米CPI後の動きをFOMCの発表で否定する展開
みなさん、こんにちは。
6月12日(水)のNY市場では、マーケットが注目する5月の米CPIとFOMC(米連邦公開市場委員会)の発表がありました。
まず米5月のCPIが弱含んだことから、米2年債利回りが4.6678%まで下げ、一時米ドル売りが急速に進んだマーケットでした。
しかし、FOMCの発表でそうした動きが否定される展開になっています。
まずFOMCの声明では「インフレ率はこの1年で緩和したが、依然高止まりしている」と強調したうえで、 インフレ抑制のため、政策金利を高水準で長期間維持するという方針が明確になりました。
そして、注目は中立金利。
中立金利が2.6%から2.8%へ上方修正されています。
(出所:FRB)
中立金利が上昇したことは、なかなかインフレが払拭できない中、これだけ高金利を維持しても米国経済が底堅いことから 政策金利自体をもう少し上に設定するべきだとも解釈できます。
仮にそうだとすれば、来年(2025年)の連続利下げがあまり期待できないものとなり、 米金利が大きく低下することが、米ドル/円修正の大きな要因だとしている米ドル弱気派の見方に変化を与える要因ともなります。
このFOMCの結果を受け、米2年債利回りは4.7518%に反発し、米ドルは買い戻される展開に。
(出所:TradingView)
米CPI発表後に、一時155.72円まで下落していた米ドル/円ですが、FOMC後に急速に買い戻され、156.72円で引けています。
(出所:TradingView)
結局、米ドル/円は154~158円のレンジが継続。
明日に日銀金融政策決定会合を控えているため、米ドル/円はFOMCの結果だけでは動きにくいといった要素はあります。
そして今回、日銀が約9兆円もの米ドルを米ドル/円マーケットに打ち込んだのですが、その影響は限定的で、本稿執筆時点でも157.00円と高値圏内で推移していることから、予想以上に底堅いと言わざるを得ません。
その要因のひとつが、前述のドル金利の高止まりです。
次が、このコラムでも何度も取り上げたデジタル赤字。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円はレンジだが、中期では再び160円を伺う動き。スイスフラン/円は、180円に向けた上昇トレンドに突入。カナダ中銀が利下げを開始、米国は追随できるのか?(6月6日号)
そして「家計の円売り」といわれています。
次に、その「家計の円売り」に関して、検証してみましょう
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
拡大する「家計からの円売り」、新NISA買い付け額が初の40兆円台に
一般的に、「家計の円売り」とは、家計が保有する日本円を外貨に交換することを指します。
その流れをまとめると次のようになります。
(1)海外旅行:海外旅行に行く際、現地で使う外貨に両替します。
(2)海外からの輸入品購入:海外製品を購入する際、その代金を支払うために円を外貨に交換します。今回は個人輸入など家計が直接行う場合を想定
(3)海外への投資:海外の株式や債券、不動産などに投資する際、投資資金を円から外貨に交換します。
最近、その額が巨額になっているのが(3)の海外への投資になります。
言い換えれば、新NISA関連の海外投資関連ということになります。
そのNISAの買い付け額が初の40兆円台になったことが注目されています。
NISA購入、40兆円台 3月末の累計、3カ月で17%増
出所:日経新聞
そして、こうした投資のほとんどが海外株式に流れているようです。
その多くがS&Pとオルカンへの投資になります。
こうした個人による海外投資は、仮に「米国が何回か利下げをする」ことや「日銀が金融正常化を進める」ことなどは 大きな影響もなく、淡々と円売りが継続されると想定されます。
結果、今後の日米の金融政策の動きにより、短期では円高が進行する局面があるとしても それが継続する可能性は低いと考えています。
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
米ドル/円の160円ブレイクには一定の時間を要するも円売り継続
前述のように、米国の中立金利が上昇していることもあり、米ドルの下落幅は限定的。結果、当面の米ドル/円は154~158円でのもみ合いの展開でしょうが、時間の経過とともに160円をブレイクして上昇すると考えています。
(出所:TradingView)
加えて、前回のコラムで取り上げたようにSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])のスタンスの変化から180円に向けて続伸するスイスフラン/円にも注目です。
(出所:TradingView)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は10日間の無料体験期間がありますので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)