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なぜ、リスクオフの円高が起きたのか?にわかに高まる米国経済のりセッション懸念が背景に
前回のコラムでは、そろそろ米ドル/円も調整局面に入るのではないかと書きましたが、一時127.51円まで崩れ、その後は129円を挟んで行ったり来たりする動きとなっています。
【参考記事】
●米ドル/円上昇力に鈍化のサインが出てきた。上昇トレンドは頓挫しないが、高値追いはせず押し目をゆっくり買うトレードにするべきか(5月11日、志摩力男)
(出所:TradingView)
この米ドル/円を押し下げたのは、どういう理由だったのでしょうか?
前回のコラムでは、テクニカル面、ファンダメンタルズ面において、いくつか調整のきっかけになりそうな理由を書きましたが、本当の理由を何かひとつ書けと言われれば、それは「リセッション(景気後退)懸念」です。
米国経済が強いからインフレになっています。その米国経済がリセッションに陥るのか、にわかには信じられないですが、リセッションを警告する発言が多くなっています。
ゴールドマン・サックス元CEOであるロイド・ブランクファイン氏(私の元上司でもあります)が、久しぶりにメディアに登場し、米国経済がリセッションに陥るリスクは極めて高いと警告しました。
ゴールドマン会長、米経済がリセッションに陥るリスク「極めて高い」
出所:Bloomberg
最近、「日本はいずれ存在しなくなる」と発言したり、ツイッター社の買収を仕掛けたりと話題をさらっているイーロン・マスク氏は「米国経済は既にリセッションに陥っている」と言っています。
マスク氏、米は既にリセッション入り-エコノミストとは異なる見解
出所:Bloomberg
パウエル議長や、他のFRB(米連邦準備制度理事会)関係者の中で、米国経済がリセッションに陥ると発言している人はいませんが、最近の米国経済の動向をほぼ的確に当てているラリー・サマーズ元財務長官は、ずいぶん前から米国経済はインフレの後、来年(2023年)リセッションに陥ると予言しています。
サマーズ氏、米リセッション不可避の見方が「コンセンサスに」
出所:Bloomberg
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米国経済がリセッション陥るなら、マーケットはどう動くのか。利上げペース鈍化なら、米ドルの上昇力に陰りも
では、いずれ米国経済がリセッションに陥るのであれば、マーケットはどう動くのでしょうか?
現在、金利マーケットでは、FRBは6月、7月そして9月にも0.50%利上げし、その後、11月と12月に0.25%利上げすることで(合計2%)、年末には2.75~3.00%の水準にFF金利(※)が上昇すると想定されています。しかし、どこかでリセッションが顕在化した場合、おそらく利上げペースは鈍化するでしょう。年末には、2.75%よりも低い水準になっているかもしれません。
(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)
利上げペースが落ちるのであれば、米ドルの上昇力にも陰りが生じることになります。
当然、株価はリセッションを完全には織り込んでいないので、今はしばしの反騰局面にありますが、いずれもっと下落する可能性が高いでしょう。
(出所:TradingView)
株価がさらに下落するならば、それをどのようにヘッジすべきなのか?
実は、最近そうしたことがにわかに焦点となり、やはり「リスクオフの円高」という、しばらく忘れていた結論を思い出し始めたファンドマネージャーが急に増えてきたのです。
過去の株価下落局面で他のマーケットがどのように動いたのか、シミュレーションすれば簡単に出てくる結論です。最近は「リスクオフの円高」という場面にはあまり遭遇しなくなりましたが、人々の記憶から完全に消えたわけではありません。
一部の株のファンドマネージャーが、ポートフォリオヘッジの一環として、円のロング(買い)ポジションを取り始めた……これが最近の円高の背景です。
この数日の米ドル/円の動きは、129円を挟んで行ったり来たりですが、129円台後半になると、突然、大きな売りにぶつかり落とされます。
大きなポジションを持つヘッジファンドマネージャーがポートフォリオヘッジのために円買いに動いているように見えます。
(出所:TradingView)
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米国がリセッションに陥るなら、当然、欧州にも波及。ECB理事のタカ派化は、早期のマイナス金利修正を見越したものか
米国のリセッションリスクは、米ドル/円以外のマーケットにも影響はないのでしょうか。米国がリセッションに陥るのであれば、当然、欧州にもリセッションリスクはあるはずです。
BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は、先日発表した英金融政策報告書内において、2022年10-12月期から2023年にかけてマイナス成長に陥る可能性が高いと予想していました。英国もリセッションに陥るのであれば、ウクライナに近く、ロシアに天然ガスを依存している欧州は、よりリセッションリスクが高いといえます。
リセッションに陥ると、利上げは難しくなります。欧州は現在マイナス金利を導入しており、2回利上げして、初めてゼロ金利に戻ります。いつまでもマイナス金利で良い訳はなく、いずれ修正したいはずです。
逆説的な言い方になりますが、リセッションがこの先に控えているのであれば、今すぐにでも利上げしなければ、マイナス金利を修正する機会を失ってしまう可能性があります。
ECB(欧州中央銀行)理事たちが最近、急速にタカ派化しているのは、そうした背景もあるように思われます。利上げを渋っていたラガルド総裁も7月利上げを認め始めました。
写真はECBのラガルド総裁。ECB理事たちが最近、急速にタカ派化するなかで、ラガルド総裁も7月利上げを認め始めた (C)Visual China Group/Getty Images
フランス中銀総裁のユーロ安牽制発言は重要。今後、ECBはタカ派寄りの政策を採ることになりそう
先日のビルロワドガロー仏中銀総裁の発言は重要だと思います。
ユーロ/米ドルが1.05ドルを割り込み、2017年1月に付けた1.0340ドルの安値に近づき、ここを割り込むとパリティ(=1.0000ドル)挑戦はやむなしとなるところでしたが、「ユーロ実効レートの動向を注意深く監視する。弱すぎるユーロは我々の物価安定目標に反する」と明確にユーロ安に異を唱えました。
(出所:TradingView)
この発言は重要だと思います。ユーロ/米ドル下落に反対と、欧州でもっとも重要な国のひとつであるフランス中銀総裁が発言したからです。
南欧諸国の景気に配慮するより、ドイツなどの北欧諸国に配慮し、インフレと戦う姿勢を明確にしたのです。今後、ECBはタカ派メンバー主導でタカ派寄りの政策が採られることになるのではないかと思います。
欧州は今後、明確に金融引き締めに動きます。そうなると目先は円高の調整が少しあるにしても、中長期的に見て、欧米金利は上昇し日本の金利は変わらないので、ユーロ/円は上昇していくように見えます。
(出所:TradingView)
このところ、米ドル/円の動きに合わせて、ユーロ/円も140円から132.65円と急落しましたが、今後はゆっくりと再度140円を挑戦するのではないでしょうか。
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