今晩の米雇用統計の結果を問わず米ドルは売られる流れに!
2023年年末の安値割れが既定路線
メイントレンドとして、米ドル安が定着している。今晩(9月6日)の米雇用統計を控えて目先は動意薄でも、結果を問わず米ドルは売られる流れになるだろう。もちろん短期スパンにおける波乱を覚悟しての話である。
ドルインデックスを見る限り、2023年年末安値の100.32を割り込んでいくのが既定路線で、割り込む前のスピード調整があっても限定的だと思う。
(出所:TradingView)
実際、ドルインデックスはいったん反発していたものの、102の節目を回復し切れずにいたから、メイントレンドの維持が鮮明だ。
無理もない。肝心の米金利は、10年物国債利回りが8月にてすでにいったん2023年年末安値の3.78%を割り込んでいた。その後切り返しがあったものの、4%以上への定着を維持できず、執筆中の現時点で再度3.718%まで下げてきたから、下値志向の強さが窺える。
(出所:TradingView)
市場参加者の多くは9月FOMC(米連邦公開市場委員会)の利下げを確実視しており、焦点はやはり利下げ幅である。となると、利下げ自体が確実なら、米ドル売り自体は少なくとも利下げが実施されるまで続くだろう、と推測される。
実際、ECB(欧州中央銀行)も英国も利下げを継続する公算が高い。それでも米ドル安が継続するのは、ほかならぬ、為替の中心が米ドルにあるからだ。
つまるところ、為替は米ドル次第、米ドルは米金利次第なので、米ドル安の構造が鮮明になれば、諸外貨はそれ自体のファンダメンタルズと関係なく、受け皿として買われる。よって、金利差云々がすでにトレードのテーマでなくなったことを悟るべきだ。
米ドル/円も米ドル次第、米ドル安の本流が変わらないなら
米ドル/円は早晩140円割れを果たす⁉
この意味合いにおいて、米ドル/円も米ドル次第なので、米ドル安の本流が変わらないなら、早晩140円割れを果たすだろう。
(出所:TradingView)
そのうえ、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の頭打ちも円買いの一環として注目され、現時点では円を積極的に売り込む向きが出にくいだろう。
ユーロ/円は主要クロス円の中で戻りの弱さが目立つ。8月の戻り高値は7月高値からの全下落幅の半分程度にも届かず、直近9月の高値も8月高値まで戻れないうちに、再度下落してきた。
(出所:TradingView)
英ポンド/円や豪ドル/円あたりは、9月高値がいったん8月の戻り高値を超えていたが、やはり7月高値からの全下落幅に対して、半分の戻りを果せないうちに、足元再度下落してきたから、戻りの限界を果たした公算が高い。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
「弱い円」も米ドル安が本流で買われるのが宿命だが、
「米ドル全面安」なので主要クロス円全般は保ち合い先行を想定
そうなると、「弱い円」とはいえ、米ドル安の本流において買われるのが宿命なのは変わらず、またその役割を果たしている。
ただし、あくまで米ドル全面安なので、主要クロス円の頭が重いことが確認されても、目先「底割れ」の市況には繋がらないだろう。
なぜなら、円以上にその他の外貨がより買われやすいからだ。前回のコラムでも指摘したように、英ポンド/米ドルはすでにいったん2023年高値を更新しており、さらに上値余地を拡大するなら、1.35ドルの大台の打診がターゲットになり得る。
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⇒米ドル/円の140円割れは時間の問題! 米ドルは、2008年から形成してきた長期上昇チャネルの下限をトライする可能性が高い! 米ドル安による本格的な円高はこれから!(2024年8月30日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
英ポンド/米ドルの上昇があれば、英ポンド/円の下落が緩和される、といった動きがあるように、主要クロス円全般はあくまで保ち合いの先行を想定しておきたい。
半面、逆の見方をすれば、「弱い円」でもこれから上昇を加速していく可能性がある。前述のように、主要クロス円の戻りがすでに頭打ちとなった見方が正しければ、主要外貨の上昇トレンドが維持されているにもかかわらず、米雇用統計前における下落の傾向が鮮明である。
米ドル/円に関しては執筆中の現時点で、すでに142円台前半まで下げてきたので、「出遅れた円」がこれから急伸してくる可能性がある。
この場合、米ドル全面安とはいえ、ユーロ/円などの主要クロス円でいったんの安値トライがあってもおかしくないだろう。円高はこれからだと思う。
米雇用統計は中身を問わず米ドル売りの材料として利用される
可能性大!統計の信憑性が疑われる以上、米ドル売りが
「正解」になる可能性が大きい
米雇用統計はいつも市場に強いインパクトを与えてきた。雇用統計が重要であることはもちろん、同統計が特殊な存在であることも見逃せない。
言ってみれば、米雇用統計ほど事前の予測と結果に乖離のある経済指標はなく、ウォール街の精鋭でもほとんど事前予測しきれない統計として周知されている。
やや大袈裟な表現をすれば、同統計に関しては、毎回バラツキの大きい事前予想がウォール街の強者から出るが、バラツキが大きい上、いわゆる市場のコンセンサスもほとんどあてにならないから、事前予想を信じるおバカさんは少なくとも投資の業界においていないだろう。
エコノミスト泣かせの米雇用統計だからこそ、その不確実性が高いからこそ、マーケットを震撼させ、市場の変動率を拡大させたわけだ。
さらに米労働省は、2023年4月から2024年3月までの雇用者数が、81万8000人程度の下方修正になると公表したばかりだ。 月ベースで約6.8万人も少なくなる計算なので、同統計の信憑性がかなり棄損されたと言える。
このような状況において、今晩(9月6日)の同統計がかなりの利下げを支持しない内容となっても、市場関係者がそれを信じて、本気で米ドルを買っていくとはならないだろう。
あえて言うなら、統計の中身を問わず、米ドル売りの材料として利用される可能性が大きい。利下げ周期入りで米ドル売りがメイントレンドである以上、仮に統計後に米ドルが一時買われることがあっても、出遅れた米ドル売りの筋が好機と捉えるから、結局は米ドル売りになる公算が高い。
統計の信憑性が疑われる以上、米ドル売りが「正解」になる可能性が大きいから、トレーダーたちは敢えて間違いの大きい選択肢(即ち米ドル買い)を選ぶ勇気はなかろう。
筆者は一貫して2024年における米ドル安の構造を指摘してきたから、手持ちポジションも大きな利益が乗っているので、今晩(9月6日)の市況を楽しみにしている。皆さんもよい週末を。
15:30執筆
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