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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

ユーロ/米ドルは、目先は0.97ドル付近、欧州の悪材料が
重なると0.950ドルがターゲットに! ドイツのエネルギー
問題が深刻化、ユーロ/米ドルを中心にユーロ下落は続く

2022年08月25日(木)16:06公開 (2022年08月25日(木)16:06更新)
西原宏一

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ジャクソンホール会議、メインイベントは日本時間26日23時のパウエル議長のスピーチ

 みなさん、こんにちは。

 今週(8月22日~)最大のイベントはジャクソンホール会議。

 米ワイオミング州ジャクソンホールで、カンザスシティー連銀が開く年次シンポジウムに、主要国の中央銀行総裁が一堂に会します。

 テーマ は“Reassessing Constraints on the Economy and Policy”(経済と政策の制約を再評価する)。

 メインイベントは、日本時間26日(金)23時に予定されているパウエルFRB議長のスピーチです。

ジャクソンホール会議のメインイベントは、8月26日に行われるパウエルFRB議長のスピーチ (C)Bloomberg/Getty Images News

ジャクソンホール会議のメインイベントは、8月26日に行われるパウエルFRB議長のスピーチ (C)Bloomberg/Getty Images News

 マーケットでは、次回(9月)FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ幅を巡って見解が分かれています。

 7月の米雇用統計は予想を上回りましたが、同じく7月の米CPIが予想を下回ったことから、パウエルFRB議長がジャクソンホール会議の講演で、金融政策の方針をどちらかに強く傾ける理由はほとんどないとする見方がコンセンサスになっています。

 ただ、パウエルFRB議長がタカ派に傾く可能性があると分析している、ブルームバーグのエコノミストなども少なからずいます。

 よって、今週(8月22日~)のマーケットは、金曜日のパウエル議長の講演までは、やや米ドル高に振れるのではないかと想定したのですが、実際、じりじりと米金利が上昇しています。

 本稿執筆時点で、米10年債利回りは3.10%まで上昇。

米10年債利回り 日足
米10年債利回り 日足

(出所:TradingView

 呼応して、米ドル/円は一時137.71円まで反発しています。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

 一方、このところ当コラムでフォーカスしている、ユーロ/スイスフランとユーロ/米ドルは今週(8月22日~)も続落しています。

【参考記事】
ユーロ/米ドルは、再び0.9700ドルに向けて下落すると予想。欧州のエネルギー問題がなにひとつ改善しないなか、2022年後半もユーロは弱い状態で下落は続く(8月18日、西原宏一)

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8月に入っても、多数のメディアがドイツのエネルギー危機を報じる。ユーロの上値が重くなるのはわかる

 今月(8月)に入っても、ドイツの深刻なエネルギー危機を報道する記事が多数報道されています。

(1)独ガス代、年6万円超の負担増に ロシア産不足で価格高騰

出所:共同通信

(2)欧州ガス価格、冬季に60%上昇へ 西側の制裁が影響=ガスプロム

出所:ロイター

(3)独エネ大手、1兆6千億円赤字 ロシア産天然ガス減響く

出所:共同通信

 ここまでは、天然ガス高騰の話題ですが、つぎはライン川の水位の低下。

(4)独ライン川の水位低下、積荷なしで航行できない船舶も

出所:ロイター

 欧州天然ガスが高騰しているため、ドイツの電力価格が急騰していることも大きく取り上げられています。

(5)ドイツの電力指標価格が急伸、初めて700ユーロ突破-ガス供給懸念で

出所:Bloomberg

 上記の記事を読むと、電力価格が14倍というから強烈です。

 ベルギーのデクロー首相は、「欧州は最長で10年に渡り辛い冬を迎える可能性がある」と指摘しています。

 こうした環境下では、ユーロ/米ドル、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の上値が重くなるのはわかります。

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ユーロ/米ドルは、欧州の悪材料が重なると0.95ドルがターゲットになるか

 今週(8月22日~)のユーロ/米ドルはパリティ(=1.00ドル)を割り込み、ユーロクロス下落を牽引しているユーロ/スイスフランは一時、直近のターゲットである0.95スイスフラン台まで急落しています。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:TradingView

ユーロ/スイスフラン 日足
ユーロ/スイスフラン 日足

(出所:TradingView

 ユーロ/スイスフランは、節目の0.95スイスフラン台では、「もみ合う」のでしょうが、ドイツのエネルギー問題の解決のメドが立たなければ、0.9000スイスフランレベルまで下落する余地を残しています。

 ブルームバーグが報じた、ユーロ/米ドルの各社の見通しは、以下の通りとなっています。

(1)モルガン・スタンレー
モルガン・スタンレーは、7-9月(第3四半期)にユーロが2000年代初め以来となる0.97ドルまで下落すると予想。

(2)ノムラ・インターナショナル
ノムラ・インターナショナルは、9月末までに0.9750ドルを目標としつつ、エネルギー供給面の圧力で停電のリスクが強まるなどとして期中には0.9500ドルかそれ以下が視野に入る場面もあるかもしれないとの見方を示した。

(3)ソシエテ・ジェネラル
ソシエテ・ジェネラルの為替ストラテジスト、キット・ジャックス氏は顧客向けリポートで、「夏の終わりにユーロに売り圧力が戻った。ドルが買われていること、ユーロ圏経済を覆う危機的な状況が解消されていないことなどが理由だ」と指摘した。

 総じて見ると、ユーロ/米ドルの直近のターゲットは0.9700ドルレベル。

欧州の悪材料が重なると、0.9500ドルというのがコンセンサスになりつつあります。

 欧州天然ガス高騰などを受けて、ドイツの電力価格が14倍に。 ドイツのエネルギー問題が深刻化し、ユーロ/米ドル、ユーロ/スイスフランの下値余地が拡大していることに注目です。


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