大荒れだった7月のマーケットを振り返る。為替相場は円が急騰、ユーロは急落
みなさん、こんにちは。
7月、つまり第3四半期に入ってからの金融市場では、多くのヘッドラインが飛び出しマーケットは大荒れ。
まず、7月8日(金)の安倍元総理の死去という悲報。そして、ノルドストリーム1関連によるドイツのエネルギー問題と、イタリアのドラギ首相の辞任というイタリア政府の混乱がありました。
【参考記事】
●今週の米ドル/円はいったん調整し、その後147円へ向け上昇再開! ユーロはイタリアの政局混乱も加わり、反発余地は極めて限定的(7月21日、西原宏一)
今月(8月)に入り、ペロシ米下院議長が台湾を訪問するといったサプライズも加わり、マーケットのボラティリティは高まったままです。
では、まず7月に入ってからの主要通貨の騰落率を見てみましょう。
以下のグラフは、7月から本稿執筆時点(8月4日東京時間)までの主要通貨の対米ドルの騰落率です。
(※筆者提供のデータを参考にメルマガ部が作成)
こちらをご覧いただくと、対米ドルでもっとも下落しているのがユーロ、急騰しているのが円ということがわかります。つまり、ユーロ/円が急落しているわけです。
では、ノルドストリーム1問題とドラギ首相の辞任というニュースがあった7月21日(木)から本稿執筆時点(8月4日東京時間)までの動きを確認します。
以下のグラフは、7月20日(水)から本稿執筆時点(8月4日東京時間)までの主要通貨の対米ドルの騰落率です。
(※筆者提供のデータを参考にメルマガ部が作成)
ノルドストリーム1とドラギ首相辞任のニュースがあった日から、ユーロ/円が急落していますが、ユーロ/米ドルの下落はわずかなものに留まりました。
この期間は、米ドル/円とユーロ/円が急落しているという流れでしたが、上のグラフをご覧いただくとわかるように、対米ドルでもっとも値を下げていたのはユーロです。
結果、今年(2022年)上半期のマーケットは円安がテーマだったのですが、7月からはユーロ安がテーマになっているわけです。
ユーロに関しての材料を確認すると、依然としてネガティブな材料が満載です。
今年(2022年)上半期の円安は、日本銀行が金融緩和の手を緩めないためで、円安トレンドが継続することについては、わかりやすい展開と言えました。
一方、ECB(欧州中央銀行)がタカ派的に傾きながらも、ドイツのロシアに対するエネルギー依存を緩和することができないこと、加えて、イタリアの解散総選挙という政局の混乱などにより、ユーロ売り材料が多数ある状況です。
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ユーロ売りの対象通貨はやはりスイスフラン。ユーロ/円の続落にも注目
では、次に7月からのユーロ売りの対象通貨は何がベストかを探ってみましょう。
ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の下落の筆頭は、毎週、当コラムで取り上げているユーロ/スイスフランです。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルとユーロクロスの下落は続く!米ドル/円の今の下落は健全な調整で、大きく下押したところは中期での良い押し目に(7月28日、西原宏一)
6月のSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])の利上げ発表から下落を鮮明にしたユーロ/スイスフランは大きな戻りもなく、一時0.9700スイスフランまで下落。
【参考記事】
●スイスフラン/円の押し目買いと、ニュージーランドドル/円の戻り売りで。日本以外の主要国は、「逆通貨戦争」へ突入(6月23日、西原宏一)
(出所:TradingView)
ユーロ/スイスフランは、当コラムの最初のターゲットである0.9500スイスフラン、そして、中期の目標である0.9000スイスフランに向けて続落中。
ただ7月以降、対ユーロでもっとも値を下げて注目が集まっている通貨ペアがあります。
それは、ユーロ/円です。以下は、ユーロ/円の日足チャートです。
(出所:TradingView)
6月28日(火)に144.28円と今年(2022年)の高値に到達したユーロ/円ですが、その後急速に失速。8月2日(火)には、一時133.40円まで1088pipsも急落しました。
つまり、1カ月強で、ほぼ11円急落しています。
このユーロ/円急落を演出している要因のひとつが、米ドル/円の急落です。
過去のコラムで何度かご紹介させていただいていますが、7月~8月は円高になるというアノマリーがあります。
特に8月に豪ドル/円が急落するケースは約80%との試算もあり、多くのマーケットの参加者は8月の円高に警戒しています。
【参考記事】
●豪ドル/円は、8月に80%の確率で下落!?夏限定の短期戦略で、豪ドル/円を売り!米ドル/円は下がっても132円~131円台か(7月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
その円高ですが、今年(2022年)は前述のように、ドイツのエネルギー問題や、イタリアとドイツの10年債利回りのスプレッド拡大などの要因により、ユーロ/円の下落に警戒感が高まっているので要注意です。
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中期での米ドル/円の強気スタンスは変更なし。でも、8月の円高にはかなり警戒している
中期では、米ドル/円に対して強気のスタンスを変えない筆者ですが、8月の円高にはかなり警戒しています。
(出所:TradingView)
今年(2022年)上半期は円売りが注目され、米ドル/円はすでに26円近く急騰しています。
ただ8月が近づき、米国のリセッション(景気後退)懸念に対する報道が拡大すると、米10年債利回りはあっという間に一時2.50%に迫るほどの急落を演じます。
(出所:TradingView)
米ドル/円は米金利の低下に素直に呼応し、高値からすでに9円も急落しています。
欧州のエネルギー問題が深刻化し、イタリアの政局も混乱。8月の円高というアノマリーに加え、米リセッション(景気後退)懸念で米金利が急落しており、こちらは円高要因。
結果、ユーロ/円の下落が加速する可能性が高まっているともいえます。
ユーロ/スイスフランの弱気なスタンスに加え、今月(8月)はユーロ/円の続落にも注目です。
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