トルコ住宅価格は高騰が続いているが、住宅販売は減少。矛盾しているように見えるが当たり前のこと
TCMB(トルコ中銀)は6月の住宅価格指数を発表しました。トルコの住宅価格は高騰が続いていて、上昇率は前年同月比で160.6%に達しています。
トルコ最大都市であるイスタンブールでは184.9%の上昇を記録しています。もちろん住宅価格の上昇はインフレの影響も大きいですが、インフレ調整したベースでも年間47%の上昇を見せています。トルコへの移民が増えたことによる住宅ニーズの高まりに加え、原材料高による新規住宅の建設が減っているのが原因です。
(出所:トルコ中銀)
一方で、住宅販売件数は7月に前年同月比で12.9%の減少になりました。昨年(2021年)8月以降、年間ベースで初めての減少です。住宅価格と住宅販売件数の数字は矛盾しているように見えますが、価格高騰が続けば買い手が減るのは当たり前のことで、いずれ価格の上昇率も下がってくるでしょう。
TUIK(トルコ統計局)は4-6月期の雇用統計を発表しました。4-6月期に季節調整済みの失業率は0.4ポイント減少し、10.6%になりました。15歳から24歳までの若年層の失業率も同じく0.4ポイント減少し20.3%となりました。季節調整済みの労働参加率は53.3%で、全体雇用の56.1%はサービス業における雇用で、22%は製造業、16%は農業、5.9%は建設セクターでした。
(出所:TUIK)
トルコの7月財政収支は640億リラの赤字。支出金額が多く2カ月連続で財政赤字に陥る
今週(8月15日~)のトルコリラは対米ドル・対円でともに大きく動いておらず、米ドル/トルコリラは17.90リラ前後、トルコリラ/円は7.50円前後で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トルコ政府は7月に640億リラの財政赤字を出しました。政府の収入は前年同月比で106.7%増加したのに対して、支出は85%増加しました。増加率としては収入の方が大きいですが、支出金額が大きいのでトルコは2カ月連続で財政赤字に陥りました
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコリラ安と景気悪化が、政権交代をもたらす可能性。エルドアン大統領が、解散総選挙に踏み切らない理由は?(8月3日、エミン・ユルマズ)
財政悪化を受けて、ムーディーズがトルコ債を「B3」に格下げ
財政の悪化はトルコ債の格付けに悪影響を与えています。米格付け会社のムーディーズは先週(8月8日~)金曜日(8月12日)に、トルコ債の格付けをB2からB3に格下げし、見通しを「ネガティブ」から「安定的」に変えました。
格下げの理由はやはり財政悪化と外貨準備高の減少です。ムーディーズは年末にトルコの経常赤字はロシア・ウクライナ戦争が始まる前の予想の3倍まで拡大し、GDPの6%に達する見通しだと発表しています。
もっとも経常赤字の拡大トレンドはしばらく続いていて、ムーディーズの格下げも織り込み済みなので、トルコリラにほとんど影響を与えていません。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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