米ドル/円は年始に急落したが、底割れは回避した模様
年末年始の商い薄の中、円のパフォーマンスが目立つ。ます米ドル/円であるが、2023年1月3日(火)にいったん安値を更新。130円の節目を割り込んで129円台半ばへ突っ込み、さらなる下値トライの様相を呈していた。
しかし、当日(1月3日)に陽転して、1月4日(水)から目先まで切り返し、執筆中の現時点では133円台後半まで回復。底割れを回避した模様だ。
(出所:TradingView)
もっとも、昨年(2022年)12月20日(火)の「黒田緩和修正ショック」自体が行きすぎであったことは、前回のコラムをもって指摘したばかりだ。
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米ドル/円の安値トライがあっても、下値追いは躊躇せざるを得なかった。日米金利差はなお拡大傾向にあり、少なくとも目先、円の高値を追うのが適切ではないことは明らかである。
下のチャートをご覧いただきたい。
(出所:TradingView)
「黒田緩和修正ショック」がもたらした安値トライ(2)は、昨年(2022年)8月安値(1)の打診をもって、当面の「目標達成感」を漂わせた。
ゆえに、年末年始の商い薄でいったん安値再更新があったものの、たちまち切り返しを果たし、これから昨年(2022年)年末の戻り高値の134.50円をブレイクできれば、安値再更新自体が「ダマシ」と証左され、本格的な再上昇につながるだろう。
言ってみれば、2023年に米ドル/円の高値再更新はないとみるものの、152円の節目寸前まで上昇した米ドル/円の反落が、一気に130円割れまで進行していたこと自体も行きすぎであったため、まず修正される公算が大きい。
米10年国債利回りも、今年(2023年)後半の利下げまで織り込んでいるものの、昨年(2022年)12月安値の3.4%からいったん3.9%まで回復し、円高の余地を制限しているのは明らかだ。
(出所:TradingView)
豪ドル/円は安値更新を回避、強含みの可能性を示唆
目先における円高の限界は、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)でも観察される。
まず、豪ドル/円であるが、昨年(2022年)12月20日(火)の「黒田緩和修正ショック」がもたらした安値を割り込まずに反発してきた点が、強含みの可能性を示唆している。
(出所:TradingView)
日足を観察すればわかるように、そもそも同ショックがもたらした続落で、一気に87円の節目に迫り、日足における「三尊型」の成立を認めれば、これからさらなる下値余地を拡大する公算が大きい。
しかし、年末年始における安値再更新の回避、また、再度91円の節目まで切り返したことが、下放れ自体が「ダマシ」である可能性を示し、むしろこれからの回復を暗示しているように見える。
ユーロ/円は大型ジグザグ調整波の完成を示唆
ユーロ/円の場合は、昨年(2022年)10月高値から大型ジグザグ調整波を展開してきた。
「黒田緩和修正ショック」後の安値を再度割り込み、2023年年始にて137円台前半までいったん突っ込んでいたものの、1月4日(水)からの切り返しで141円台前半を回復、同ジグザグ調整波の完成を示唆している。
(出所:TradingView)
2022年12月28日(水)高値の142円台後半あたりの回復までには時間がかかるとみるが、いったん回復があれば、底打ちを証左でき、ブル(上昇)基調への復帰を想定できる。
言ってみれば、年始の安値打診は、一時の円高の行きすぎ、また円高の限界を探った公算が高く、これからむしろ外貨高・円安のトレンドへ復帰しやすいかと思う。
英ポンド/円は重要なサポートゾーンの確認を示唆
英ポンド/円の状況も同じであろう。2022年10月高値を起点とした大型ジグザグ変動において、2023年年初に一時155円台前半まで突っ込んだのは明らか行きすぎであった。1月4日(水)からの切り返しでいったん160円の大台を回復し、再度重要なサポートゾーンの確認を示唆している。
(出所:TradingView)
上の図表で示しているように、2022年5月安値の再打診、また2022年9月安値(英ポンドのフラッシュクラッシュ)を下回らない限り、日足では「三尊底」を形成していく可能性が高く、これから時間がかかっても再度高値更新につながっていくだろう。
円高の限界がいったん確認されただけに、円の高値追いではなく、むしろ外貨の安値を拾う好機(すなわち円売りの好機)とみなす。
市況はいかに。
1月5日(木)23:50執筆
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