2022年前半の為替市場の主役は円だったが、後半はユーロが躍り出た
みなさん、こんにちは。
前回のコラムでご紹介させていただいたように、2022年前半の為替市場はなんといっても円安がテーマでした。
【参考記事】
●ユーロ/円の下落スピード加速に要注意!ユーロ/円は7月からのユーロ安と8月の円高アノマリーで、下落の可能性が高い(8月4日、西原宏一)
対米ドル、対豪ドルで円は大きく値を下げ、米ドル/円は半年強で25円も急騰しています。
2022年後半も米ドル/円の上昇トレンドは変わらないと考えていますが、主役は他通貨に変わったようです。
その通貨とは…「ユーロ」です。
以下のグラフは、第3四半期に入ってからの主要通貨の対米ドルの騰落率です。
(※筆者提供のデータを参考にメルマガ部作成)
対米ドルでもっとも値を下げたのがユーロ。そして、もっとも値を上げたのが円。
つまり本稿執筆時点までは、ユーロ/円のショート(売り)がもっとも効率の良いトレードだったといえます。次にユーロ/ニュージーランドドル、ユーロ/スイスフランと続きます。
視点を変えると、2022年前半は、米ドル/円や豪ドル/円のロング(買い)をうまく運用することがテーマだったといえます。
一方、2022年後半は、ユーロを対円や対スイスフランでいかにうまくショートで回すかがテーマになっているといえます。
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ユーロ/スイスフランは2カ月で800pips強下落。この下落トレンドの仲、戻しが100pips程度しかなかったことに注目
6月から当コラムでもっとも注目している通貨ペアが、ユーロ/スイスフランです。ユーロ/スイスフランは今週(8月15日~)も続落。
8月16日(火)には、短期のターゲットである0.9500スイスフランにあと100pipsに迫る0.9604スイスフランまで下落しています。
(出所:TradingView)
このユーロ/スイスフランの下落が始まったのが、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が利上げを開始した6月16日(木)の1.0417スイスフラン。
【参考記事】
●ユーロ/円の下落スピード加速に要注意!ユーロ/円は7月からのユーロ安と8月の円高アノマリーで、下落の可能性が高い(8月4日、西原宏一)
つまり、2カ月で800pips強下落したことになります(本稿執筆時点でのスイスフラン/円が140円レベルなので、対円で考えると14円程度)。
このユーロ/スイスフランの下落は過去2カ月、多くのトレーダーに多大な収益をもたらした形になります。
その理由は、下落にトラップ(罠)がほとんどなかったこと。
それをチェックするため、ユーロ/スイスフランの日足チャートを見てみましょう。
(出所:TradingView)
800pipsという下落幅も重要といえますが、この下落トレンドの中、戻しが100pips程度しかありません。
そのため、ユーロ/スイスフランをショート(売り)にしているトレーダーの多くが、調整で切らされることもなく、2カ月持ち続け、800pips程度取れたという形になります
このユーロ/スイスフランの下落局面は、2022年前半の米ドル/円上昇相場の値幅には足りませんが、SNBの利上げをきっかけに健全に続落した相場として、多くのトレーダーに貴重な収益を与えた形になっています。
短期的なターゲットである0.9500スイスフランに接近したため、これまでのような簡単な下落相場ではないかもしれませんが、ユーロ/スイスフランは中長期の目標である0.9000スイスフランに向かって値を下げると想定しています。
(出所:TradingView)
ユーロクロスに続き、ユーロ/米ドルも0.9700ドルに向けて下落再開
このように、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)は過去2カ月順調に下落していますが、次にユーロ/米ドルをチェックしてみましょう。
2022年後半に入り、ユーロ/スイスフランを筆頭に、ユーロクロスは順調に値を下げています。
ただ、ユーロ/米ドルの下落は緩慢。
ユーロ/米ドルの7月のオープニングが1.0484ドルであるため、300pips程度しか値を下げていません(本稿執筆時点のユーロ/米ドルは1.0165ドル)。
一時は0.9952ドルとパリティ(=1.00ドル)以下まで下がっていたのですが、反発しているわけです。
(出所:TradingView)
その理由は、米国のインフレ率の改善。
米国株は、CPI(消費者物価指数)さえピークアウトしてくれたらすべて解決というのがコンセンサスだったのでしょうか。7月の米CPIの上昇率は、前年同月比プラス8.7%の予想でしたが、結果はプラス8.5%だったことで大幅に上昇したわけです。
CPIの予想からのわずかな低下が、これだけの株の買い戻しを誘引するということについて、個人的にはピンときませんが、米10年債利回りも一時、2.5143%まで急落。
これが米ドル安を誘引し、ユーロ/米ドルをパリティ以上に押し上げています。
しかし、金利先物市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)がFF金利(※)の誘導目標を3.50%まで上昇させることが織り込まれている中、米10年債利回りが2.50%を割り込んで大きく下げる可能性は低いです。
(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)
結果、米国側の要因からユーロ/米ドルをレジスタンスラインである1.0400ドル以上に押し上げることは困難なのではないでしょうか。
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欧州のファンダメタルズは改善することもなく悪化…。ユーロ/スイスフランとユーロ/米ドルの続落に注目
一方、ユーロ側の要因、つまり欧州のファンダメンタルズは改善することもなく悪化しています。
ガスTTF価格(=Dutch TTF Natural Gas Futures)は、一時30%も急騰ししています。
(出所:TradingView)
このドイツをはじめ欧州のエネルギー問題において、解決の糸口すら見つからない状況では、ユーロ/米ドルの上値は1.0350~1.0400ドルレベルで限定的と見ており、再びパリティを割り込み、0.9700ドルに向けて下落を再開する可能性が高いと想定しています。
(出所:TradingView)
2022年も後半戦に突入し、ユーロ/スイスフランを筆頭に続落するユーロクロス。
米CPIのわずかな低下による米金利の低下で、一時1.0400ドルレベルまで戻していたユーロドルですが、ガスTTF価格の急騰が示唆しているように、欧州のエネルギー問題はなにひとつ改善しない中、再び0.9700に向けて下落を再開すると想定しています。
ガスTTF価格の急騰を横目に、ユーロ/スイスフランとユーロ/米ドルの続落に注目です。
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