トルコの6月貿易赤字は拡大。トルコリラが大きく売られた要因のひとつに
TUIK(トルコ統計局)は6月の貿易データを発表しました。
6月の貿易赤字は前年同月比で185%増加し81.7億ドルとなりました。その理由は直近12カ月で輸入は39.7%増加したのに対して輸出は18.7%しか伸びなかったことです。
(出所:TUIK)
原材料高によって輸入金額が大きく伸びたことの影響を、輸出の増加で相殺できませんでした。実はこれは、トルコリラが大きく売られた要因のひとつでもあります。
8月1日(月)に7月の製造業PMIが発表されましたが、46.9に後退し、製造業の悪化が加速していることがわかりました。製造業PMIは6月に48.1でしたが、PMIが50を下回ることは景気悪化を示すといわれます。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコの消費者信頼感指数は歴史的低水準。政権交代がない限り、負のスパイラルから抜け出すことは難しい(7月13日、エミン・ユルマズ)
コロナショックの影響が強かった2020年5月以来の低水準ですが、トルコに限らず中国や日本でも製造業の調子が悪くなってきています。
先日発表された6月の財政収支は311億リラの赤字を出したものの、2022年上半期で936億リラの黒字となりました。
パンデミック解禁による観光業の復活がトルコ経済の追い風になっている一方で、最近まで好調だった製造業での税収入が伸びたことも黒字に貢献していました。
しかし、製造業の悪化によって今後、赤字が拡大すると思われます。
トルコ中銀の外貨準備高は減少し、20年ぶりの低水準
今週(8月1日~)のトルコリラは対米ドルで大きく動かなかったものの、円高の進行によって対円で価値を失っています。米ドル/トルコリラは17.90リラを超え、トルコリラ/円は7.30円まで下がりました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トルコ中銀のスワップなどを含む外貨準備高は983億ドルに減り、2021年6月以来の低水準に到達しました。スワップを除く純外貨準備高は554億ドルでこちらも減少傾向にあります。
純外貨準備高は20年ぶりの低水準ですが、20年前の2002年はエルドアン政権が誕生した年です。CPI(消費者物価指数)が20年ぶりの高水準で、純外貨準備高が20年ぶりの低水準であるのは偶然ではありません。
景気悪化とトルコリラ安は、トルコに政権交代もたらす可能性が高い
景気悪化とトルコリラ安はトルコに政権交代をもたらす可能性が高いと思います。
一方で今年(2022年)に入ってからずっとウワサされていた、秋の解散総選挙のシナリオを最近聞かなくなりました。
エルドアン大統領はロシアとウクライナの仲介に努めたりして外交舞台で目立っていますが、国内の支持率は上がらず、なかなか解散総選挙に踏み切ろうとしません。
景気悪化とトルコリラ安はトルコに政権交代をもたらす可能性が高い。国内の支持率も上がらず、エルドアン大統領はなかなか解散総選挙に踏み切ろうとしない…(C)Anadolu Agency/Getty Images
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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