円高と言われているが、ドルインデックスを見る限りとても円高と言える状況ではない
円高、円安云々は円の立場で話されるため、往々にして米ドルの視点が疎かになりがちだ。米ドルの視点と言っても、単純に米ドル/円だけではなく、米ドル全体を見ないと為替市場の基調をつかめないから気を付けたい。
米ドル全体と言えばドルインデックス。肝心のドルインデックスを見ればわかるように、2024年年初来安値を更新している。
(出所:TradingView)
一方、日経平均が史上最大幅の下落を演じた8月5日(月)において、米ドル/円は141円台まで急落した。とはいえ、年初来安値の140円台後半までなお距離があった上、執筆中の現時点では145円台後半に位置している。よってドルインデックスを見る限り、とても円高といえる状況ではない。
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しかし、一般のマスコミから専門家までほとんどが、現在の水準を円高と言っているようだ。それはほかならぬ、円売りバブルがあり、またそのバブルが破裂したからだ。
換言すれば、大半の市場参加者はこの間の高値・安値と比較しがちであり、なかなか冷静に全体を見渡せず、バイアスのかかった見方を示しても仕方がない。
円以外では、当然のように主要通貨のユーロと英ポンドが2024年年初来高値を更新している。
(出所:TradingView)
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だからこそ、ユーロ/円や英ポンド/円など主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)はいったん切り返しを果してから、保ち合いの状況となり、値幅も限定的である。
(出所:TradingView)
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言ってみれば、あくまで米ドル安であって円高ではないのは、ドルインデックスの値動きをみれば一目瞭然だ。
米ドル安の原因は、何といっても利下げ観測の高まりで、米金利の低下が挙げられる。米10年物国債利回り(米長期金利)はいったん昨年(2023年)年末安値を下回っていたから、これからも下落していく公算が高い。
米長期金利の下落トレンドは正式に確認され、これからも低下していく。2024年は基本的には米ドル安の年になる
2024年は米ドル高ではなく、基本的には米ドル安の年だと、筆者はかなり前から指摘してきた。ゆえに、4月末~5月初頭にドルインデックスが一時反発していた時期でも、ユーロや英ポンドなど主要外貨のロング(対米ドル)を勧めてきた。根拠はやはり、米長期金利が示す構造的な頭打ちの蓋然性にあった。
2020年3月安値を起点とした米長期金利は、雄大な上昇波を形成し、2023年10月まで大きく上昇していた(0.318%~5.02%)。エリオット波動論で検証すればわかるように、5波変動が数えられ、米利上げの停止もされただけに、今年(2024年)は新たな高値を更新できない、というごくシンプルかつ基本的な考えがまとまる。
(出所:TradingView)
基本的な考えを定めれば、4月末まで米10年物国債利回りが急騰した時でも動揺せず、逆に米ドル売り(外貨買い)の好機だと捉えられた。換言すれば、前述の5波動構造の完成が本物であれば、米金利の一時急騰も昨年(2023年)高値を起点とした下落波動における調整であり、いずれ下落波へ復帰していくとわかっていたからだ。
そしてここまでくると、昨年(2023年)年末安値を割り込んだからこそ、米長期金利が重要な示唆をしてくれている。それはほかならぬ、下落のトレンドが正式に確認され、これからも低下していくということである。
「1-2-3の法則」に則って考えても、3つの条件をクリアしてトレンドの転換が正式に確認できたといえる
「1-2-3の法則」(15年前、本コラムの開始当初に紹介した法則であることもまた懐かしい!)に沿った見方では、1番の印が指す「サポートラインの割り込み」、2番の印が指す「戻り高値が前の高値を更新できず」、そして3番の印が指す「2つの重要な高値の間にある安値の水準を割り込み」、という3つの条件をクリアし、トレンドの転換が正式に確認できたわけなので、これから一段と大きく下落していく。
【※関連記事はこちら!】
⇒「1−2−3の法則」が大ヒット!ドル/円は100~102円台達成の可能性大(2009年2月27日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
ゆえに、日足ではやや「買われすぎ」と見えるユーロや英ポンドなどの主要外貨は、対米ドルの上昇トレンドが当面続き、また大した途中の速度調整なしで新たな高値を更新、さらに上昇波動の一段加速もあり得る。メインスタンスとしてやはり米ドルの戻り売り、場合によっては米ドルの安値追いも一手かと思う。
投機的な円売りによって生じた米ドル/円とドルインデックスの乖離は修正され、米ドル/円の本格的な下落が確実視される
ところで、米ドル/円だけは異例と呼べる存在だ。言ってみれば、米ドル/円はドルインデックスと乖離するケースが多いから、ドルインデックスの動向のみで測れない側面が大きい。
典型的な好例は今年(2024年)7月上旬までの米ドル高・円安だろう。米金利の頭打ちが4月末~5月初頭にてすでに確認され、その後切り下げていたにもかかわらず、投機的な円売りが盛んに行われ、大きな乖離が形成されていた。
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だからこそ円売りバブルと言われ、バブルであるがゆえに破裂するのが宿命だった。そして、ここでも単にバブルの破裂であって、円が買われているわけではないことを、もう一度記しておきたい。
要するに、本格的な円高はこれからだ。米長期金利の下落トレンドは正式に確認されたばかりなので、これから本格的に下落を加速してくなら、ドルインデックスも大きく下落していくだろう。
そして、いくら米金利やドルインデックスと乖離する癖があっても、その乖離がすでに大きく修正されているからこそ、米ドル/円の本格的な下落、また昨年(2023年)年末安値の更新が確実視される。
市況はいかに。
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