西原宏一さんのメルマガ「トレード戦略指令!」の有料会員向けに配信している動画コンテンツ「今月のFX・投資作戦会議」の中で、西原さんが為替相場で特に注目しているテーマを解説する「にっしートピック!」を無料公開しています。当コラム「FX&コモディティ今週の作戦会議」の内容とも連動しているので、ぜひ、ご視聴ください。
「9月FOMCの利上げ幅」に注目
先週(7月25日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)は0.75%の利上げとなりました。
利上げ幅は予想どおりでしたが、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見では、9月以降の利上げペース減速が示唆されました。
これが材料視されて株買い、米ドル売りが進んでいます。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルとユーロクロスの下落は続く! 米ドル/円の今の下落は健全な調整で、大きく下押したところは中期での良い押し目に(7月28日、西原宏一)
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
9月以降の利上げについては「depend on the data」、つまり「経済指標次第」だとしています。
「経済指標によって判断を変える」というのは、足もとのインフレと徹底的に戦うわけではないということ。
米CPIが上がり、利上げを慌てて加速させるようなら、ますますマーケットの信任を失いますね。
今回思い切って1%上げてもよかったですよね。せっかく80%以上も織り込んだ時期もあったわけですし。
米GDPについてはいかがでしょうか。
先週発表された第2四半期のGDPは年率換算マイナス0.9%。2期連続のマイナスとなり、「テクニカルリセッション」入りです。
バイデン米大統領は「私にはリセッションとは思えない」と否定していますが、定義に従えば、テクニカルリセッション入り。
インフレ退治のために利上げすれば、景気が悪化するのは当然ですし、米CPIは前年比で6月の9.1%がピークだったとしても、一気に2%まで落ちるわけではありません。
7%台、8%台でも十分に高い水準ですから、株価が上がったといっても一時的で、また落ち始めるのでしょう。
原油市場の大イベント・OPECプラス会合
先週発表された、6月分の米PCE(個人消費支出)デフレータは6.8%の上昇。40年ぶりの高水準です。
これを見ると、インフレの沈静化はまだ先のようですし、一方で個人消費支出は小幅な伸びにとどまっています。よくない兆候ですね。
今週、8月3日(水)はOPECプラス(※)会合ですね。
先月(7月)にはバイデンさんが中東を訪問して、サウジアラビアに原油の増産を要請しましたが、その成果はあるでしょうか。
(※編集部注:「OPECプラス」とは、OPEC(石油輸出国機構)にOPEC非加盟の主要産油国を加えた枠組みのこと)
バイデンさんはサウジとの交渉後に「数週間以内に措置をとることを期待する」と発言していましたし、大統領が直々に交渉して手土産ゼロというのも考えにくい。
一方で、WTI原油は90ドル台まで下落していますから、サウジ側から見れば、増産してさらなる価格下落のリスクをとる必要はありません。
予想は難しいですし、原油市場の今後を占う注目イベントですね。
(出所:TradingView)
8月の豪ドル/円は8割の確率で下落
今日から8月ですが、以前にも話したように、8月の豪ドル/円は1998年以降、80%の確率で下落しています。
8月はリスクオフにもなりやすく、米ドル/円では今朝、早速132円割れ寸前まで円高が進んでいます。
米ドル高・円安のトレンドが終わったとは思いませんが、8月はいったん小休止して円高が進む可能性に警戒しています。
【参考記事】
●豪ドル/円は、8月に80%の確率で下落!? 夏限定の短期戦略で、豪ドル/円を売り! 米ドル/円は下がっても132円~131円台か(7月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
明日(8月2日)には豪州の政策金利発表ですが、0.5%利上げの予想。
利上げ幅がこれより大きくなればサプライズですが、先週発表された第2四半期豪CPIは前期比1.8%の上昇。
第1四半期の2.1%から鈍化していることもあり、コンセンサスどおり0.5%かもしれません。
円安よりも深刻なユーロ安
注目は引き続きユーロです。
後ほど配信される動画で詳しく解説していますが、ノルドストリーム1は従来の供給量の2割に削減され、イタリアではドラギ首相が辞任しました。
イタリア債(イタリア10年債)とドイツ債(ドイツ10年債)の利回りスプレッドは拡大しており、2011年のユーロ危機を思い起こさせます。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルとユーロクロスの下落は続く! 米ドル/円の今の下落は健全な調整で、大きく下押したところは中期での良い押し目に(7月28日、西原宏一)
●ユーロ売りが基本戦略、ユーロは「好材料のない夏」に。おすすめはユーロ/スイスフランの売り! ユーロ/円の売りも良さそう(7月25日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
ECB(欧州中央銀行)は11年ぶりの利上げをおこなったものの、ユーロは上がりません。
日銀は通貨安誘導を行なっていますから、円安になって当然ですが、ECBは通貨高政策なのに、ユーロが売られている。円安よりもユーロ安のほうがより深刻ですね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 4時間足)
ユーロ/スイスフランの売りは継続ですし、8月はリスクオフや円高への警戒感も高まっていることから、ユーロ/円の売りでもいいでしょう。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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