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田向宏行
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米ドル/円の頭打ちをチャートが証明! 1米ドル=155円
をトライしてもおかしくなかった相場が大きな「ダマシ」
を形成。「鬼より怖い」相場展開はこれから!

2023年11月24日(金)18:53公開 (2023年11月24日(金)18:53更新)
陳満咲杜

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米ドル/円が頭打ちであることを、テクニカル的にも確信

 米ドル/円が頭打ちである可能性は、さんざん指摘してきたが、テクニカル上の判断として確信できなかったのも事実であった。そして、11月21日(火)の値動きを待たなければなかったが、その確信をやっと得られたから、詳説しておきたい。

 まず、11月21日(火)の安値(下記チャートの4)は10月3日(火)の安値(同1)を下回っていた。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 結論から申し上げると、このサインが非常に重要で、結果的に11月13日(月)の高値更新(同3)を大きな「ダマシ」と証明したとみなし、また、米ドルのトップアウトを証明する存在としてインパクトが大きかったと言える。

 なにしろ、11月13日(月)の高値更新は、ほかならぬ、10月31日(火)の大陽線(上記チャートの2)に対するいったんブレイクということであった。

 そして、同日の大陽線の存在意義を問えば問うほど、11月13日(月)のいったん高値更新が「フォールス・ブレイク」、すなわち「ダマシ」であったことを理解できる。

マーケットの反応理由が「材料の出尽くし」であったというのは本質をつかんでいない

 なにしろ、10月31日(火)は日銀会合の日であった。同日、YCC(イールドカーブ・コントロール)の再修正があったものの、前日(30日夜)の日経新聞さんの報道(リークと思われる)があっただけに、マーケットの反応理由が「材料の出尽くし」であったと一部の市場関係者は言う。しかし、そのような見方は、間違いとは言えないものの、本質をつかんでいないと思う。

 なぜなら、事前のリークがあって、材料の折り込みがあったから米ドルが大きく買われたのであれば、日本の債券市場のパフォーマンスも同じ反応を見せたはずだ。

 しかし、当日、日本の長期金利(10年国債利回り)は上昇した上、日米金利差は縮小していた。事前に織り込み済みとか、材料の出尽くしとかの話は、少なくとも同日の米ドル/円の大陽線を解釈しきれないはずだ。

推測していた政府・日銀の介入が実はなかったことが判明し、米ドル買い・円売りの仕掛けが噴出

 では、米ドル急騰の原動力、すなわち、投機筋が日銀介入のリスクを背負っても円売りを大きく仕掛けてきた理由はどこにあったのだろうか。筆者は、同日(10月31日)財務省がリリースした1つの情報が原因だったと思う。

 同日、財務省は政府・日銀による9月28日(木)~10月27日(金)の為替介入の実績がゼロだったと発表。投機筋の円売り意欲を大きく刺激し、当日の米ドルの暴騰をもたらした、という解釈の方が理にかなう。

 つまるところ、2023年年初から継続されてきた大きなトレンドとして、米ドル買い・円売りが盛んであったから、上値トライの障害があるとすれば、それは日銀介入のリスクのほかなかった。

 さらに、10月3日(火)における波乱で、日足では「スパイクロー」の大陰線を形成したので、筆者も含め、多くの市場参加者は政府・日銀の介入があったのではないかと推測していた。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 ゆえに、いくら日銀政策が事前の報道と同じだったとはいえ、介入があったなら、円売り筋は大きく仕掛けられなかったと思う。しかし、当日、財務省の発表で、その危惧、あるいは警戒が薄れ、一気に米ドル買い・円売りの仕掛けが噴出したわけだ。

本来ならば、米ドル/円は一気に155円のトライがあってもおかしくなかった

 この意味合いでは、10月31日(火)の大陽線が発したサインを、10月3日(火)の大陰線と見比べないといけない上、両者の関係を探らないといけない。

 この場合は単独ではなく、大陰線や大陽線前後のローソク足をいっしょに見ないといけない。

 10月3日(火)の「スパイクロー」(下ひげ)の陰線は、値幅が大きかった分、前のローソク足(9月22日~)に対して「アウトサイド」(被せ)、後ろのローソク足(10月24日まで)に対して「インサイド」(孕み)の関係となるから、10月3日(火)高値の更新で10月31日(火)が大陽線となるのはむしろ当然の成り行きだったと言える。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 換言すれば、10月末の大陽線は、この前の波乱(10月3日)がなければ、実は確実ではなかった。確実になったぶん、10月31日(火)の値幅は大きくなり、「買われすぎ」の疑いがあっても、本来は高値圏の保ち合いを経て、さらなる続伸につながり、大幅に上昇余地を拡大すべきであった。一時、巷でもてはやされた米ドル/円の155円~160円といったターゲットも、実現しそうになった時期だった。

 実際、10月31日(火)大陽線の後、上下に値動きしながら、11月10日(金)まで同大陽線の値幅に「孕まれ」、大きな「インサイド」のサインを形成していた。そして、翌週の月曜(13日)に高値更新したため、本来ならば、米ドル/円は再度急伸し、数日のうち一気に155円のトライがあってもおかしくなかった

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

 (出所:TradingView

 でも、そのような強気なシナリオは、やはり見られなかった。前述のように、その後、大きく反落し、10月31日(火)の安値ばかりか、10月3日(火)の安値もいったん割りこんでいたから、大きな「ダマシ」のサインを形成し、また、同サインの可能性が大きいと思うわけだ。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

 (出所:TradingView

 日本の相場格言に「鬼より怖い一文新値」という言葉があり、11月13日(月)のいったん高値更新は、まさにその通りであった。だからこそ、米ドル/円の頭打ちがすでに決定されたとみなし、「鬼より怖い」市況の展開は、これからだと思う。市況はいかに。

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