントでしょう。
先週(3月7日~)発表された米CPIは7.9%(前年比)。ウクライナで戦争が始まる前の水準です。
ウクライナ危機で一度は後退した金利の先高感が復活しており、米10年債利回り(米長期金利)は2%を超えてきました。
さらに上がっているのが米2年債利回りです。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米ドル/円との相関性がより高いのは米2年債利回りですから、それもあっての上昇だったのかもしれませんね。
ただ、FOMCをきっかけにして材料出尽くしで反落する可能性もある。要注意ですね。
3度目利上げ間近でも英ポンドが買われない理由
先週はECB(欧州中央銀行)理事会も開かれました。
金融緩和の縮小を加速させるタカ派的な会合となり、直後はユーロが買われたものの、結局は下落しています。
タカ派で上がる場面があれば、売ってやろうと待ち構えていた投機筋が多かったようですね。
(出所:TradingView)
今週はBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])や日銀の金融政策決定会合も開催されます。
日銀はとくに動きがないでしょうが、BOEは3回目の利上げとなる見通し。それなのに英ポンドは弱いですね。
(出所:TradingView)
欧州絡みの通貨が総じて売られているということでしょう。
それとともに、英国の1月の貿易赤字が過去最大となったことも影響しているのかもしれません。
ブレグジットの影響で貿易実務に遅れが生じているためとも解説されていますが、今回の数字が一時的なものなのか、トレンドとして続くのか、気がかりですね。
UEA、ベネズエラがロシア産原油の穴埋めするか
コモディティはいかがですか?
原油の先物市場は、今週末のSQ(※)を通過すればいったん落ち着くかもしれませんが、世界ではロシア産原油を補完する動きが出てきています。
イラン核合意の再建交渉こそ難航していますが、UAEが増産支持を表明しました。
また、米国はベネズエラへの経済制裁緩和の交渉を始めています。
ベネズエラ原油の輸入再開を目論んでいるようですが、ベネズエラはロシアのウクライナ侵攻への「強い支持」を表明しており、米議会からは批判の声もあがっているようです。
(※編集部注:「SQ」とは先物・オプションといった取引の最終決済を行うための価格のこと)
資源確保のために、なりふり構っていられないのでしょうね。
豪ドル/円の押し目買いでよさそう。中期的に90円、さらに上を目指すのでは
今週の戦略はどう考えますか?
ウクライナ危機により、南半球の通貨、資源国の通貨が買われる流れが強まり、豪ドルが買われています。
一方で、米ドル/円もダブルトップを形成していた116.35円を上抜けて底堅さを増している。
この2つを合わせると、今週も豪ドル/円の押し目買いでいいのでしょう。
中期的には90円、さらに上を目指していくのではないでしょうか。
【参考記事】
●豪ドル/米ドルの押し目買い継続。原油が130ドルへ暴騰し、豪ドルはまだ強い! 米国は、毎会合利上げの雰囲気が後退(3月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●豪ドル/米ドルや豪ドル/円の押し目買いで! ウクライナ情勢で核の恐怖が現実的なものとなり、資金は「北半球から南半球」へ(2月28日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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