米ドル/円は急騰。円は主要通貨の中で際立って売られている
みなさん、こんにちは。
今回、改めて2022年年初からの主要通貨の動向を確認しておきましょう。以下は、年初からの主要通貨の対米ドルの騰落率。
(※筆者提供)
年初から米ドルに対して一方的に売られているのが円であり、米ドル/円は年初来高値を更新しています。一時、121.41円まで急騰するなど、大きく米ドル高・円安が進んでいます。円は主要通貨の中で、対米ドルで際立って売られているわけです。
(出所:TradinView)
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円に対して米ドル以上に強いのが豪ドル。豪ドル/円は2カ月半で10円以上暴騰
一方、円に対して大幅に値を上げている米ドル以上に強い通貨が豪ドルです。豪ドル/米ドルは年初来高値を更新し、一時0.7477ドルまで上昇。
(出所:TradinView)
豪ドル/円は、米ドル/円と豪ドル/米ドルのレートを元に計算される通貨ペアですので、米ドル/円も豪ドル/米ドルも年初来高値を更新している中、当然、豪ドル/円は急騰しており、一時90.65円まで続伸しています。
結果、今年(2022年)の豪ドル/円は、安値から10円以上もの暴騰を演じています。これは1年間の値幅ではなく、わずか2カ月半で達成したものです。ちなみに、米ドル/円は安値から7.94円上昇しました。
(出所:TradinView)
円安の要因は、3月18日(金)の日銀金融政策決定会合で黒田総裁が「円安容認」ともとれるコメントをしたことや、米10年債、米2年債利回りともに2.00%を超えて急騰していることがあげられます。
なぜ、豪ドル/円は2カ月半で10円以上急騰したのか。その3つの要因とは?
では、今年(2022年)の豪ドル/円が、2カ月半ですでに10円以上急騰しているのはなぜでしょうか?
筆者は一貫して豪ドルに対して強気(ブル)であり、その要因をまとめると下記の3点になります。
(1)南半球の通貨であること
これは、過去のコラムで何度もご紹介させていただいているように、ロシアのウクライナ侵攻のリスクにさらされている欧州、広義では北半球から資金が南半球に逃げているという指摘です。これは主に、シンガポールの友人が指摘している要因です。
(2)原油が大きく反落しても豪ドルは急落しなかった
資源国通貨や商品(コモディティ)価格が急騰しているので、豪ドルが強いのは当然ですが、原油が大きく反落しても豪ドルは急落しなかったこと。
(3)「通貨のバリュー株」である豪ドルに注目が集まっている
一般的にはあまり言われていませんが、メルボルンのアセットマネジメントに勤めている友人は豪ドルのことを「通貨のバリュー株」だと指摘しています。現在、金利上昇局面なので、グロース株よりバリュー株が注目されています。通貨でいえば、資源国通貨である豪ドルはまさしく、バリュー株であるともいえます。
これらに加え、最近の豪ドル/円の急騰の要因とされているのが、次に説明するエネルギー自給率の問題です。
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日本のエネルギー自給率の低さも、豪ドル/円上昇の要因に
以下は、経済産業省・資源エネルギー庁が発表しているデータになります。
(出所:経済産業省・資源エネルギー庁)
この資料によると、日本の一次エネルギー自給率はわずか11.8%しかなく、ドイツや韓国より低い数値になっています。2018年のデータでは、自給率の高い国は、ノルウエー、豪州、カナダとなっていて、現在、買われている通貨とも言えます。
米国の友人にこの資料を見せると、この資料は2018年のもので、その当時の米国のエネルギー自給率が97.7%という数字はうなずけるが、バイデン政権になってから、このエネルギー自給率は一気に下がっているといっていました。
では、日本は資源、具体的には化石燃料をどのような国から輸入しているかといえば、原油はサウジアラビア、LNG(液化天然ガス)と石炭は豪州が主となっています。
こうした点も豪ドル/円を急騰させた背景ともいえます。そもそも、こうしたデータがあるため、筆者は豪ドルに対して強気だったのですが、今回のロシアのウクライナ侵攻以降、こうした商品(コモディティ)価格はさらに上昇しているため、コストも急騰していることが推測されます。
3月18日(金)の日銀金融政策決定会合で黒田総裁が「円安容認」ともとれるコメントをしたことや、米10年債、2年債利回りとも2.00%を超えて急騰していることに加え、大学ファンドが米ドル買いをまとめてマーケットに投入して以降、円安が進行しています。
【参考コンテンツ】
●米ドル/円はぴょ~んと117円台へ。なぜ、ここまで上昇した?「大学ファンド」が影響したってホント?(3月14日、西原宏一&大橋ひろこ)
マーケット関係者によれば、1カ月物で123.50円のドルコール・オプション(買う権利)がまとまってマーケットに投入されたようで、米ドル/円はまずそこが節目になるのでしょうが、ターゲットは黒田シーリング(※)の125円台後半になりそうです。
(※編集部注:2015年夏、日銀の量的・質的金融緩和で円安政策が推進された時の米ドル/円のピーク水準(1ドル=125.80円台)のこと。黒田日銀総裁が「実質実効為替レートではこれ以上の円安は想定し難い」と発言したことから「黒田シーリング」と呼ばれている)
豪ドル/円は上昇トレンド入り。中期で100円を目指すか
そして、円安の本命は豪ドル/円。
以下は、豪ドル/円の月足チャートです。
(出所:TradinView)
昨年(2021年)10月の高値86.25円を上抜けて急騰し、次のターゲットは、2017年9月の高値90.30円としていましたが、本日(3月23日)簡単にブレイクしてしまい、一時90.66円まで急伸しています。
これは、豪ドル/円に強気な友人のコメントなので、話半分で聞いてほしいのですが、「豪ドル/円を二桁で買えなくなるのも時間の問題だろう」との見方をしています。
次のレジスタンスラインは計算すればいろいろ出てきますが、たしかにターゲットとしては100円になりそうです。
前述のように、今回の「円安加速」はエネルギー価格の高騰が影響しており、豪ドル/円を筆頭に円安が進むと考えますが、それは輸入品の価格が上がることを意味します。
じわじわと値上がりしているiPhone(アイフォン)も、いずれ1台20万円になるのでしょうか?
資源高から日本の貿易収支も、赤字に転落。
日本は資源輸入国であり、今回の資源高によりコストが高くなっているにも関わらず、「円安容認」ともとれるコメントをする日銀の黒田総裁。そして、LNGや石炭といった化石燃料を主に豪州に依存している日本。
2カ月半で10円急騰している豪ドル/円ですが、中期では100円まで上昇すると考えています。上昇トレンドに入った豪ドル/円、そして米ドル/円の行方に注目です。
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