日米金利差による米ドル買い・円売りが進んでいる
米英とも市場の想定どおり、利上げを実施した。FRB(米連邦準備制度理事会)はタカ派の姿勢を示し、今年(2022年)7回の利上げを実施していくだろうと推測される。
日米金利差による米ドル買い・円売りが進んでいるのも、自然のなりゆきとみる。
(出所:TradingView)
もっとも、円売りには安心感がある。なにしろ、繰り返し指摘してきたように、2022年年初来、日欧米株の大幅調整があっても、かつてのような円買いがまったくといっていいほど見られなかった。よって、株の調整が一服してくると、円が売られていくのもわかりやすい理屈だと思う。
ユーロ/円や英ポンド/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は、3月初頭まで大きく反落し、一見、円高の進行があったように見えた。
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しかし、米ドル/円が底堅く推移していたので、単純にユーロや英ポンドの急落につられた値動きだった。つまり、本質的に言えば外貨安であって、円高ではなかったわけだ。
したがって、米利上げ後に維持される円安のトレンドは本物であり、値ごろ感による逆張りは、目先、なお禁物であろう。
日本のFX会社が公表しているポジション情報などを見るとミセス・ワタナベさん(個人投資家)が持つポジションが円買い越しに転換してきた状況も見られるが、それをもって円売りのピークとは判断できないだろう。
むしろ逆張りのポジションの積み上げで、一段と円安のモメンタムが増加される可能性がある。なぜなら、性急な円買い筋がこれから踏み上げられる可能性が大きく、逆に「割安な円」がさらに売られていくハメになりやすいとみるからだ。
良い円安・悪い円安云々が論議され、また実質実効為替レートで測ると、円は50年ぶりの安さにあるから、心情的に「割安な円」を買ってみたいといった話は、わからないこともない。しかし、相場にはそのような「情」的な発想は通用しない。
さらに、根本的な問題として、トレーダーには円安の良し悪しは関係ないから、トレンドを徹底してフォローしていくしかない。
本来、円安にしても円高にしても、良し悪しを言うこと自体がおかしい話だと思うが、仮に「悪い円安」が認定されても、相場が円高の方向に振れていく、という保証はまったくない。
為替相場における本流、すなわちメイントレンドが、一般人の想定よりはるかに大きく、また長期に渡って形成さてきた事実から考えると、「悪い円安」云々が巷に叫ばれているからこそ、円が一段と売られていく可能性が高いと思う。
資源国通貨が円安をリード、そのパフォーマンスに注目
円安のリード役として、資源国通貨のパフォーマンスが注目される。
カナダドル/円、豪ドル/円は急伸し、2022年年初来高値や、コロナショック安値以来の高値を更新しているのはもちろん、カナダドル/円は2015年8月以来、豪ドル/円は2018年2月以来の高い水準に迫っている。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
外貨高にリンクしていることは間違いないが、円安の進行が一段と加速し、また円売りに安心感があることは確かだ。
商品市況の高騰で支えられる資源国通貨の上昇は、対米ドルよりも対円の方が進行しやすいから、資源輸入大国かつ利上げ展望が描けない日本の円が売られるのも、「理屈」として実行しやすいトレードだと思われる。
米ドル/円は120円の心理的大台打診、さらには125円も視野に
資源国通貨の高騰は、根本的な視点として、やはりインフレの高騰が重要な背景だと思う。
米インフレ退治の緊急性から、2022年年内連続利上げの可能性は高く、目先、金利差の拡大が想定される以上、米ドル/円の高値余地はなお大きいだろう。
確かに先週(3月7日~)安値の114.79円から一気に大幅上昇してきたが、頭打ちを判定できる状況ではないことも明らかだ。
テクニカルの視点では、118円以上に定着できる場合は、120円の心理的大台の打診が見えてくる。
さらに、120円の心理的大台の打診やブレイクがあれば、125円前後へ上昇する道筋が示されるだろう。
(出所:TradingView)
ただし、筆者は125円前後の上値ターゲット自体に違和感はないが、現時点では、やはり120円の心理的大台が現実的で、同大台の打診や上乗せがまだ見られていないうちに、125円云々の話をするのは性急だと思う。
言ってみれば、ミセス・ワタナベさんの逆張りが性急だと思う一方、過激な円安ターゲットにも距離を保ちたい。
とはいえ、仮に120円の心理的大台の打診に留まる場合にしても、大分、円安進行となる。よって、3月初頭の安値から目先までV字型回復を示しているユーロ/円も英ポンド/円も、米ドル/円を追随する形でコロナショック以来の高値を更新してくるだろう。
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仮にそのような市況の進行があった場合、文字どおりのV字方回復となり、さらなる円売り余地を拡大する。
なにしろ、ユーロ/円は昨年(2021年)5月にていったん頭打ちし、今年(2022年)3月安値までの変動を上昇波における途中の調整波動とみなした場合、その期間が長く、値幅も大きかった(コロナショック以来、全上昇幅の半分押しをいったんトライした)。
その分、新高値を取ってくると、今度は一転して上値を追うモメンタムの強化や上値余地の大幅拡大につながりやすいから、高値更新後の上値をむしろ追うべきだと思われる。
カナダドル/円や豪ドル/円は高値を追うべき
同じ理屈が、実は、現在のカナダドル/円や豪ドル/円に応用できる。カナダドル/円は2021年10月高値から、豪ドル/円は2021年5月高値から大型調整波を形成。また、今週(2022年3月14日~)に入ってから高値更新したばかりなので、目先は「買われすぎ」でも高値を追うべきで、逆張りの円買いは禁物である。
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さらに、ユーロ/円や英ポンド/円の高値更新があれば、もう1つ重要な示唆を与えてくれる。それはほかならぬ、ユーロや英ポンドの米ドルに対する下落トレンドが一服することである。
先行するカナダドルや豪ドルの、対米ドルでの堅調さにみられたように、円売りの加速自体が、外貨対米ドルの堅調なしでは図れないから、主要クロス円の高値追い自体が、米ドル全体の軟調を意味する。そのあたりの理屈はまた次回、市況はいかに。
14:00執筆
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