24年前の米ドル/円は147.66円に到達した後、2カ月で35円の大暴落!
みなさん、こんにちは。
今週(9月12日~)の米ドル/円は不安定に乱高下しており、マーケット参加者を極めて神経質にさせています。これは前回、米ドル/円が145.00レベルまで到達した後に、米ドル/円が大暴落を演じたことが要因の一つです。
前回米ドル/円が145.00円レベルまで高騰した局面をチェックしてみましょう。
(出所:TradingView)
上図は、1995年〜2005年の米ドル/円の月足チャートです。
マーケットが意識している米ドル/円の高値は、今から24年前の1998年8月に到達した147.66円です。当局を含め、多くのマーケット参加者が節目として意識しています。
注目すべきは、その後のマーケット。8月に147.66円の高値に到達した後、ロシア危機やLTCMの破綻(※)などのリスクオフの要因が相次ぎ、10月には111.85円まで大暴落しています。
(※編集部注:「LTCMの破綻=Long-Term Capital Management」は、1994年から1999年まで存在した巨大ヘッジ・ファンドの破綻
2カ月で35.81円の大暴落。
24年前、僕は銀行でトレーディングしており、10月の米ドル/円の大暴落時はスクリーンから伝わる雰囲気がすごかったのを覚えています。
為替市場はすでにボイスブローキング(=Voice Broking)から電子ブローキングに移行しており、市場の雰囲気というのも少し無機質になってきていたのですが、この時は別次元でした。
米ドル/円が大暴落したため、マーケットでは米ドルの買い手がまったく出てこず、どこまで暴落するのかわからないといった恐怖がスクリーンから伝わってくるわけです。
僕も米ドル/円のショート(売り)で大きな収益が上がっていたのですが、それ以上に相場の雰囲気が恐ろしくて早めに利益確定をしました。マーケットがあまりに荒れてくると、急落後、急騰に転じて米ドルを買い戻せなくなるリスクも高まるためです。
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協調介入はほぼ不可能だが、口先介入のレベルも徐々に高まる
もちろん24年前と今年では米ドルを取り巻く環境が違いますから、暴落するといっているわけではありません。
今年の米国はインフレに苦しんでいます。そのため現時点では米ドル高が米国にとっては有利なわけです。
それを日本の都合で介入し、マーケットが米ドル安に転じれば米国の輸入物価は上がってしまいます。ですから、協調介入はほぼ不可能。
ただ、日本の当局の口先介入のレベルが徐々に高まっているため、9月14日の東京市場では米ドル/円は一転して142円台中盤まで急落しています。
(出所:TradingView)
日銀は口先介入からレートチェックへ。24年前は140円台で介入を実施した日銀は今回どうする?
日銀が最終的な為替介入を実施するまでは、一定の手順があります。
最初は「為替相場についてはコメントしない」といったコメント。
次が「為替相場は安定的に推移するのが望ましい」
そして「急速な変動は望ましくない」と進みます。
今月9日に黒田総裁が「1日に2~3円動くのは急激な変化」とコメントしていますが。当局のスタンスがこのレベルまで上がってきたことを表明しているわけです。
3段階めに突入か?9月9日の黒田総裁のコメントに為替介入レベルが上がっていることが読み取れる。米ドル/円市場はコメントに振り回される (C)Bloomberg/Getty Images
このコメントの後、米ドル/円はいったん反落したのですが、14日の東京市場では再び、145.00円に迫る144.96円まで急騰しました。そのため、日銀は次のレベルに進みます。
それは 「レートチェック」。レートチェックとは日銀が民間銀行に「いま米ドル/円のレートはいくらですか?」と聞くことです。
ブローキング業務が電子化する前は、日銀が介入するためには、民間銀行に「今いくらですか?」とまず聞く必要がありました。その後、例えば米ドル/円の1億ドルのプライスはいくらですか?とか1億ドル売ってくださいといった実際の介入の流れになります。
多くは語れませんが、僕も大手米銀時代に何度も介入のお手伝いをさせていただきました。介入には、他の邦銀と同じタイミングで介入する場合と単独の場合とがあります。
日銀の単独介入は効果があまり出ない場合があり、大手米系銀行で単独介入に入る場合は、ヘッジファンドが米ドル/円マーケットに参入していると思わせる効果を狙ったものだと推測していました。そのため、介入が入ったことは、秘密裏に行われ、銀行の信頼にかけて絶対他言できないわけです。
しかし、現在は電子ブローキングされているため、日銀が民間銀行にレートチェックする必要はありません。
そういう状況の中で、、例えば前述のように、「米ドル/円の1億ドルのプライスはいくらになりますか?」というチェックをしたとすれば、実際に米ドルを売ればいいわけですが、実際に介入はしていないわけです。
そして、こうした情報は逆にマーケットに流してほしい情報となります。
つまり「レートチェック」とは「次は実弾の為替介入をするかも?」という威嚇や警告という意味になります。
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為替介入の可能性に揺れるマーケットで有効なのは、ユーロ/円やポンド/円の戻り売り?
前述のようにインフレが高騰している米国では米ドル高が悪いわけではありませんので、米国との連携はとれず、日銀の介入の可能性は高いわけではありません。
ただ今年に入ってすでに31.52円も急騰している米ドル/円市場では、日銀がスムージングオペレーション(※)として実弾介入する可能性はあります。
(※編集部注:「スムージングオペレーション」とは、中央銀行が為替相場の乱高下を防ぐために市場に介入すること。今回の場合、米ドル高のスピード調整をするといった意味)
この可能性があるため、「レートチェック」自体はあくまでも口先介入の段階に過ぎないとしても、マーケット参加者は少なくとも利益確定のドル売りを出す。そして、米ドル/円は反落するわけです。
視点を変えれば、米ドルを買い遅れている輸入企業に、こうした口先介入によって米ドルが一時的に下がるので、その局面でドルを買っておきなさいよという意味の時もあります。
どちらにせよ、日銀は口先介入から「レートチェック」へと実弾介入に踏み込むレベルを一段上げてきました。
いったんマーケットは米ドルロング(買い)の利益確定の売りが一巡して、142円半ばまで下落しています。
「レートチェック」の次は「実弾介入」しか残っていませんので、マーケットの反応は下記の2つになります。
(1)警戒感が高まったため145.00円を高値に上値が重くなり、しばらく140.00~145.00円のレンジに収束する。
(2)米ドル金利が高水準で推移している環境下では、米ドル買いをせざるを得ないため、本当に実弾介入が出るまで節目の145.00円や147.66円のブレイクを狙う展開。仮に実弾が出れば、最初の反応は5~10円程度の急落になる可能性があるため、その後一気に米ドルショート(売り)に転じる。
(出所:TradingView)
どちらにせよ、ドル金利が高水準で推移しているため、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドルは上値の重い水準が続きます。当面ユーロ/円や英ポンド/円の戻り売りが有効になるのではないでしょうか?
欧州通貨に対しても米ドル高トレンドは変わりませんので、ユーロ/円を戻り売り、とします。
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