YouTube動画「週刊!志摩力男」では、志摩さんがその日のコラムの内容からより注目しているテーマをピックアップし、5分程度の動画で解説します。動画を視聴して、もっと知りたい!と思った人は、続けてコラムをご覧ください。
米国のインフレ率はピークを迎えた。今後、インフレ率は低下すると想定される
米国のインフレ率が明確に上昇を開始したのは、2021年4月からです。2021年4月に発表された3月の米CPI(消費者物価指数)の上昇率は4.2%と、前月(2月)の2.6%から一気に跳ね上がりました。
パウエルFRB議長は、インフレ率上昇が「一時的」と繰り返し発言していましたが、一向に下げる気配がないため、2021年11月に「テーパリング(※)」開始を余儀なくされました。
(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
それ以降は、
インフレ率上昇 → 金融引き締め → 株価、暗号資産下落、米ドル上昇
という流れが始まりました。2022年に入ってから、かなり劇的にマーケットは動いたのですが、すべては高止まりするインフレに対応するためだったと言えます。
今、米国のインフレ率もピークを迎えたと言えます。6月の米CPIの上昇率は9.1%と40年来最高の数字となりましたが、6月に入りコモディティ(商品)価格が下落し、米消費者のセンチメントに大きく影響するガソリン価格も下落しています。今後、インフレ率は低下すると想定されます。
そうなると、今度は、
インフレ率低下 → 金融引き締めの中止 → 株価、暗号資産上昇
という連想になるのではないでしょうか。
実際、米国株は底入れ的な動きになっています。暗号資産もスリーアローズというヘッジファンドが破綻したりと、悪材料がかなり出ていたのですが、耐えて大きくリバウンドしています。「リスクオン」マーケットが戻ってきたかのようです。
(出所:TradingView)
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ユーロ、円に悪い材料が出てきて容易に買えず…。米ドル高がピークとなるかは確信が持てない
それでは、米ドル高もピークとなるのでしょうか?
その点については確信が持てません。少し気が早いのではないかと思います。というのは、ユーロにしても、円にしても、悪い材料が出てきて安易に買えないからです。
ユーロに関しては、ロシアからの天然ガス供給不安が出ています。2022年6月、ロシア国営のガスプロムは修理に出したタービンが西側の課した経済制裁によりカナダから戻ってこないため、ノルドストリーム1のガス供給を6割削減しました。
タービンは制裁の対象外となり、ロシアに戻ることになりました。しかし、現在、7月11日(月)から始まった定期点検で、ノルドストリーム1はガス供給を全面的にストップしていますが、点検が終わる7月21日(木)以降、ガス供給が再開されるかどうかわかりません(タービンが戻るのは24日(日)の予定)。
点検が終わっても、流量はおそらく6割削減のままと予想されています。そうなると、ドイツは冬を越すのに苦労しそうです。警戒レベル3にまで達すると、天然ガスの供給は配給制になると言われています。そこまで行くと、ドイツの経済成長は2%低下すると言われています。
ただロシアも、欧州諸国との関係を完全に断つつもりであれば、天然ガスの流量をゼロにすればOKなのですが、どうしてそうしないのかと言えば、(1)ガスの収入が必要であること、(2)政治的意図を実現させるため、ガスを取引材料に使っているので、すべて止めてしまうと交渉の余地もなくなってしまう、というところからでしょう。
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ノルドストリーム1のガス供給問題に加え、イタリア政局の混乱とユーロは問題が山積している
ガス供給の問題に加え、イタリアの政局も騒がしくなってきました。ドラギ連立政権を支える主要3党がドラギ首相信任を拒否しました。
その結果、イタリア10年債利回りがギリシャ10年債利回りを上回るという事態になりました。欧州でもっとも信用力のない国がイタリアということです。
ドラギ首相率いる連立政権を支える主要3党がドラギ首相信任を拒否。イタリア10年債利回りがギリシャ10年債利回りを上回り、イタリアが欧州でもっとも信用力のない国に…(C)Bloomberg/Getty Images
ユーロは問題山積であり、なかなかリバウンドが続かないでしょう。
(出所:TradingView)
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円相場に関しては、黒田総裁が現状のYCC政策をどのように変更していくか、その一点にかかっている
円に関して言えば、黒田日銀総裁がどのように現状のYCC(イールド・カーブコントロール※)政策を変更していくか、その一点にかかっています。
(※編集部注:「イールド・カーブコントロール」とは、長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、イールドカーブを適切な水準に維持すること)
おそらく黒田総裁は下手な金融引き締め的な措置は取らないでしょうが、7月21日(木)に開催される日銀金融政策決定会合は注目されます。政策変更がなければ、今度は140円トライとなるかもしれません。
(出所:TradingView)
為替市場では、他の市場同様にリスクオンとなるのではなく、ユーロも円も問題を抱えているので、米ドル上昇トレンドはなかなか終わらない様に見えます。
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