YouTube動画「週刊!志摩力男」では、志摩さんがその日のコラムの内容からより注目しているテーマをピックアップし、5分程度の動画で解説します。動画を視聴して、もっと知りたい!と思った人は、続けてコラムをご覧ください。
米ドル/円はどこまで下げるのか。この円高は調整なのか、それとも新しい円高相場の始まりなのか
米ドル/円が調整しています。多くの人が気になるのは、
・米ドル/円はどこで下げ止まるのか?
・この円高は調整なのか、それとも新しい円高相場の始まりなのか?
という点だと思います。
(出所:TradingView)
まず、根本のところを考えたいと思います。なぜ、円安相場が始まったのか。
理由は大きく分けて二つ。
(1)金融政策の差。日本は巨額の財政赤字があるので金利を上げることができないが、他国はインフレ対応で金利を引き上げなければならず、金利差から円が売られやすい。
(2)貿易赤字。以前と違い、日本には強い輸出産業があまり残っていません。その一方、資源価格が上昇すると、それは容易に削減することができないので、輸入に必要な金額が膨れ上がることになります。事実、今年(2022年)上半期の貿易赤字は約8兆円。単純に2倍としても年間16兆円とかなりの赤字となります。
【参考記事】
●欧州の景気後退がはっきりしてくる中、ユーロ/円の売りが入りそう。欧州はロシアに「生殺与奪の権」を握られているように見える(7月27日、志摩力男)
この状況が変わらなければ、円安相場は終わらないと考えています。
資源価格はどうなるのか?
それは、ウクライナにおける戦争が終結するのかどうか、という問題もありますが、西側経済から世界最大の資源国であるロシアを排除するという作業が続くので、資源価格は高止まりすると思われます。
OPEC(石油輸出国機構)プラスでは、日量10万バレルの増産が決まりましたが、これはあまりにも少ない。サウジアラビアは米国の増産要請に多少配慮しましたが、事実上ゼロ回答に近い。米国の覇権が凋落しているのをひしひし感じさせられます。
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米国のインフレ収束が見通せない中、マーケットが来年の利下げまで織り込むのは行き過ぎ!
では、金融政策面ではどうか。この1カ月半ほど、米長期金利(10年債利回り)は6月14日(火)の3.50%前後から、ずっと下げ続け、8月2日(火)には2.52%まで下げました。
7月27日(水)に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)後の会見において、パウエル議長は「今後の利上げのペースを緩やかにする可能性がある」と発言しましたが、利上げペースの鈍化=米金利の天井近し、とマーケットは解釈し、米国債の購入に向かったために米長期金利は低下しました。
しかし、市場が織り込んでいる米金利は低すぎるのではないでしょうか。
(出所:CME)
上表はCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)が出している米政策金利の予測ですが、今年(2022年)の終わりに3.25%に達し、そこで金利上昇は打ち止め、そして来年(2023年)7月には利下げに向かうと予想されています。
いまだインフレ率がプラス9.1%で、インフレ収束も見通せていないのに、利下げまで織り込んでいるのは、いくらなんでも行き過ぎと思います。
(出所:FRB)
これは、2022年6月のFOMCで示されたドットチャート(プロット)ですが、FOMCメンバーが考える2023年の政策金利は、利下げではなく、むしろ利上げされ、3.50~4.25%のところにコンセンサスがあります。市場の考える3.25%は低すぎということになります。
過度な金利低下を織り込み始めたマーケットに、複数のFOMCメンバーが警告
過度な金利低下を織り込み始めた市場に対して、複数のFOMCメンバーが警告を発し始めました。8月2日(火)、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁はインフレ抑制という目標達成には「程遠い」、市場が織り込む利下げに対して、自分自身はそう考えないと明確に否定しました。
メスター・クリーブランド連銀総裁も、FRB(米連邦準備制度理事会)はさらなる取り組みを行う必要があると言いました。エバンス・シカゴ連銀総裁は、9月利上げは0.50%が妥当としつつも、0.75%も可能性があるとし、2023年末までに3.75-4.00%の水準に引き上げる必要があると発言しました。
前ニューヨーク連銀総裁であるビル・ダドリー氏は、今はブルームバーグのコラムニストになっていますが、「市場の希望的観測は金融環境を緩くすることによって、金融当局の任務を難しくするだけだ。それを相殺するために、さらなる金融引き締めが必要になるからだ」と皮肉たっぷりに言っています。
こうした発言を受けて、8月2日(火)の米長期金利は、2.52%から2.76%へと急反発しました。これは、正常化に向けた動きといえます。
(出所:TradingView)
おそらく、今後も、FOMC当局者は市場の過度な楽観をたしなめる方向で動くでしょう。そして、もし本当に市場の織り込む金利水準が低すぎると判断したら、9月のFOMCでは、3度目の0.75%利上げということになると思います。
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米ドル/円は130.40円前後まで軟化も、今度は軽いリバウンド相場を想定。ただ、すぐに140円という相場に戻るのも無理がある
米金利がこれ以上、下がらないということになれば、米ドル/円もサポートされ、元の上昇相場に早晩戻るのではないかと思います。
サポートラインのレベルとしては、前回のコラムで131.50円前後と示しましたが、それはペロシ米下院議長の訪台というニュースもあり、リスクオフから130.40円前後まで軟化しました。
【参考記事】
●欧州の景気後退がはっきりしてくる中、ユーロ/円の売りが入りそう。欧州はロシアに「生殺与奪の権」を握られているように見える(7月27日、志摩力男)
しかし、ペロシ氏の訪台問題に関しては、米中ともに自制的に問題に対処したため、大過なく終わっています。米ドル/円は130円前後が強いサポートとして機能し、今度は軽いリバウンド相場になるのではないかなと考えています。
(出所:TradingView)
すぐにまた140円という相場に戻るのも無理があると思います。思い描いているイメージとしては、2013年アベノミクス相場のころ、バーナンキショックで103円前後から93円前後へ米ドル/円が軟化した時があります。100円前後のときの動きですから、現状レベルで考えると13円前後の調整と言えます。今のところ高値から9円下げていますが、13円下げると126円台まで突っ込むことになります。
しかし、それでも単なる調整でした。同様の時間調整が今後あるのかなと想定しております。
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