好材料ナシ、「ユーロの夏」へ
先週(7月18日~)のECB(欧州中央銀行)理事会は、0.5%の利上げとなりました。
発表直後にユーロ/米ドルは1.0270ドル台まで買われましたが、反落しています。
長期のサポートだった1.0350ドル程度までは戻れるかと思いましたが、1.03ドル台にも届きませんでしたね。
(出所:TradingView)
ECB理事会では、ユーロ圏内の金利差拡大を防止する「TPI(トランスミッション・プロテクション・インスツルメント)」の導入も発表されましたが、枠組みを発表しただけで、具体的な国債買い入れの計画はまだないようです。
イタリアではドラギ首相が辞任し、イタリアとドイツの金利差が拡大しています。
注目されていたノルドストリーム1は再開しましたが、根本的な問題は解決していません。いい材料がありませんね。
よく1.02ドル台に踏みとどまっているな、という印象。大手海外銀行が予想するように0.90ドル方向へ向かうのではないでしょうか。
今年(2022年)は「ユーロの夏」になるかもしれませんね。
(出所:TradingView)
大豆は年初来安値を更新、コモディティ高騰は一服か
ノルドストリーム1は再開したといっても、ロシアから欧州へのガス供給量は6割減のままです。
根本的な解決策が示されないと、需要期である冬場に向かって、ユーロはますます厳しくなりますね。
欧米のPMIは急角度で下がっていますし、原油もリセッション警戒で下げてきました。
CFTC(全米先物取引委員会)のポジションを見ると、5月、6月あたりからコモディティ全体の買いポジションがキューッと排水溝に吸い込まれるように買いが減っています。
大豆やコーンはロシア進行前の水準を割り込み年初来安値をつけました。米利上げやQT(金融緩和の縮小)の影響も大きいようです。
米ドル/円は調整局面へ
インフレを潰すために利上げしていますから、景気が悪化するのは当然といえば当然です。
「利上げする、でも景気は落とさない」というのは難しい。
今後も悪い経済指標は出てくるでしょうし、リスクオフ的な動きもあるでしょうね。
米ドル/円も136円を割る場面がありました。円安トレンドは終わったのでしょうか?
トレンドが転換するという感じはありません。
今週(7月25日~)から来週にかけて、長ければ8月いっぱいくらいまで、米長期金利(米10年債利回り)の低下とともに米ドル/円も調整するかもしれませんが、押したところは買い場だと思います。
(出所:TradingView)
今年上半期の貿易赤字は過去最大の7.9兆円。とても大きな金額です。
貿易黒字がもたらす円高の時代は終わったようです。
そして今週、7月27日(水)は今週最大のイベントであるFOMC(米連邦公開市場委員会)です。
経済指標の悪化により、一部では0.5%利上げを予想する声も出ていますが、やはり0.75%でしょうか?
そうでしょうね。
高田委員の就任会見、欧米GDP、GAFA系決算
今日、7月25日(月)の17時からは日銀審議委員に任命された高田創さんの就任会見。
金融緩和懐疑派のエコノミストですから、発言次第では円高方向のリスクがあるかもしれません。
7月28日(木)、7月29日(金)には欧米のGDP速報値が出ます。
欧州については、悪ければ素直にユーロ売りとなりそうですが、米国は経済指標が悪化すると、早期の緩和期待が高まり、株買いとなるかもしれませんね。
キャッシュ比率が高まっていますし、株を買い戻すタイミングを狙っている投資家も多いでしょうから。
今週はGAFA(※)系の決算発表もありますが、悪い数字を織り込んでいるだけに少しでもいい数字が出れば買われそうです。
(※「GAFA」とは、米国の主要IT企業であるアルファベット(旧グーグル)、アップル、フェイスブック、アマゾンの4社を指す言葉。4社の頭文字をつないだ造語)
今週はユーロ売りを軸に
今週の戦略はどう考えますか?
基本はユーロ売りです。
このコラムでずっと薦めているのはユーロ/スイスフランの売りですが、米ドル/円が調整し円高となるなら、ユーロ/円の売りでもいいでしょう。
【参考記事】
●米ドル/円は、131円台へ突入する深い調整の可能性も。注目はスイスフラン! 通貨高誘導へのレジームチェンジで、上値余地がある(6月27日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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