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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米ドル弱気派が増えているが、米ドル売りは対ユーロや対
円でなく、対スイスフランがよさそう! 来年はSNBの利下
げ余地が限定的な一方、FRBは連続利下げが期待される

2024年08月29日(木)14:22公開 (2024年08月29日(木)14:22更新)
西原宏一

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米ドル弱気派が増えているが、気にしているのは米ドル売りの水準と、どの通貨に対してか?

 みなさん、こんにちは

 先週末、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長のコメントにより、マーケットでは米ドル弱気派が増えています。

 例えば、ゴールドマン・サックス。噂によると下記のようなレポートを出しているようです。


ドルショートのタイミングと見ている。ドルが高く評価された状態からスタートした。
FRBは他の中央銀行よりも早く実質金利を調整することができ、またその可能性があるからだ。
パウエル議長の発言は、政策金利の方向性を曖昧にする余地を与えていない。


 ただ、個人的に留意している点は、米ドルをショートにするレベルと、どの通貨に対してショートにするか?

 例えば、重要なレベルとしては米ドル/円の145.00円とユーロ/米ドルの1.1200ドルがあります。

特に警戒しているのが、ユーロ/米ドルの1.1200ドル

 ユーロ/米ドルは2023年以降、ラフに1.05~1.12ドルのレンジ圏内で推移しています(どちらも一時的には抜けています)。

ユーロ/米ドル 週足
ユーロ/米ドル 週足チャート

(出所:TradingView

 ただ、パウエル議長のコメントにより、このレベルが抜けてくる可能性が高まったため、参加者の多くがユーロ/米ドルの1.1200ドルというレベルに注目しています。

NVIDIAの決算という重要イベントを控え、米ドル売り一辺倒にはならなかった

 そして、今週(8月26日~)はもうひとつ、重要なイベントがありました。

 それはNVIDIAの決算。

 日本時間、本日(8月29日)未明にNVIDIAが発表した2024年5〜7月期決算は、売上高が前年同期と比べ約2.2倍の300億4000万ドル(約4兆3500億円)、純利益が2.7倍の165億9900万ドル。

 ともに市場予想を上回り、四半期ベースで過去最高を更新した形になります。

 しかし、最も楽観的な予想を下回り、爆発的な成長が鈍化するとの懸念を残した結果に。

 そのため、決算発表後の米株式市場では、同社株は一時約4%下落。

 このNVIDIAの決算発表という重要なイベントも控えていたことから、今週は米ドル売り一辺倒ではありませんでした

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スイスフランが今週値を下げている。米ドルを売るなら、ユーロ/米ドルや米ドル/円より米ドル/スイスフランか

 先週末のパウエル議長のコメントから現時点までの、対米ドルの主要通貨の推移を見てみましょう。

主要通貨の対米ドル騰落率(8月23日~28日)
主要通貨の対米ドル騰落率(8月23日~28日)

 パウエル議長のコメントでいきなり米ドル売りが進行しましたが、その後の米ドル売りは各通貨ばらばら。

 わずか4営業日という短期間での推移ということを認識した上でのチェックですが、スイスフランやカナダドルに対しては、米ドル売り。ユーロや英ポンド、そして円に対して米ドル高になっています。

 結果、ユーロ/スイスフランが大きく値を下げており、これではユーロ/米ドルは押し下げられる展開になります。

 ただ、今週のユーロ/米ドルは値を下げているとはいえ、長期にわたって抜けなかった200週移動平均線(今週は1.1062ドル)を上抜いています。

ユーロ/米ドル 週足
ユーロ/米ドル 週足チャート

(出所:TradingView

 そのため、ユーロ/米ドルで米ドル売りもいいのかも知れませんが、ユーロ/スイスフランが下落しているわけですので、米ドル/スイスフランでの米ドル売りのほうが効率的でしょうか?

 もう1つ気になるのが、今週、スイスフラン/円も反発しているため、こちらも米ドル/円ではなく米ドル/スイスフランでの米ドル売りのほうが下値余地は大きいと考えます。

SNBは来年の利下げ余地が限定的な一方、FRBは来年の連続利下げが期待され、米ドル/スイスフランのショートが機能するかも

 SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])は、他の中央銀行に先駆けて利下げを開始したのは、こちらのコラムでも何度かご紹介しています。

【※関連記事はこちら!】
米ドル/円はいずれ160円超えへ! 米国が日本を為替の監視対象に再指定! スイスフラン/円はSNBの利下げで押し目買いチャンス、上値ターゲットを190円へ変更!(6月21日、西原宏一)

 そして、9月26日(木)のSNB会合でも、0.25%の利下げがほぼ100%織り込まれています。

 しかし、他の中央銀行がようやく利下げを開始しようとしている中、SNBはすでに何度か利下げしているため、来年(2025年)の利下げ余地は限定的

 一方、FRBは来月(9月)からやっと利下げが始まるわけですので、来年は連続利下げも期待されています。

 このFRBとSNBの政策金利の予想のもとでは、米ドル/スイスフランのショートが機能するのかもしれません。

米ドル/スイスフラン 週足
米ドル/スイスフラン 週足チャート

(出所:TradingView

 先週のジャクソンホール会議でのパウエル議長のコメントから、「a time to short the dollar(米ドルショートのタイミングとみている)」と考える参加者が増えています。

 ただ、今週に入って月末のリバランスの影響もあり、すべての主要通貨に対して米ドルが売られているわけではないことに留意。

 注目は米ドル/スイスフランでしょうか。


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