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田向宏行
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エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」

【トルコリラ見通し】トルコが据え置き予想の政策金利
をサプライズ利下げ! インフレ環境下での利下げは
狂気の沙汰だが、今後も利下げが続く可能性は高い

2022年08月24日(水)09:55公開 (2022年08月24日(水)09:55更新)
エミン・ユルマズ

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トルコ中銀はサプライズ利下げ実施。1週間物レポ金利を1.00%引き下げ13.00%に

 TCMB(トルコ中銀)は8月18日(木)に行われた金融政策委員会で、政策金利である1週間物レポ金利を14%から13%に1.00%引き下げました。

トルコ政策金利

(出所:各種データよりメルマガ部が作成)

事前の市場予想は据え置きでしたので、この利下げはサプライズとなりました。トルコ中銀は昨年(2021年)後半から利下げをはじめ、今年(2022年)1月までに5%の利下げを実施しましたが、2月以降は金利を据え置いていました。

 利下げの理由は景気減速への懸念です。トルコ中銀は「世界経済に対する不確実性が高まっており、またロシアとウクライナの戦争による地政学的リスクが増えているため、国内の景気を守るために緩和的な金融政策が必要である」と主張しています。

 もちろんこれをトルコ中銀が言っているのか、エルドアン大統領が言っているのかわかりませんが、おそらく後者です。

【参考記事】
【トルコリラ見通し】エルドアン大統領は「利下げを続ける」と発言。10月に解散総選挙に踏み切るシナリオが濃厚!?(7月6日、エミン・ユルマズ)

高インフレ環境下での利下げは狂気の沙汰。エルドアン大統領の指示なら、利下げ継続の可能性は高い

 TUIK(トルコ統計局)が今月(8月)初めに発表した7月のCPI(消費者物価指数)の上昇率は前年同月比でプラス76.9%でした。

 この数字の信ぴょう性は低く、実際のインフレが100%を超えていることを当コラムで指摘してきましたが、これが正しいと仮定しても80%近いインフレ環境での利下げは狂気の沙汰としか言いようがありません。

【参考記事】
【トルコリラ見通し】トルコのCPIは79.6%!経済政策の失敗でハイパーインフレが起き、トルコ国内では「米ドル化」が進む!(8月10日、エミン・ユルマズ)

 エルドアン大統領は景気悪化が本格化する冬より前に解散総選挙に踏み切りたいので、今回の利下げを中銀に強要した可能性があります。

トルコ中銀の利下げは高インフレ環境下では狂気の沙汰。これは選挙対策の一環として、エルドアン大統領が強要した可能性があるという (C)Anadolu Agency/Getty Images

トルコ中銀の利下げは高インフレ環境下では狂気の沙汰。これは選挙対策の一環として、エルドアン大統領が強要した可能性があるという (C)Anadolu Agency/Getty Images

 冬に比べて夏は観光業からの外貨獲得があるし、天然ガスの需要が少ないのでトルコ経済にとっては良い季節です。11月の解散総選挙シナリオが正しければ、今回の利下げは選挙対策の一環と考えるのが妥当です。これは利下げが続く可能性が高いことを意味しています。

トルコ経常収支は8カ月連続で赤字に。ムーディーズのトルコ債格下げも経常赤字拡大が影響している

 利下げ後のトルコリラは対米ドルで大きく下がって、米ドル/トルコリラは18.10リラを超えました。一方で円安の進行を受け、対円ではほとんど動いていません。

米ドル/トルコリラ 日足
米ドル/トルコリラ 日足

(出所:TradingView

 トルコ中銀のデータによると、6月のトルコの経常収支は34.6億ドルの赤字です。8カ月連続の経常赤字ですが、直近12カ月で327億ドルの赤字に達しています。

【参考記事】
【トルコリラ見通し】トルコの消費者信頼感指数は歴史的低水準。政権交代がない限り、負のスパイラルから抜け出すことは難しい(7月13日、エミン・ユルマズ)

 6月は観光業が好調で40億ドルを超える外貨収入があったのにも関わらず、64.3億ドルの貿易赤字を出したために経常赤字が拡大してしまいました。

前回のコラムで解説した格付会社ムーディーズによるトルコ債の格下げも、この経常赤字の拡大が大いに関係しています。

【参考記事】
【トルコリラ見通し】トルコは財政悪化と外貨準備高の減少で格付け引き下げられるも、トルコリラ相場への影響は限定的(8月17日、エミン・ユルマズ)

エブリシング・バブルの崩壊(エミン・ユルマズ著)
エブリシング・バブルの崩壊
エミン・ユルマズ

<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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