パウエルFRB議長が2023年も簡単に利下げしないと表明したことに、市場参加者は驚いた
みなさん、こんにちは。
8月26日(金)、マーケットは今後の米国株の行方を左右する重大なジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演に注目していました。
事前の予想では、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースもタカ派予想に変わってきていたため、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演は「サプライズなし」という報道も一部見られましたが、多くの市場参加者が驚きを持って迎えたコメントがあります。
それは、「インフレを完全に沈静化させるまで、政策金利は高止まりする」と述べたことです。
つまり、いくつかの経済指標が景気の悪化を示したとしても、来年(2023年)も簡単には利下げしないと表明したわけです。
加えて、ご丁寧に「インフレを抑制するためには、ある程度の苦痛を伴う」とも発言。言い換えれば、金融を引き締める段階では、株の下落を伴うと言ったわけです。
ジャクソンホールの講演でパウエル議長は、インフレを完全に沈静化させるまで政策金利は高止まりすると述べた (C)Bloomberg/Getty Images News
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クレディ・スイスの預言者は、パウエル議長のタカ派を事前に警告していた
このパウエル議長がタカ派に傾斜することを、事前に警告していたのが、ゾルタンポズサー氏。ゾルタンポズサー氏は、NY連銀と米財務省で勤務した経験があり、現在、クレディ・スイスの預言者と言われるほど注目を浴びているストラテジストです。
彼は、「インフレを抑制するためには、米国経済は深く長い景気後退を経験する必要があるかもしれない」、「パウエルはマーケットを暴落させなければいけない」ともコメントしました。
先週(8月22日~)、26日(金)のパウエル議長のコメントは、ゾルタンポズサー氏が指摘したように「株の下落という痛みを伴ってもインフレと戦う」といった内容だったため、ジャクソンホール会議以降、米国株は下落を再開しました。
(出所:TradingView)
今週(8月29日~)はまだ米国株の下落は大きな値幅を伴っていませんが、来週(9月5日~)は、5日(月)が米国の祝日(レイバーデー)になるので休み明けの米国株の動向に要警戒です。
ECB理事会での利上げ幅拡大観測で、ユーロ/スイスフラン反発
ゾルタンポズサー氏の警告、そしてパウエル議長のお墨付き(?)も得て、米国株は大幅な調整局面入りする可能性が高まっています。
ここで株の急落時における為替の方向性を確認していきましょう。
これまで株の急落時には、避難通貨といわれた日本円やスイスフランをロング(買い)にするというのが基本でした。
ただ、現在の米ドル/円相場は、米金利の上昇に連れて円安気味に推移しています。
(出所:TradingView)
スイスフランは、過去に当コラムで注目していたように、先週(8月22日~)末まで値を上げ続けていましたが、来週(9月5日~)8日(木)のECB(欧州中央銀行)理事会が利上げ幅を0.75%に拡大するというのがコンセンサスとなり、ユーロ/スイスフランが反発し、今週(8月29日~)スイスフランは大きく値を下げています。
(出所:TradingView)
筆者も2カ月に渡って保有していたユーロ/スイスフランのショート(売り)も、いったんすべて利益確定しています。
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豪ドルの中期強気スタンスは変わらずも、目先は売り目線。豪ドル/米ドルや豪ドル/円でのショートがよさそう
では今後、為替市場ではリスクオフ時にどの通貨をトレードすればいいのでしょうか。
以下は、先週(8月22日~)のジャクソンホール会議以降の主要通貨の対米ドルの騰落率です。
(※筆者提供のデータを参考にメルマガ部が作成)
ジャクソンホール会議以降、もっとも値を下げているのが豪ドルになります。
筆者は豪ドルに対して中期での強気なスタンスは変えていません。
穀物や金属、石炭、LNG(液化天然ガス)といった主要な輸出品による多額の貿易黒字など、豪ドルを支える材料は多数あります。
しかし4月上旬から、エネルギー面で他の主要国に対して有利なはずの豪ドルがじり安となっており、ジャクソンホール会議前から軟調に推移していました。
この理由をゴールドマン・サックスは「中国(および世界的な)の成長に対するマイナス面のリスクは依然として残っており、豪ドル/米ドルに慎重であり続ける」とコメントしています。
こうした環境下で、米国株が下がりはじめたため、リスクアセットの豪ドルの下げが際立ってきたわけです。
豪ドル売りの対象通貨ですが、前述のダイアグラムでは、ユーロに対して豪ドルはもっとも値を下げています。つまり、ユーロ/豪ドルのロング(買い)です。
ただ、ユーロ/豪ドルは前述のように、来週(9月5日~)のECB理事会までショートカバーという局面も想定されるため、基本は豪ドル/米ドルか豪ドル/円のショート(売り)ということになります。
ジャクソンホール会議以降、米国株と豪ドル/米ドルの急落に注目。レイバーデー明けの動きにも警戒
東京市場では、米ドル/円が今年(2022年)の高値を抜いてきていることが話題となっていますが、米ドル/円の上昇が緩慢であるため、今週(8月29日~)に入って豪ドル/円は、一時95.00円を割り込む場面も見られています。
(出所:TradingView)
視点を変えれば、ジャクソンホール会議以降、米国株と豪ドル/米ドルの下落が激しくなってきていることに注目しています。
来週(9月5日~)の米国のレイバーデー明けは、米国株の下落、それに並走して値を下げてきている豪ドル/米ドルと豪ドル/円の下落に要警戒です。
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