参議院選挙は与党圧勝。海外勢の米ドル買いが持ち込まれ、米ドル/円は上昇再開
みなさん、こんにちは。
参議院選挙(7月10日)前は、今回の円安が日本の家計に多大な悪影響を与えるという報道が目立っていたため、政府としてもそういう意見に配慮し、「円安対策を取っている」というスタンスを見せなければいけませんでした。
そのため、参議院選挙前は、3者会合(=財務省・金融庁・日銀)なども開催し、政府として「円安の懸念を共有している」というスタンスを示していました。
政府・日銀「急速な円安憂慮」 3者会合で声明文公表
出所:日経新聞
そのため、多くの海外勢は参議院選挙前に、米ドル/円のロング(買い)を縮小。とくに安倍元首相の悲報で、「アベノミクスの終焉」という連想のもと、参議院選挙直前のマーケットで彼らは米ドル/円のロングをさらに減らしていました。
しかし、注目の参議院選挙は与党圧勝という結末。選挙後、すぐに黒田日銀総裁が「当面は新型コロナの影響注視、必要あれば躊躇なく追加緩和」とコメント。
そのため、週明けの為替市場では海外勢の米ドルの買い戻しが断続的に持ち込まれ、米ドル/円は上昇を再開させました。
(出所:TradingView)
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米ドル/円は短期140円、中長期147円に向けて上昇再開
7月13日(水)に発表された、6月の米CPI(消費者物価指数)の上昇率は前年同月比9.1%となり、1981年11月以来の高い伸びとなりました。
前月比では1.3%の上昇率となり、こちらも2005年以来の大幅な伸びとなるなど、いずれも市場予想を上回っています。
それに呼応して、米2年債券利回りが3.20%に上昇したこともあり、米ドル/円は一時138.28円まで上昇。今週(7月11日~)は136.02円からスタートしているため、4日間ほどで2円強上昇していることになります。
結果、米ドル/円は米CPIの強い数字に加え、参議院選挙の与党圧勝という報もあり、上昇トレンドに回帰。中長期では147円、短期では140円に向けて、米ドル/円は上昇再開。
(出所:TradingView)
スイスフラン高継続。ユーロ/スイスフランは0.9500スイスフランに向けて続落中
過去のコラムでご紹介させていただいているように筆者が注目している通貨ペアは、米ドル/円に加えてユーロ/スイスフラン。
【参考記事】
●スイスのビッグマックセットは2200円!?ユーロ/スイスフランは、年末には0.9000フラン、米ドル/円は調整後に137円突破か(7月7日、西原宏一)
インフレを嫌って通貨高に方針を変更したSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が牽引する形で、ユーロ/スイスフランは今週(7月11日~)も続落。一時0.9807スイスフランまで下落しており、先月(6月)SNBが利上げした時の1.0400スイスフランから約600pips下落していることになります。
(出所:TradingView)
ユーロ/スイスフランは引き続き、まず0.9500スイスフランに向けて続落中。
一方、過去の相場動向から検証すると、ユーロ/スイスフランが下落トレンドに入っていた局面では、ユーロ/スイスフランが主導する形でユーロ/米ドルも下落する傾向があります。
今回のユーロ/米ドルも、SNBが利上げを発表した時の1.0600ドルから約600pips下落し、一時パリティ(=1.00ドル)を割り込んでいます(安値は0.9998ドル)。
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7月22日は欧州にとって「運命の日」。ロシア産天然ガスの供給再開に注目
このユーロ/米ドルの下落は、スイスフラン高や米ドル高に加えて、大きなユーロ安要因が飛び出し、ユーロ/米ドルの足を引っ張っています。
マーケットが注視しているのが、7月22日(金)の欧州のDoomsday(運命の日)。
欧州にとって、ロシア産の天然ガスは重要なエネルギー源になっています。
言い換えれば、それが止まるとヨーロッパは破綻することにもなりかねないわけです。
現在、ロシアからヨーロッパへの天然ガスの大部分を供給しているパイプライン、ノルドストリームがメンテナンスのため7月11日(月)から10日間停止しています。
ドイツ銀行のストラテジスト、ジム・リード氏によれば、天然ガスがオンラインに戻るはずの7月22日(金)が、今年(2022年)もっとも重要な日になる可能性があるとコメントしているようです。
つまり、ロシアが欧州向けガス供給を停止するのではないかという危惧があるわけです。ブルームバーグもロシア産天然ガスの供給遮断リスクを報道しています。
ロシアが欧州向けのガス供給を停止した場合の影響に関し、UBSグループが今週公表した詳細な分析によれば、企業利益は15%余り減り、ストックス欧州600指数の下落率は20%を上回り、ユーロは0.90ドルまで下げる恐れがある。
出所:Bloomberg
スイスの大手金融機関のUBSグループによれば、ロシアが欧州向けガス供給を停止した場合には、ユーロ/米ドルは0.9000ドルまで下げる恐れがあるとしています。
多くのトレーダーの関心は、米国のインフレと金利の急上昇に集中しています
しかし一部メディアによると、前述のジム・リード氏は、「私たちは皆、市場のほとんどの時間をFRBと景気後退について考えているが、下期にロシアのガスがどうなるかは、もっと大きな話題になる可能性があると思う」と警告しています。
今月(7月)後半の注目はまず、参議院選後に上昇トレンドに回帰し147円へ向かって続伸する米ドル/円。
そして、7月22日(金)の欧州のDoomsday(運命の日)に備え、パリティ(=1.00ドル)を割り込み、0.9500ドルへ急落する可能性のあるユーロ/米ドル、そしてユーロ/スイスフランの続落に注目です。
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