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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

ユーロ/米ドルは0.95ドル、ユーロ/スイスフランは
0.90フランを目指して続落中! 米ドル/円は高値を
追わず、急落場面でていねいに押し目を拾いたい!

2022年09月22日(木)16:56公開 (2022年09月22日(木)16:56更新)
西原宏一

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米2年債利回りが4.00%を超え、介入警戒感は高まるが、米ドル高は終わらない

 みなさん、こんにちは。

 9月22日(木)日本時間未明、今週(9月19日~)最大のイベントであるFOMC(米連邦公開市場委員会)が終了し、コンセンサスどおり、3会合連続で0.75%の利上げ実施となりました。

 しかし、FOMCメンバーによるドットチャート(ドット・プロット)では、政策金利が今年(2022年)末までに4.40%、2023年には4.60%に達するとの見通しも示し、タカ派に傾斜しています。

 さらに、パウエルFRB議長は「政策スタンスを十分抑制的となる水準へと固い決意で変更している」ともコメント。

 金利先物市場では、11月も0.75%利上げが実施される可能性が高くなっています。

 これを受けて米国株は当然続落、ナスダック総合指数は1.80%下落しました。

 一方、米4年債利回りも急騰し、ついに4%超えになっています。

 米2年債利回りと米ドル/円の相関チャートを見てください。

米ドル円&米2年債利回り 日足
米ドル円&米2年債利回り 日足

(出所:TradingView

 これまでの米ドル/円と米2年債利回りの高い相関から考えれば、米2年債利回りの4.00%超えで、米ドル/円は早晩前回高値の147.66円(1998年8月)を超えてもおかしくないのですが、本日(9月22日)の東京時間の正午時点で高値は145.37円まで。

米ドル/円が上げ渋っている理由に日銀の存在あり!

 この米ドル/円が上げ渋っている理由には日銀の存在があります。

 政府・日銀の介入レベルが「レートチェック」という最後のステージまで上がっているので、マーケットが高値を買い上げていけないわけです。

 政府・日銀による介入警戒レベルが実弾介入直前の段階まで上がっていることは、先週のコラムでご紹介させていただいていますが、山崎元財務官も政府は臨戦態勢と警告しています。

為替介入でも「全然おかしくない」、政府は臨戦態勢-山崎元財務官 

出所:Bloomberg

 このように介入警戒感が高まっているため、米ドル/円は極めて神経質に乱高下しています。

【参考記事】
ユーロ/円や英ポンド/円を戻り売り! 日銀のレートチェックは円買い介入実施の警告!? 1998年に、日銀は1米ドル=140円台で介入を実施、今回はどうなる?(9月15日、西原宏一)

 本日(9月22日)も日銀金融政策決定会合で、日銀が現状維持と発表すると、米ドル/円は一時145.37円まで急騰。その後介入の噂であっという間に143円台ミドルまで急落しましたが、ものの数分で145.00円近辺まで駆け上がっています。

 2週間前までは米2年債利回りの上昇に合わせて、相関性の高い米ドル/円をロング(買い)にしていれば、収益が上がるといった展開でしたが、日銀のレートチェックの報道以降は、極めて神経を使う通貨ペアに様変わりしています。

 しかし、視点を変えれば、マーケットの米ドルロング(買い)の投げが出て急落した局面で、米ドル/円の押し目をていねいに拾っていれば大丈夫ともいえます。

 米ドル/円は高値追いをしないことがポイントでしょうか。

(※編集部注:2022年9月22日の本稿執筆後、政府・日銀は為替介入を実施。米ドル/円は一時140円台まで下落しました)

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プーチン大統領の「部分動員令書名」で、ユーロクロスが大きく値下がり

 一方、今週(9月19日~)は米ドル/円同様、米ドル高で最安値を更新している通貨があります。

 それはユーロ/米ドル。そして当コラムで6月以降、フォーカスを当てているユーロ/スイスフランです。

 9月21日(水)の日本時間の午後、突然下記の報道により、ユーロ/米ドル、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)が大きく値を下げました。

 僕は動画を撮影中でしたので、なにが起こっているかわからず。収録後、ニュースをチェックすると、「プーチン氏、部分動員令署名 ウクライナ侵攻巡り演説」という報道で急落しているとのこと。

 「部分動員令署名」とは「部分的に国民を戦争に動員すること」です。つまり、現時点では部分的な動員ですが、事態が改善しなければ、全国民に「赤紙」が届くということ。「赤紙?」…、いつの時代ですか?という印象です。

 こうした報道はロシア国民に戦争はもうイヤだという厭戦気分が拡大すると思うのですが。

 プーチン大統領のコメントを確認すると、「Putin also accused the west of using "nuclear blackmail" against Russia noting that "if its territorial integrity is threatened Russia will definitely use all the means at its disposal." to defend Russian territory. “This is not a bluff.”=プーチンはまた、西側諸国がロシアに対して「核の脅迫」を使っていると非難し、「もし領土が脅かされたら、ロシアは間違いなく、自由に使えるあらゆる手段を使って、ロシアの領土を守るだろう」と指摘した。“これはハッタリではない”」

 “This is not a bluff=これはハッタリではない”と言われると、少なくともユーロや株のロング(買い)はリスクが高いといえます。

 結果、ユーロ/米ドルの下落トレンドは変わらず、0.9500ドルに向けて下落中です。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:TradingView

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リスクオフ時に買われるのは米ドルとスイスフラン

 一方、ロシアの下落トレンドでマーケットに負荷がかかると、買われるのは避難通貨。

 今年に入り、日本円は避難通貨から外れてしまいましたので、リスクオフ時に買われるのは、まず米ドルで、次にスイスフランとなります。

 スイスフランは6月にSNB(スイス国立銀行「スイスの中央銀行」)が0.50%利上げして、上昇が始まりました。

 SNBは逆通貨介入(=スイスフラン買い介入)も示唆したため、ユーロ/スイスフランは大きな戻りもなくきれいなダウントレンドを描き、当初のターゲットでもある0.9500スイスフラン台まで値を下げました。

 そして本日(9月22日)、重要なSNBの金融政策決定会合を迎えます。

 参加者の半数程度が0.75%の利上げ予測ですが、0.50%や1.00%の利上げ予測も出ており、利上げ幅は割れています。

 先日スウェーデン中央銀行がサプライズの1.00%の利上げを発表し、政策金利が一気に1.75%になりました。このこともあり、個人的には1.00%の利上げの可能性も高いのではないかと想定しています。

 ただ仮に本日のSNBの利上げが0.50%だとしても、利上げはまだ継続されること、欧州の緊張感が高まっているため避難通貨としてのスイスの上昇トレンドは変わらないでしょう。

(※編集部注:2022年9月22日、SNBは政策金利を0.75%引き上げて0.50%にすると発表しました)

ユーロ/スイスフランの次のターゲットは0.9000スイスフランとしています。

ユーロ/スイスフラン 日足
ユーロ/スイスフラン 日足

(出所:TradingView

 介入警戒感が高まっているため、高値追いはできませんが、米2年債利回りが4.00%に乗せていることもあり、147.66円に向けて米ドル/円は底堅く推移。

 一方、プーチン大統領の「部分動員令署名」という報道で欧州の緊張感が高まり、ユーロ/米ドル、ユーロクロスの下落余地が拡大しています。

0.9500ドルに向けて下落するユーロ/米ドル、そして0.9000スイスフランに向けて下落トレンドの渦中にいるユーロ/スイスフランの動向に注目です。


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