FOMCは0.75%の利上げでサプライズなし。9月FOMCでの利上げ幅がマーケットの注目材料になっている
みなさん、こんにちは。
本日(7月28日)日本時間未明、今週(7月25日~)最大のイベントといえるFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果が公表されました。
一時は1.00%の利上げという声も上がったのですが、一連の米経済指標の悪化から、今回のFOMCでは0.75%の利上げになることがほぼ確実視されていました。
結果はコンセンサスどおり、0.75%の利上げでサプライズはなし。
マーケットは、9月に再び0.75%の利上げが行われるのか、それとも0.50%になるのかに注目しています。
パウエル議長は会見で、次回、9月のFOMCでも同じ幅(0.75%)の利上げを行うことを選択肢として残しましたが、最終的な判断は今後のデータに左右されるとコメントしています。
パウエル議長はFOMC後の会見で、9月のFOMCでも0.75%の利上げを行うこと選択肢として残したが、最終的な判断は今後のデータに左右されるとコメントした (C)Bloomberg/GettyImages
つまり「今後の経済指標によっては」、9月は0.75%ではなく、0.50%かもしれないといったニュアンスです。
本来、FRB(米連邦準備制度理事会)が目標としているインフレ率、2.00%に下げるということは、支出を大幅に削減し、経済の再起動を遅らせることになりますが、パウエル議長のコメントは、インフレ削減よりも成長重視という意味合いとなります。
米国の友人の1人は、「パウエル議長は、インフレ率を2.00%前後まで落とす意向はありません。例えば、時間をかけて6.00%前後にでも落ちればインフレはピークアウトし、株はボトムアウトといいことだらけといったスタンスのようですが、6.00%でもインフレは極めて高水準です」と揶揄していました。
つまり、米国のインフレはピークアウトはするものの、高止まりが続きそうといったところ。
その後、インフレが収まらなければ、ソフトランディングは諦め、再び利上げモードに戻るといったところでしょうか。
これでは、中期の米金利の上昇と米ドル高も継続といったところになります。
ただ直近の流れは、パウエル議長のハト派ともとれるコメントを受け、米10年債利回りは低下しました。米金利低下に呼応して、米ドル/円は一転して135.11円レベルに反落しています。
(出所:TradingView)
ただ前述のように、中期での米金利の上昇は変わりません。
今年(2022年)の米ドル/円は、半年強で25円も高騰していますので、今回の米ドル/円の下落は健全な調整とはいえ、大きく押したところは中期での良い押し目になると想定しています。
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為替市場の注目は、円から他通貨に移行。7月はユーロが円以上に下落している
ただ、直近の為替相場の注目は円から他通貨に移行しています。
以下は今月(7月)の主要通貨の対ドルの騰落率。
(※筆者提供)
過去のコラムで何度かご紹介させていただいているように、今年(2022年)は円が主要通貨に対して大きく下落してきました。
しかし、今月(7月)は円ではなく他通貨に対して大きく値を下げている通貨があります。それは、「ユーロ」です。
ノルドストリーム1を取り巻く環境の悪化が、ユーロ続落の要因に
今月(7月)に入って、当コラムで何度か取り上げているユーロは、今週(7月25日~)も続落。
【参考記事】
●今週の米ドル/円はいったん調整し、その後147円へ向け上昇再開! ユーロはイタリアの政局混乱も加わり、反発余地は極めて限定的(7月21日、西原宏一)
●米ドル/円は、短期で140円、中長期で147円!参議院選挙を終え、米国のインフレと急上昇する金利に話題が集中するなか、上昇再開!(7月14日、西原宏一)
ユーロ続落の要因はまず、ノルドストリーム1を取り巻く環境の悪化。
今週(7月25日~)、ロシアがノルドストリーム1のガス供給を20%に削減するというニュースが入ってきました。
ロシアが欧州向け天然ガス供給を一段と削減へ、欧州ガス急騰
出所:Bloomberg
個人的には、ノルドストリーム1の欧州へのガス供給が40%ですむわけはないんだけどなという印象をもっていましたが、やはりロシアは20%に削減してきました。
ロシアの狙いは、制裁の全面解除。
繰り返しになりますが、制裁されている国のガスを制裁している国が必要としているのは矛盾があります。
これで欧州、特にドイツへに負荷が一段と高まります。
指標となるガス先物価格は3月の高値に向けて上昇を再開。
(出所:TradingView)
これはユーロに対して大きなマイナスです。
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イタリアの政局の混乱もユーロにとってはマイナス。月末リバランスの動向に注目
ユーロにとっての次のマイナスは、イタリアの政局の混乱。
ドラギ首相の辞任に伴い、イタリアは総選挙を実施する事になり、イタリア国債は下落(利回りは上昇)。
以下のチャートは、イタリアとドイツの10年債利回りのスプレッド。
(出所:TradingView)
ECB理事会が終わってから、逆に反発し2.50%に向けて上昇しています。これもユーロにとっての大きなマイナスです。
ただ、今週(7月25日~)はユーロ/円やユーロ/スイスフランは続落していますが、ユーロ/米ドルはあまり下落していません。
これは、月末のリバランスが影響していると考えています。
今週(7月25日~)30日(金)は月末の最終営業日です。マーケットでは、月末のリバランスは、まとまった米ドル売りがでるのではないかとウワサされています。
今週(7月25日~)初めには、英バークレイズ銀行が月末のリバランスは米ドル売りというレポートを出したようです。
その後、米ゴールドマン・サックスも月末は米ドル売りのほうが優るのではないかというレポートを出したようで、明日(7月29日)のリバランスに注目が集まっています。
仮にリバランスで実際に米ドル売りが出るのであれば、ユーロ/米ドルは一時的に反発する可能性もあるため、下げ渋り。
逆にリバランスに向けて、米ドル/円の下落は顕著となるため、ユーロ/円の下落は大きくなります。
ノルドストリーム1のガス供給が削減されたことに加え、イタリアとドイツの10年債利回りスプレッドは急拡大しており、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の下落幅は拡大。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 週足)
当コラムで徹底してご紹介させていただいている、ユーロ/スイスフランのショート(売り)は継続。
1.03ドル台ミドルのダブルボトムを割り込んでいる、ユーロ/米ドルも丁寧に戻り売り。
対円での下落は短命に終わるかもしれませんが、リバランスに向けてユーロ/円の下値余地は拡大中。
この夏はユーロ/米ドル、そしてユーロ/スイスフランを筆頭にしたユーロクロスの動向に注目です。
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