米ドル/円、主要クロス円は既定路線どおりに続伸したが、ミセス・ワタナベはトレンドフォローしきれなかった!?
円安の本流は一段と強まり、世間を騒がせるほど円が売られている。前回の本コラムが提示したとおり、米ドル/円をはじめ、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の続伸はもはや既定路線なので、トレンド・フォローすればよいだけの話であった。
【参考記事】
●米ドル/円は、再度の高値更新をチャートが示唆! 米ドル/円・ユーロ/円・豪ドル/円・英ポンド/円を、テクニカル面から徹底解説!(2022年6月3日、陳満咲杜)
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しかし報道によると、ミセス・ワタナベと呼ばれる日本の個人投資家の動向からして、トレンド・フォローしきれなかったようである。
各FX会社で統計自体にばらつきがあるが、ポジションの総計として円買い超となった模様だ。米ドル/円やユーロ/円の急伸につれ、むしろ円売りポジションがどんどん削られ、円買いポジションが再度積み上げられてきたようで、また逆張りの様子を強めている。
それはほかならぬ、日本の個人投資家の逆張り根性というか、逆張りの行動パターンが得意とされているからだ。
そして何より、円安の進行が早いため、値ごろ感の判断が再び行われたようである。
値ごろ感は実生活と関連性があれば、より「実感」として強くなる
逆張りの行動パターンは、ミセス・ワタナベさんに限らず、世界の個人投資家に共通する問題なので、ここでは解釈を省くが、値ごろ感について若干、感想を述べたい。
値ごろ感による判断は、逆張りの行動パターンと深い関係がある。トレンドの進行が早いほど、また、モメンタムが強ければ強いほど、「行きすぎ」と判断されやすく、投機的な逆張りも発生しやすい。
その上、値ごろ感は実生活と関連性があれば、より「実感」として強くなる傾向にある。
足元の円安にある「行きすぎ」感は、その典型であろう。外国人よりミセス・ワタナベさんの方が、円安による物価上昇圧力を肌で感じているから、その肌感覚を相場に持ち込みやすい。
しかし、原則論として、逆張りや値ごろ感はともにトレンド・フォローにおいて邪魔な存在なので、よい結果に結びつかない可能性は大きい。
実際、今まで円安が進行してきた間にも、ミセス・ワタナベさんたちは値ごろ感による判断で逆張りしてきた。
その分、踏み上げられたからこそ、さらなる円安の進行、すなわち円安の行きすぎに寄与してきた。そして、円が一段と安くなると、値ごろ感も一段と増大。今度こそ、といった投機的な思惑が一段と高まり、また逆張りのポジションを取ってしまう。言ってみれば、連鎖的な悪循環が見られてきたのだ。
もちろん、永遠に続くトレンドはないから、逆張りの行動はいつか報われるかもしれないが、一個人どころか、たとえウォール街の王者(投資銀行)でさえ、歴史的な本流と対抗する体力を持てないから、安易な判断や行動は愚の骨頂のほかあるまい。
世界的な利上げ、あるいは緩和政策停止、利上げを準備する流れの中、日本だけが緩和政策を継続せざるを得ない事情なので、円安の合理性や可能性がしっかり存在する。そんな中、円安の終焉を安易に想定することは、とても恐ろしいことだと悟らないといけない。
米ドル/円の上値ターゲットは137円台、値ごろ感の判断や逆張りの行動は、やはり性急
実際、米ドル/円におけるRSIのサインは、強気リバーサルが点灯していたから、前回高値更新は必至と予想できた上、同サインに基づく計算(具体的な計算方式などは拙作「基本にして最強 GMMA+RSI 二刀流FX」(扶桑社)を参照)では、137円台の上値ターゲットが得られる。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
仮に、それが正しければ、足元における値ごろ感の判断、さらに逆張りの行動は、やはり性急である。
また、シンプル・イズ・ザ・ベストの原則に基づき、保ち合いの変動レンジの値幅を直前の高値を足していく計算、すなわち「倍返し」の計算で見てみよう。
5月9月(月)高値~5月24日(火)安値までの約5円の値幅を、そのまま5月高値の131.35円に足したら、135~136円台の上値ターゲットを得られるから、やはり目先、安易な逆張りを判断できないはずだ。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
ユーロ/円は141円台後半、豪ドル/円は100円の大台以上がターゲットに
理屈は同じだが、ユーロ/円の「倍返し」を見ていくと、141円台後半のターゲットをこれから達成してもおかしくない。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
豪ドル/円にいたっては、100円の心理的大台以上のターゲットが浮上してくる。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
とはいえ、上値ターゲットが必ず達成できるとは言っていない。また、上値ターゲットの達成があれば、さらなる円安の進行がもうないという意味合いでもない。
肝心なのは、強いトレンドが続く限り、それを徹底的にフォローしていくスタンスである。それこそがトレンドの王道であり、王道から外れると多大な代償を支払わなければならなくなる可能性が大きい。この点をいくら強調しても言いすぎではないから、念入りに記しておきたい。
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