ドルインデックスはこれから下落を加速⁉ 目先の切り返しは「底割れ」前のスピード調整!
米ドル全面安の基調が定着している。ドルインデックスはいったん昨年(2023年)年末安値に接近し、これから更新していくことが有力視され、また更新してからさらなる下落モメンタムの加速も想定される。
一昨日(8月28日)から小幅に切り返しを果しているものの、総じて「底割れ」の前におけるスピード調整と見なされ、米ドルの戻り売りといった戦術がなお維持されるべきだとみる。
(出所:TradingView)
もっとも、目先の下げ一服は、単純に言えば短期スパンにおけるターゲットがいったん達成されたことによるものだ。
8月16日(金)のコラムでは、ドルインデックスの「三尊型」の形成を指摘していた。
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⇒米ドル/円の149円台回復は、急落の修正による自然な成り行き。米ドルは三尊天井の形成で下値余地が拡大、円キャリートレードの大規模な再開は難しいとみる!(2024年8月16日、陳満咲杜)
そのフォーメーションの指示どおり、ドルインデックスは下落してきた上、一応指示されたターゲットを達成しているから、多少の下げ止まりがあっても納得できる話だ。
ドルインデックスの月足は、すでにトップアウト! 下落を強めて、年内に96前後の安値水準を打診してもおかしくない
しかし前述のように、米ドルの下落トレンドが修正されるはずもなく、またスピード調整が先行するほうが、より「健全な」下落波を継続していくと推測される。より長い目線でみるなら、月足を確認しておかないといけない。
ドルインデックスの月足をみればわかるように、2008年リーマンショック前の安値から昨年(2023年)高値まで、ドルインデックスは紆余曲折ありながらも長い上昇チャネルを形成してきた。
(出所:TradingView)
エリオット波動論で測っても、概ね5波動の構造が数えられ、また昨年(2023年)高値をもってすでにトップアウトしたと見なされる。ゆえに、ここからは下落を強め、メインサポートラインをトライする可能性が高いと思う。
こういう目線でフォローしていくと、2024年年内に96前後の安値水準を打診してもおかしくないと思われる。執筆中の現時点で101前半の水準なので、米ドル安の進行はこれからだと言える。
バラツキはあるが、主要外貨は結局米ドル次第なので、個々のファンダメンタルズを問わず、米ドル安の受け皿として買われていく流れにある。実際、英ポンド/米ドルを見ればわかるように、すでに2023年高値を突破しているから、米ドル全体の行方を示唆する存在となっている。
(出所:TradingView)
実際、もっとも重要な外貨であるユーロも、対米ドルでは昨年(2023年)年末高値を超えており、これから2023年7月高値を突破していく様相を呈している。
(出所:TradingView)
前述のように、ドルインデックスが2023年年末安値を切り下げていくのを当然視するわけもそこにある。換言すれば、個別通貨ペアとドルインデックスを総合的にみておくと、為替市場の本流を掴みやすいから、常にお互いの状況を見比べることが大事である。
出遅れている米ドル/円は、140円割れも時間の問題か。トレンドの転換は疑う余地なし
この意味では、米ドル/円は「出遅れ」ている。なにしろ、8月5日(月)の安値が141円台後半なので、昨日(8月29日)、いったん145円台半ばまで切り返していた市況に照らしてみて、果たして「円高」と呼べるかどうか疑問さえ湧いてくる。
ちなみに、昨年(2023年)年末の安値は140.25円だったので、主要外貨対米ドルの値動きの後を追う形で米ドル/円の続落があれば、140円の節目割れを覚悟しなければならない。
(出所:TradingView)
基本的なシナリオは、そのとおりであろう。米ドル/円はドルインデックスと乖離し、昨年(2023年)高値を大きく更新した形で今年7月の高値をもってやっとトップアウトを果たしたが、トレンドが転換されたこと自体、疑う余地がない。すでに米ドル安・円高のトレンドとなっているなら、140円割れも時間の問題だと思う。
つまるところ、為替は米ドル次第、そして米ドルは米金利次第。先週(8月23日)のコラムで示したように、米10年物国債利回りがこれから下げ止まるどころか、下落を加速していく公算が高いから、米ドル安もこれから加速されると思う。
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⇒米ドル/円の本格的な下落、本格的な円高はこれから!基本的なスタンスは、やはり米ドルの戻り売り。ユーロや英ポンドは対米ドルでの上昇トレンドが続く(2024年8月23日、陳満咲杜)
となると、多少「売られすぎ」の兆しがあっても、米ドルは買われるのではなく、さらに売られていくだろう。米ドルの戻り売り自体はもちろん正解であるが、あまり大きな戻りを期待できないかもしれない。
円キャリートレード再開の声もあるが、現実的ではない。これからは本格的な米ドル売りによる円買いが生じる
前回(8月23日)のコラムでも指摘したように、実質金利差がなお大きいから、円キャリートレードの再開を主張する声もあるが、現実的には難しいだろう。
円キャリートレードの大前提として、米ドル全体が相対的に堅調な推移を保つことが挙げられる。現在のような米ドル全体が明らかな下落トレンドにある市況では、スワップ金利のメリットがあっても二の次なので、再開されるはずがない。
むしろ逆になる可能性がある。米ドル全体がこれから「底割れ」、また下落を加速していくと、値動きが大きくなる分、今まで米ドル売りになかなか踏み切れなかった投機筋の参入が推測される。スワップ金利を支払わなければならないといったデメリットが、米ドル安の値幅でカバーできるからだ。
ゆえに、今まで円売りバブルがあって、またその破裂で円が買われてきたが、これからは本格的な米ドル売りによる円買いが生じてくる。言い換えれば、今までは円高ではないから、本格的な円高はこれからだ。市況はいかに。
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