一部トレーダーから「米ドル下落」を予想する声が出始めた
脱ドル化(De-Dollarization)が頻繁に語られるようになってきました。ツイッターでも、メディアでの取り上げられる頻度も上がっているようです。
Lots of Talk About De-Dollarization https://t.co/Lc9VpbpIcs via @SoberLook pic.twitter.com/L5o8dKt7wi
— Jesse Felder (@jessefelder) April 26, 2023
「米ドル暴落説」は、昔から陰謀論者の大好きなトピックです。
年がら年中、暴落、暴落と言っているといつかは当たるので、暴落好きの人は話すのをやめません。しかし実際はどうだったかというと、過去10年以上、ずっと米ドル高が続きました。
米ドル/円に至っては、75円から150円へと円の価値が半減しました。その間の金利も考えると、円の価値は3分の1になっています(日米金利差を大体3%ぐらいと考えると、10年でラフに30%ぐらいです)。米ドルは大暴騰、円は大暴落でした。
(出所:TradingView)
ついでに言うならば、株価もずっと右肩上がりでした。
(出所:TradingView)
しかしここに来て、一部の尊敬すべきトレーダーからも米ドル下落を予想する声が聞こえ始めました。
ソロスファンドNo.2であったドラッケンミラー氏は、米ドル下落だけが現在自信のあるポジションだと言っています。
Druckenmiller takes aim at dollar in sole conviction trade
出所:FT
かつての切れ味の鋭さは見られなくなってきましたが、ドラッケンミラー氏は、間違いなく現代を代表するマクロファンドマネージャーです。
ただ、この記事で彼自身も認めているように、昨年(2022年)の米ドル上昇は取り逃がしたそうで、彼の過去45年のトレーディング人生において「最大のミステイク」だったと言っています。
米ドル下落を予想する人の気持ちはわからなくもありません。
まず、米金利はまもなくピークを打ちます。政策金利の上昇は来月(5月)、もしくは6月に打ち止めとなるでしょう。
マーケットは今年(2023年)後半から米金利が急激に低下することを織り込んでいます。それは、リセッション(景気後退)が始まることを予想しているからです。FRB(米連邦準備制度理事会)も、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨にリセッションが始まると予想していると書いています。
また、米国の金融システムも揺れています。SVB(シリコンバレー銀行)が破綻したように、ファースト・リパブリック銀行もそうなるかもしれません。中小の銀行は危機にあります。
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「脱ドル化」でどうなる?貿易及び外貨準備におけるシェアは確実に低下していく見通し
ただ、今言われているのは、米ドル下落予想ではあるのですが、それに加えて「脱ドル化」(De-Dollarization)もあります。
どういう意味か。米ドルが使われなくなる、基軸通貨としての米ドルの地位が低下する、もしくは失うという意味合いです。
ブラジルのルラ大統領も「なぜ米ドルで貿易をしなければならないのか?」と言いました。
米ドルの貿易及び外貨準備におけるシェアは今後確実に低下していくものと思われます。もっとも大きな理由は、トランプ大統領以来、気に入らない国があると米ドルの決済システムから排除しようとしていることです。米ドルの「武器化」です。
しかし、これは自ら基軸通貨としての米ドルを毀損しているようなものです。誰もが安心して使えるからこその基軸通貨です。決定的だったのは、ロシアとウクライナの戦争が起こったとき、ロシアの米ドルの外貨準備を凍結したことでしょう。他の国はそれを見て、米ドルを外貨準備として持つのは危険だと思ったはずです。
だからと言って、米ドル以外、何が使えるのか?
これも難題です。少し中国人民元のシェアは増えるでしょう。でも、中国という国をどこまで信頼してよいのかという問題があります。消去法で、「ゴールド(金)」が買われ始めています。答えのない時は、「ゴールド(金)」でしょう。
でも、他のコモディティ(商品)と比べてかなり割高になっています。そして、「金」には金利が付きません。価格が上昇し続けない限り、金への投資はあまり報われません。
(出所:TradingView)
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米ドルが大暴落するなら対ユーロか? ユーロ/円のロングは良い選択肢になりそう
世界中の投資家、国が答えのない中で模索し始めているところでしょう。でも、少なくとも言えるのは、米ドルの貿易、外貨準備におけるシェアは低下していきます。
米ドル暴落は常々言われ続けていました。最大の理由は、米国が世界最大の経常収支赤字国だからです。しかし、世界中で広く米ドルが使われるということは、米国が必然的に経常赤字になるということです。米国の経常赤字が単純に米ドル売りの理由にならないのは、そういう意味があります。
また、世界のIT化を進めたのは、米企業です。米国には世界でもっとも競争力のあるIT企業があり、世界中から収益を得て、超巨大化しています。AIがこれから世界を変えるとみられる中、それをリードするのはどう見ても、米国の巨大テック及び、その周辺の才能ある若手企業家です。
そして、本当に米国が景気後退に陥るのか、そこも確信はありません。大きな理由のひとつに、米財政支出がかなり大きいことがあります。インフレが本当に問題であるならば、支出を削減するか、増税をすべきです。バイデン政権はそれをせず、インフレはFRBに任せ、どんどん財政を出していきます。巨額財政支出が米国経済を支えます。
これはレーガン政権を思い出させる既視感のある光景です。レーガン政権時代、インフレ対策としてボルカー議長はどんどん金利を引き上げましたが、レーガン政権は軍備拡張を続け、財政赤字が拡大しました。そのため、とんでもない高金利にも関わらず、米国経済は比較的堅調でした。
高金利の影響で貯蓄貸付組合が経営不振となり、その影響は1990年代まで続きますが、米国経済はその間、リセッションに陥っていません。
そのことを考えると、米ドルが大暴落するのか?と言われても、まだわからないとしか、私には言えません。
米ドルが大暴落するならば、それは対ユーロに対してでしょう。日本経済の基調はやはり弱いので、その時円高に行く可能性はないわけではないですが、低く感じます。そうなると、消去法としてユーロ/円のロングは良い選択肢に思えます。
米ドル/円は高値からかなり調整しましたが、ユーロ/円は昨年(2022年)高値を抜いてきました。150円を突破すると、2015年の高値を抜くことになります。2023年の円安は、もしかしたら対ユーロなのかもしれません。
(出所:TradingView)
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