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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米ドル/円は160円台を静かに回復し、38年ぶりの高値を
更新! 海外投資の良好なパフォーマンスも背景に、家計の
円売りは継続へ。1米ドル=170円へ向けた上昇に注目!

2024年06月27日(木)15:15公開 (2024年06月27日(木)15:15更新)
西原宏一

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米ドル/円は静かに160円台を回復、38年ぶりの高値へ

 みなさん、こんにちは

 今週中に米ドル/円は160円を超えるとメルマガで配信していましたが、水曜日(26日)にあっさり160円を超えてきました。

米ドル/円 1時間足
米ドル/円 1時間足

(出所:TradingView

 高値は、160.87円。

 これで1986年以来、38年ぶりの高値に到達したことになります。

 この円安の動きに、神田財務官は「最近の為替の動きは一方向」だとし、「行き過ぎた動きに対しては必要な対応を取る」と為替介入も辞さない姿勢を即座に表明

 ただ、マーケットはこのコメントを無視しました。

 財務官のコメントは「口先介入」に過ぎないと認識しているようです。

 多くのマーケット参加者は、仮に米ドル/円が急騰するようなことになれば、165円という水準は重要なレベルになるとしています。

現時点で介入が入らないとする2つの理由

 為替のコメンテーターとしてはこれで十分でしょうが、僕も含めたトレーダーの場合はそうはいきません。

 可能性は低いながらも160円超えのレベルでは実弾介入に対する警戒感は怠らず、東京市場が始まる前に、多くの参加者は米ドル/円、クロス円のロング(買い)を減らし、当局が動かないと判断すれば、再び米ドル/円、クロス円を買戻すといった流れ。

 これでは、米ドル/円、クロス円のロングポジションは拡大せず、押し目は限定的ということになります。

 介入に関しては、下記の2点で現時点で介入は入らないというのがコンセンサス。

 (1)4月29日と違って、今回は暴騰したわけではなく、静かに160円を超えてきたこと。

 (2)為替監視国に日本が再指定されたことで、前回以上に介入には、納得できる材料を並べて大義名分が必要なこと

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

 このコラムでも繰り返していますが、9兆円もの巨額のドルをマーケットに投下しても2カ月ももたず、160円台を回復する米ドル/円相場は円売り需要が強いと言わざるを得ず、当局も介入するのが大変難しいと思います。

 今回再び巨額のドル売り介入をして、仮に数週間で160円台に戻ってしまうと、もう介入では対処の仕様がないということをマーケットが理解してしまうからです。

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家計の円売りは拡大し円安は継続へ

 では、米ドル/円が160円に到達した後も円安が続くのかどうかをチェックしてみましょう。

 まず、1月以降、僕が「円安は継続し、早晩160円台を回復する」とした要因を確認します。

 1.日米金利差がなかなか縮小してこないこと
 2.デジタル赤字が拡大していること
 3.家計の円売りが拡大していること

 この中でこのところ大注目されているのが3.家計の円売りの拡大。

 これについて今月のコラムで解説しているので、ピックアップしてみます。

【※関連記事はこちら!】
米ドル/円の160円突破には一定の時間を要するが、円を売るスタンスは継続! FOMCの中立金利が上昇、買付け額が40兆円を超えた、NISAによる家計の円売りも支え!(2024年6月13日、西原宏一)


 一般的に、「家計の円売り」とは、家計が保有する日本円を外貨に交換することを指します。

その流れをまとめると次のようになります。

 (1)海外旅行:海外旅行に行く際、現地で使う外貨に両替します。

 (2)海外からの輸入品購入:海外製品を購入する際、その代金を支払うために円を外貨に交換します。今回は個人輸入など家計が直接行う場合を想定

 (3)海外への投資:海外の株式や債券、不動産などに投資する際、投資資金を円から外貨に交換します。

 最近、その額が巨額になっているのが(3)の海外への投資になります。

 言い換えれば、新NISA関連の海外投資関連ということになります。

 そのNISAの買い付け額が初の40兆円台になったことが注目されています。

 そして、こうした投資のほとんどが海外株式に流れているようです。

 その多くがS&Pとオルカン(全世界株式型投信)への投資になります。

 こうした個人による海外投資は、仮に「米国が何回か利下げをする」ことや「日銀が金融正常化を進める」ことなどは 大きな影響もなく、淡々と円売りが継続されると想定されます。

(※6月13日公開「ヘッジファンドの思惑」から抜粋)

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年初からの海外株投信のパフォーマンスは良好! 米ドル/円は170円へ

 この記事にもありますように、「S&Pとオルカン」を中心とする個人による海外株投資は、仮に「米国が何回か利下げをする」ことや「日銀が金融正常化を進める」ことなどは大きな影響もなく、淡々と円売りが継続されると想定されます。

 これは家計からの円売り継続となります。

 そしてさらに重要なのは、オルカンを筆頭とした海外株投資のパフォーマンスが年初から良好だということです。

 パフォーマンスが良好であれば、海外株投資に慎重であった家計も、こうした投資を考えるようになります。

 「おとなりは全世界株式型投信で儲かってるみたいよ。うちもやる?」といった流れです。

 お隣もやってるからという発想は、昔ながらの日本特有とも言えるものです。

 最近はそういうこともないという意見もありますが、日本ではみんなiPhoneを使うといったこともあり、最近もあまり変わっていません。

 そのため、年初からの良好なパフォーマンスが家計のさらなる円売りを誘引し、円安は続くと考えています。

 スイスフラン/円を筆頭にクロス円も軒並み高値を更新していることも円売り要因。

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

(出所:TradingView

スイスフラン/円 月足
スイスフラン/円 月足

(出所:TradingView

 年初からの海外株投信のパフォーマンスは良好! 家計からの売り継続で170円へ向けて上昇する米ドル/円、190円に向けて最高値を更新し続けているスイスフラン/円に注目です。


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