志摩力男のYoutubeチャンネル「志摩力男のグローバルFXトレード!チャンネル」では初のウェブセミナー「ライブ配信!志摩力男」を7月26日(火)に開催しました。通常だと月末の当コラムでは「月刊!志摩力男」をお届けするのですが、今回は、そのライブ配信の模様を全編公開します。
志摩さんといえば、忖度なしのぶっちゃけトークが魅力ですが、今回もライブ配信とは思えないほどの本音トークを展開しています。続きは動画をご視聴ください。
欧州は「生殺与奪の権」をロシアに握られているように見える
人気漫画「鬼滅の刃」の冒頭部分、主人公の竈門炭治郎が禰豆子を殺さないでくれと鬼殺隊の富岡義勇に嘆願するシーンがあります。その時、義勇は
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
と炭治郎を一喝、「弱者には何の権利も選択肢もない」、「悉(ことごと)く力で強者にねじ伏せられるのみ!!」と続けましたが、今の欧州は「生殺与奪の権」を鬼(ロシア)に握られているように見えます。
ユーロ圏はエネルギーのおよそ25%を天然ガスから得ており、その約3分の1はロシアから輸入しています。特に、欧州製造業の心臓部であるドイツ、そしてイタリアの依存度が高い。
【参考記事】
●米ドル/円は、日銀の政策変更がなければ140円を目指すか。米国のインフレはピークを迎えたが、米ドル上昇は終わらない!?(7月21日、志摩力男)
ロシアは定期検査前にノルドストリーム1経由のガス供給を輸送能力の40%に引き下げましたが、7月27日(水)からは20%へとさらに削減すると発表しています。これから需要期である冬場に向けて、欧州はガスの備蓄を高めなければならないのですが、このままいけばガス供給がどこかの段階でストップし、欧州の生産活動に多大な影響を及ぼすでしょう。
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欧州の経済指標は軒並み弱い。コロナ後の景気回復がはっきりと終わったことが示された
7月12日(火)に発表された、独7月ZEW景況指数はマイナス53.8と2011年の欧州危機以来の水準にまで低下。7月22日(金)発表された6月の独製造業PMIは49.2とついに好不況の分かれ目である50を割り込み、非製造業PMIも49.2となったことで、コロナ後の景気回復がはっきりと終わったことが示されました。
ガス不足から価格が上がっていること、物理的に足りないことから、欧州の亜鉛やアルミニウム精錬所は操業停止に追い込まれており、もし仮にロシアからのガス供給が冬場に完全にストップした場合、ドイツで2~3%、イタリアは3~4%程度GDPが減少すると試算されています。
「生殺与奪の権」はロシアにあり、はっきりとわからないのですが、おそらく今年(2022年)の7-9月期にも欧州はマイナス成長に陥るでしょう。
7月21日(木)にECB(欧州中央銀行)は0.50%の利上げを決行しましたが、フォワードガイダンス(※)を打ち出すのをやめ、今後は理事会ごとに決定するスタイルとなりました。
(※編集部注:「フォワードガイダンス」とは、中央銀行が将来の金融政策の先行きについて事前に示す指針のこと)
ロシア次第なので、仕方ない面はあります。そして、もっとも悪影響があるであろうイタリアを想定し、新たにTPI(伝達保護措置)を導入しました。
(※編集部注:「TPI(伝達保護措置)」とは、一部の加盟国ために新たに設けられた債券買い入れ措置のこと)
今後、為替市場はユーロ売りにシフトしてくる可能性が高い。ユーロ/米ドルは再びパリティを割り込んでくる
ドイツ10年債利回りは、6月半ばに1.8%前後まで上昇しましたが、ロシアによる天然ガス供給削減を受けて急低下、現状0.95%前後となっています。イタリアの10年債利回りはついにギリシャ(3.03%)より高く、3.44%まで上昇しました。
ドイツとイタリアのスプレッドは2.49%と拡大していますが、どの時点でTPIが発動されるのか、今後の焦点となりそうです。
(出所:TradingView)
コロナショックのとき2.80%、欧州危機の際は5.5%ぐらい、ドイツとイタリアのスプレッドは開きましたが、2.50%を超えてくると当局者としては嫌でしょう。
欧州の状況を見て、今後、為替市場はユーロ売りにシフトしてくる可能性が高いように見えます。ユーロ/米ドルのパリティ(=1.00ドル)挑戦は、1回目は跳ね返されましたが、今後どこかの時点で割り込んでくるでしょう。
(出所:TradingView)
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円安は純粋に貿易赤字の結果とも言える。日本は財政赤字が大きすぎて、金利を上げられないという弱点を抱えている
「生殺与奪の権」を誰かに握られているという点では、日本も同じです。欧州の場合はロシアですが、日本の場合は特に誰かに握られたというわけではありません。あえていうなら、マーケットでしょうか。自分で作り出した危機です。
日本は財政赤字が大きくなりすぎてしまい、金利を上げると債務が発散するため、金利を上げられないという弱点を抱えます。通常の状態だと、特に問題もないのですが、世の中がインフレになり、他国の金利が上昇すると、円安になるという新しい局面を迎えることになりました。
【参考記事】
●円安に限界はない!? 日本は巨額政府債務の維持がもっとも重要な政策に…。一方、SNBの政策変更でスイスフランはさらに上昇する(6月29日、志摩力男)
以前であれば、貿易黒字があったので、金利が低くても円安にはなりませんでしたが、今はエネルギー価格上昇を受けて貿易赤字拡大が止まりません。
今年(2022年)の上半期、貿易赤字は7兆9421億円となりました。輸入が増加したのは鉱物性燃料で、原油(プラス106.3%)、石炭(プラス212.8%)、液化天然ガス(プラス94.1%)です。
下半期も同じ様に推移すれば、年間の貿易赤字は約16兆円ということになりますが、決して小さい数字ではありません。16兆円が円売り外貨買いになったとすれば、為替マーケットに相応のインパクトがある数字です。
つまり、この円安はどこから来たのかと言えば、投機筋もあるでしょうが、純粋に貿易赤字の結果だとも言えます。
ウクライナにおける戦争がいつ終わるのか、わからなくなってきました。戦争が継続されている限り、原油価格の本格的下落は難しそうです。
(出所:TradingView)
日銀の金融政策に変更なし。米ドル/円は少し上昇した後はポジション調整で急落
前回の当コラムでは、7月21日(木)発表の日銀金融政策決定会合で何も政策変更がなければ、さらに円安が進むと書きましたが、驚くことに、米ドル/円は少し上昇しましたが138.88円までで、その後ポジション調整から急落しました。
【参考記事】
●米ドル/円は、日銀の政策変更がなければ140円を目指すか。米国のインフレはピークを迎えたが、米ドル上昇は終わらない!?(7月21日、志摩力男)
(出所:TradingView)
これまで、日銀金融政策決定会合ごとに米ドル/円は上昇してきたのですが、今回は初めて緩みました。つまり、市場には相応に米ドルロング(買い)・円ショート(売り)が溜まってしまい、調整をしなければいけない時期に入ったということでしょう。
米ドル/円のチャートを見ると、134.50円前後を割れるとさらに円高に行き、131.50円前後を試しそうです。しかし、下がってもその131.50円前後で限界ではないでしょうか。
目先は、欧米経済、特に欧州の景気後退がはっきりしてきたので、ユーロ/円の売りが入りそうです。それに連れて、米ドル/円も頭が重くなる可能性があります。
(出所:TradingView)
それでも、巨額債務を持つ日本は金利を上げられないという運命を背負っているので、大きく円高に向かうのは今後難しくなりそうです。
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