米ドルの利上げピークアウトの後ずれで、米ドルの反発がしばらく続くか
日銀の新総裁人事が報道され、マーケットではまた波乱が起きた。日銀内部人材の昇格ではなく、経済学者の植田和男さんを起用すること自体、いろんな憶測をもたらしたが、結果的に一件落着となり、少なくとも新総裁が正式就任するまでいったん落ち着くのではないかとみる。
そうなると、ここ最近で重要なのは、やはり米利上げサイクルに関する見方だ。昨年(2022年)の米逆CPI(消費者物価指数)ショック以降、トレードアイデアとしてさんざん使われてきただけに、米ドル全体は大きく続落した。
しかし、そのアイデア自体の「賞味期限切れ」で、ドルインデックスがすでに底打ちを果たした公算は高い。急浮上してきた米利上げサイクルの延長、すなわち、利上げピ―クアウトの後ずれといった見方があって、米ドルの反発がしばらく続くのではないかとみる。
(出所:TradingView)
市場におけるセンチメントが大きく変わったのが、2月3日(金)の米雇用統計がリリースされた後であった。想定より随分良い数字で、米インフレいったん鎮火といった観測が後退し、米利上げ周期延長の観測を浮上させたというわけだ。
今週(2月13日~)リリースされる最新のCPIやPPI(生産者物価指数・卸売物価指数)を、市場関係者は固唾を呑んで待っていると思うが、よほどの数字でない限り、逆転した市場センチメントを修正できないだろう。すなわち、米ドル全体の切り返しは続くとみる。
ドルインデックスの週足チャートからは反発のサインが読み取れる
ドルインデックスの先週(2月6日~)の続伸は、先々週(1月30日~)の大陽線(下記チャートの2)を踏襲する形で、一層、先々週の大陽線の意味合いの証左となっている。
(出所:TradingView)
それはほかならぬ、「強気リバーサル&アウトサイド」のサインを点灯させ、昨年(2022年)5月末の安値水準(上記チャートの1)をいったん下回ったものの、下値への突っ込み自体が「ダマシ」になった可能性である。
この場合は、まず、2023年年初来高値(同3)の再打診やブレイクにつながっていくから、米指標次第の波乱含みを覚悟した上で、米ドルのロングスタンスを維持していくべきであろう。
ユーロ/米ドルは週足チャートで頭打ちのサイン
米ドルの対極として、当然のように、ユーロはプライスアクションの視点において逆のサインを点灯したはずだ。
週足を見ればわかるように、先々週(1月30日~)の陰線(下記チャートの1)は事実上「弱気リバ―サル&アウトサイド」のサインと化し、高値更新後の反落としてインパクトが大きく、先週(2月6日~)の続落は当然のなりゆきであった。
昨年(2022年)安値を起点とした切り返しにおいて、最初の段階を除き、事実上、初の2週間連続の下落となっただけに、これからも続落してこよう。
(出所:TradingView)
まず2023年初来安値(上記チャートの2)を打診し、さらに割り込んでいくと推測され、よほどの材料がない限り、週足における頭打ちのサインを修正できないと思う。
米ドル/円は日銀人事に邪魔されたものの、米ドルが切り返しやすい
地合いは変わらない
米ドル/円の場合は、やはり日銀人事に振り回され、幾分、波乱があった。
しかし、底打ちの構造がしっかり維持され、また同構造が壊れない限り、米ドルの切り返しが継続するとみる。プライスアクションの視点でいえば、1月18日(水)のローソク足(下記チャートの1)がもっとも重要であった。
(出所:TradingView)
なにしろ、当日の値幅が大きかったため、前の日足1本と「アウトサイド」のサインを形成、後ろ12本の日足と「インサイド」のサインを形成した。そして、先週(2月6日~)にていったん上放れ(1月18日高値をいったん更新)したので、底打ちの可能性を強く証明している。本来、一段と切り返しを果たしているはずのところで、日銀人事がもたらした波乱に「邪魔」されたのだ。
とはいえ、先週(2月6日~)の値動き自体が限定的であった上、先週(2月6日~)の週足自体は陰線であったものの、大引けが131円台前半まで戻っており、どちらかというと、横這いの状況であった。
日銀人事がもたらした波乱自体も「コップの中の嵐」となり、米ドルが切り返しやすい地合いという点は変わらないと思う。そうであれば、近々2023年年初来高値(上記チャートの2)の134.79円の打診が有力視される。
最近は外貨同士の差があまり鮮明ではなく、米ドル全体の値動きと合わせた動きとなっているゆえに、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)全般はまだら模様だ。主要クロス円の上値志向自体は変わらないが、より鮮明なサインなしでは目先の解読自体が性急なので、分析はまた今度に譲りたい。市況はいかに。
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